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チャラン・ポ・ランタン Vo.ももの
私の想ひ出のショウ Vol.53

2020/5/20

連載コラム

〜わたしのきえた眉のむこう編〜

眉きえた。眉毛が、きえた。

中止、延期の毎日がつづき、仕事という仕事はわたしの前からきえ失せた。この業界は皆そうだろう。退屈と向き合ったわたしは毎日なわとびを跳んでいる。今日で9日目である。継続は力なり。なわを跳んで跳んで跳ぶ生活もなかなか悪くはない。だが、こうしている間にも退屈が退屈を呼び、また退屈が押し寄せるだろう。わかっていた。割と動いているつもりだがそれでも普段の生活の何十倍も肉体的に精神的に疲れていないのがよく分かる。どうしたものか。音楽に勝たなくとも、ライブといい勝負のできる何か、何かはこの世に存在しないのか。どうやって暇を潰せるだろう。そうだ。わたしは思いついた。脱色しよう。わたしはもう止められない、止まらない。
全国のギャルやヤンキーの味方、あの、目の大きい人形のパッケージのブリーチ剤、通称「メガメガブリーチ」を早速手に入れた。初めて自分で自分の髪の毛の色を抜く。美容師やヘアメイクの友達という友達に全力で止められたが、もうわたしは誰にも止められなかった。大失敗をすれば、丸刈りにでもしようと思った。眉毛をブリーチしたことは一度も無かったけれど、それももうこの際しようとおもった。どきどきした。風呂場中が鼻がもげるかと思うくらいのキツい匂いでいっぱいになってクラクラした。でも楽しかった。こういう経験は中学の時に済ませておくべきだったとおもった。済ませておかなかったおかげで、27歳になった今のわたしは風呂場をメガメガ臭でいっぱいにさせている。結果オーライ。わたしの人生のテーマである。たのしい、が全てである。生活がライブなのだ。
そんなことを思いながらメガメガ剤を塗り、流し、湯船に浸かった。湯に浸かりながらドラマを観たり、友達と電話したりして、たのしいバスタイムを過ごした。さて風呂から上がって体を拭こうとおもい鏡を見たその時、わたしは恐ろしいことに気が付いたのである。
しっかりと説明しよう。未だ眉毛にメガメガ剤が塗られていて、それをそれだけを、流しそびれていたのだ。急いで洗い流したがそこには何も無かった。正確にいうと何もないように見えた。よくよく見るとそこには綺麗に金色になった眉毛がいた。きれいに全てきえたのだ。わたしの眉はきえたのだ。眉毛全剃り状態になった(ように見える)わたしは試しに鏡で笑って見せた。笑えた。結果オーライ。笑えるから、よし。そんな毎日を過ごしている。
こんな時だから出来ること。こんな時じゃないと出来ないこと。そんなことだらけで生活を埋め尽くしたい。リモートレコーディングも挑戦してみた。意外と良さがあった。歌、って、音楽って、やっぱり最高だ。代わりなんてないけれど、代わりを探すこと、試すこと、気づくこと、大事だとおもった。なくなったことで気づく有り難みも沢山ある。眉なしが言うんだからこれホント。これも、私の想ひ出。たのしい、は逃げないし、きえない。この眉が黒くなる頃には、この世界ももう少し明るくなっていますように。
アディオス。

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