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チャラン・ポ・ランタン Vo.ももの
私の想ひ出のショウ Vol.46

2019/11/20

連載コラム

鉄の味と手を繋ぐ 編

 

くちびるの皮。

くちびるの皮という皮が、むけてむけて、むけつづける。一生むける。
そんで若干だけど、鉄の味がする。明らかに、それの味がする。水さえ、しみる。
生きてると色んなことがある。噛み締める。本当の意味で噛み締めて、また鉄の味がする。そんな夜だ。

ついこの間、友だちと飲んでいる最中に、この連載を「読みたいから見せて」と言われて、見せた。

2分程だろうか真顔で画面を見つめ目を走らせて、すっと顔を上げ私にこう、言ってくれた。

「面白い。でも内容、ビックリするくらい無いね!」

そうだ。私はその感想、そのままの人間だ。そうでありたいし、私がそう思う前に、きっとそうなはずだ。

さて、そんななんでもない私、私たち姉妹は、元々大道芸人だ。突然話は変えていく人間だ。
そんな私たちが8年振りに先日大道芸人イベントに出演した。
一言で、「楽しかった」。とにかくそれだった。

2ステージ2日間、沢山の人が立ち止まってくれて形ある愛を(投げ銭を)投げ入れてくれた。
その形ある愛は普段ショウの終わりに集めるものなのだけど、どこかのステージに見に来てくれた男の子(5歳くらいだろうか)その子が歌っている最中の私にそっと折りたためる“愛”を渡してくれたタイミングがあった。
私は喜びの余りその子の手を握ってそのままその子と手を繋ぎながらゆっくりと歩いて歌い続けた。
するとまた同い歳くらいの別の女の子が同じように“愛“を渡してくれてそんなことがまたひとりまたひとりと増えてゆき、結局そのちびっ子みんなと手を繋いで歩きながら歌ったというのが私の想ひ出。

ただただ手を繋いで歩きながら歌う。あの時間は本当に特別なものだった。
私のことは彼等にどう映ったのだろう。私の歌は彼等にどう聴こえたのだろう。

私のことをそのことを、この先の長い長い人生の中で一度でも思い出してくれるだろうか、まぁ、思い出してくれなくてもいいな。

そんなことを想いながら私はくちびるを噛んだ。正確に言うと、皮を噛んだ。まだ鉄の味がする。
未だかつて、鉄を食べたことがないくせして、知ったような口を聞いて申し訳ないがどう考えても鉄の味だ。
無論、不味い。不味い。アディオス。

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