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「BRANDON LEE ミュージカルシンフォニーコンサート」特集 第1弾!作曲家 BRANDON LEE(イ・ソンジュン)インタビュー

2023/6/9

インタビュー

BRANDON LEE ミュージカルシンフォニーコンサート フランケンシュタイン&ベン・ハー

2014年に韓国で誕生したミュージカル『フランケンシュタイン』が、2017年に日本版初演が上演された際、これまでのグランドミュージカルにはなかった壮大な楽曲と世界観、キャストの熱演によって、熱狂的にハマる観客が続出しました。当時、日本でも小規模な韓国ミュージカルは上演されており、韓国カンパニーが大劇場で来日公演を上演したり、韓国に足を運んで韓国ミュージカルを観劇する日本人ファンが増えていたりと、韓国ミュージカルの勢いが加速していました。そのタイミングで、東宝・ホリプロの主催の大劇場公演で、主軸となる役に<ビクター・フランケンシュタイン&ジャック役>中川晃教と柿澤勇人、<アンリ・デュプレ&怪物役>加藤和樹と小西遼生がキャスティングされ、他にも人気実力を兼ね備えた日本のミュージカル界を代表するキャストが集結し、豪華な座組みで上演された結果、韓国ミュージカルの魅力とレベルの高さを認識した観劇層が一気に広がりました。その後、大小さまざまな規模の韓国ミュージカルが、さまざまな主催で上演され続け、2023年上半期も新たな韓国ミュージカルが次々に上演されました。

『フランケンシュタイン』が大成功を収めたのは、やはり音楽の力が最大の要因でしょう。この音楽を生み出したBrandon Leeは、2014年の『フランケンシュタイン』上演で韓国史上初の興行記録を打ち立て、第8回ザ·ミュージカルアワードで「今年のミュージカル賞」をはじめ「音楽監督賞」を受賞。その後、『ベン・ハー』『メアリー・シェリー』『アーモンド』『種の起源』『秘密の花園』などミュージカル作曲家として、国内ミュージカル界の地位を確固たるものにしました。現在は、2023年12月から2024年3月に上演される、新作ミュージカル『ベルサイユのばら』の楽曲制作を行なっている最中だそう。日本で『ベルサイユのばら』といえば、1974年から宝塚歌劇団の代表作として上演され続けてきましたが、韓国でどんな新作ミュージカルとして誕生するのか興味はつきません。

今回のコンサートでは、『フランケンシュタイン』と、日本では上演されていませんが、韓国で上演された人気作『ベン·ハー』の楽曲を、BRENDON LEEでもある指揮者:イ・ソンジュン自身の指揮で上演します。同両作品に出演した韓国ミュージカル界トップ俳優の、ユ・ ジュンサン(大阪公演のみ)、KAI、パク・ミンソン、ミン・ウヒョク(東京公演のみ)、日本からは加藤和樹が出演します。演奏は、東京フィルハーモニー交響楽団と関西フィルハーモニー管弦楽団が決定し、豪華すぎるコラボレーションに期待が高まっています。

開催が近づいてきたコンサートに向けて、Brandon Leeのロングインタビューをお届けします。『フランケンシュタイン』『ベン·ハー』創作の背景、コンサートの構成、キャストの印象、自身の音楽のルーツなどを聞きました。
 

許しがキーワードの『ベン・ハー』、人間の苦悩を表現した『フランケンシュタイン』

――『ベン・ハー』は何をポイントとして曲を作られましたか?

ベン・ハーが逆境から勝ち抜く過程を描きたい、「許し」というキーワードを持って解き明かしてみたいと思い、その許しを得る過程を表現するように作曲したいと思いました。「ローマの力動性」と「ユダヤの踏みにじられる痛み」、そのふたつを表現したいと思い作曲しました。

――日本ではまだ『ベン・ハー』が上演されていないので、初めてご覧になる方も多いかと思うのですが、注目してほしい点はありますか?

今回のプログラムで「懐かしい土地」という曲を演奏する予定です。この曲は僕がギターで作曲したのですが、当日も僕がギターを演奏して、日本の観客の皆様に、私が曲を書く過程を、少し細かく描写してみたいと思っています。この曲は特に、その時代に作った音型を使用しました。アラビアンスケールやポップスタイルを一緒に使いましたが、ギターのスぺニットがすごく似ているなと思ったので、それで作曲しています。表現したい「痛み」を感じようとして、実際に自分の指が痛むように使いながら、その音型を使用して作曲しています。もちろん、歌で聴いていただければ、心で痛さも感じたり伝わるかなと思うのですが、今回は特別に僕が演奏する場面も見せたくて、今準備しています。

――『フランケンシュタイン』は何をポイントとして作曲されましたか?

『フランケンシュタイン』は人間の苦悩を表現したいと思いました。その中で、ビクター・フランケンシュタイン(以降ビクター)と、アンリ・デュプレ(以降アンリ)、ふたりの葛藤と苦悩を表現しています。僕は、ビクターが、ベートーベンとちょっと似ていると思っていました。ベートーベンは、彼が望む人だけに作曲してあげた時期がありました。そのために、貧しかった時代や、持病を抱えた時代もあり、偏屈で気難しい人間でした。ビクターは、ベートーベンのようにヒステリックな性格も持っていて、自分の意思が強い。その性格が伝わるように作りました。

アンリは、モーツァルトと同じように感じました。モーツァルトも天才的な音楽家だということは、皆さんご存じだと思いますが、アンリも知識的にはすごく天才的な知識を持っています。もちろんビクターも知識は持っているのですが、アンリのほうがもっと知識のある天才のような感じで、モーツァルトと同じような性格だと思っていました。皆さんは分からないかもしれませんが、モーツァルトは意外と献身的なところがありました。献身的で犠牲的な、ボランティア精神に富んだ性格もありますし、貴族の前でだけ演奏するだけではなく、自分の音楽を無料で人にあげたりすることがあったようです。

特に難しく大変だったのは、怪物が歌う曲(「俺は怪物」)でした。怪物がどんな風に歌うか、どんな感情か、実際に床で横になって声はこんな風に出るんだとか、横になったらどうやって歌うのかを自分で歌いながら、考えて想像して作ったので、とても愛着があります。演奏者たちから大変な曲だと聞いていますし、俳優さんたちにも「大変だ、すごく難しい」と言われています。『フランケンシュタイン』は遠い昔のお話ではなく、私の話になってしまいました。僕はファンタジーだとは思っていません。この世で前向きに生きていく道理を描いていると思いました。

――作品作りのなかで、このような話を俳優の方々にお話されるのですか?

最初に曲を作る時は、絶対に俳優さんたちには言いません。俳優さんたちの自分の表情で表現してくれることを期待しています。でも時間が経って、話す時期かなと思う時が来るんです。俳優さんたちも気になって質問してくれるんです。その時は話をしますが、僕の感情やどうやって曲を作ったかなどは、絶対に強調しないですね。

『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』の曲を一緒に演奏する曲も

――今回の日本公演では『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』からどのような楽曲を披露する予定ですか?

『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』の有名なナンバーを、これらの作品に出演している韓国の俳優たちと、日本のミュージカル俳優・加藤和樹さんが一緒に歌い、僕は指揮をする予定です。『フランケンシュタイン』の中の曲で、皆さんがお好きな「北極」(「傷そして北極」)という曲があります。韓国の俳優たちも歌う予定もありますし、「北極」のバンドスコアをオーケストラで演奏する予定もあります。『フランケンシュタイン』『ベン・ハー』の有名な曲以外に、オーケストラの演奏で聴く曲もあります。一幕の最後の曲は、「Final Ascension 」というタイトルを付けましたが、『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』の曲を一緒にオーケストラで演奏する予定です。そこでは、ふたつ作品の曲の、痛みと苦悩を見せたいです。両作品の魅力、オーケストラの魅力を楽しみにしていてください。

――韓国で同じく開催されたコンサートでは、観客の反応はいかがでしたか?

韓国公演の時は、『フランケンシュタイン』韓国初演の時とまったく同じ反応でした。開催前は、期待より心配が大きかったですが、おそらく別の魅力でお客さまが喜んで帰られると確信していました。僕は、ミュージカル『アラジン』が大好きです。『アラジン』を実際に観た時に、音楽がすごく美しかったのですが、その後『アラジン』のOST(オリジナルサウンドトラック)をオーケストラ演奏で見せた機会があり、音楽がミュージカルだけではなく、オーケストラで表現できるんだと、すごく感動しました。たくさんの方々が、コンサートに期待しつつ、心配もするなかで準備していますが、韓国ではすぐにチケットが完売して、1か月後にアンコール公演の準備をすることになりました。年末には「vol.3」のシンフォニーコンサートを準備中です。

映画音楽をオーケストラで演奏するプログラムを、よくご覧になると思います。ミュージカル音楽をシンフォニーオーケストラで演奏している公演はあまりないと思いますが、今回、東京フィルハーモニー交響楽団と関西フィルハーモニー管弦楽団が、僕と一緒に共演してくれることは、大変な冒険だと思います。このコンサートが初めてのことだと思うのですが、すごくありがたい気持ちで、大変嬉しく思っています。

――日本のオーケストラを指揮されますが、今のお気持ち、期待していることをお聞かせください。

コロナで日本と韓国を行き来することもできず、3年間止まった時間でした。僕も3年間日本に行けなくて、行きたい気持ちですごくドキドキしていたのですが、その楽しさが山を越えて、すごく緊張しています。早く日本公演の日になって欲しいなというのが、今の僕の気持ちです。

加藤和樹:一番紳士的なアンリ
ユ・ジュンサン:情熱的な人
KAI:親友
パク・ミンソン:自分が発見した俳優
ミン・ウヒョク:信じられない俳優

――イ・ソンジュンさんから見た、ユ・ジュンサンさん、KAIさん、パク・ミンソンさん、ミン・ウヒョクさんの魅力、加藤和樹さんに対する期待感を教えてください。

まず最初に、YouTubeなどで、加藤和樹さんが『フランケンシュタイン』を演じる場面を探して見ましたし、実際に東京に行って、『フランケンシュタイン』も観ました。僕が見た中で一番紳士的なアンリでした。すごく紳士で礼儀正しいアンリが怪物に変身して、どん底の怪物の演技をしたのが印象的で忘れられません。加藤和樹さんの目つきとその歌声の魅力を、僕が指揮することを考えると、今はすごくドキドキしています。観客の皆さんにも、その表現を見せたいと思います。また、いつかは韓国でもお見せできる良い機会が来ると信じています。

ユ・ジュンサンさんはすごく情熱的な人で、一週間に一度は必ず電話が来ます。そして、歌を最初から最後まで歌います。その歌を聴いて、私から指導をしてほしくて、聴いてほしいという電話です。正直指摘するところは無いのですが、電話を切るために仕方なく指摘を絞り出したりします。そのまた一週間後に、指摘を直して電話で歌います。ユ・ジュンサンさんはたくさんの歌を歌いたい気持ちがあるのですが、また次回その機会があると思います。

KAIさんは僕の同級生です。同い年で、親友です。高校と大学が同じでした。『ベン・ハー』初演の時は、KAIが出演してくれたんですが、その時は彼に頼っている気持ちが強かったです。韓国にはKAIの呼吸があまり好きでない人がいるのですが、僕はKAIの呼吸が好きです。長い友達でもあるので、KAIがどこで呼吸したらいいかを、僕はよく知っています。長い仲なので、この呼吸を感じながら、今回の東京コンサートで、KAIの歌を見せたいと思っています。

パク・ミンソンさんは、『フランケンシュタイン』の「偉大な生命創造の歴史が始まる」という曲を一番最初に歌ってくれた俳優です。俳優としてすごく大変な時期、ミュージカル俳優を辞めたほうがいいのかどうかをすごく悩んでいた時期に、僕と出会ったんです。その時に僕がミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』のアンダーソン役に抜擢しましたので、その思い出があります。元々いい俳優だと思いますが、僕にとっては自分が発見した俳優だと思っています。今はいろんな作品に出て、とても忙しくて、スケジュールが詰まった有名俳優になってしまって、僕の作品にはキャスティングがなかなか難しい俳優になっていますが、KAIとパク・ミンソンさんは僕の心を慰めてくれる俳優になっています。

最後にミン・ウヒョクさんは本当に信じられない俳優です。「信じられない俳優」という表現をしましたが、それがなぜかと言うと、イケメンで、格好よくて、演技も歌も上手な、信じられない俳優です。僕らが自慢する俳優ですが、日本の皆さんの前で歌える機会を、楽しみにしていてくださって大丈夫だと思います。

ミュージカル音楽が僕の感情をかき立ててくれる音楽だと気づいた

――イ・ソンジュンさんの音楽のルーツを伺いたいのですが、幼少期や初めて音楽に出会った時のエピソードはありますか?

音楽は僕が好きで始めたことではなく、むしろ、あまり好きではなかったと思います。母がピアノの先生で、ピアノを弾く姿を見ていて、僕も同じく弾いたと聞きました。小さい頃はすごくやんちゃで、元気な男の子で、じっと座ってピアノを弾くのは、本当に嫌いだったんです。そこで、母は僕に音楽の才能があることを見抜いて、歩いて持って行けるギターを持たせてくれて、演奏することをすすめてくました。8歳の時に初めてギターに触れました。13歳の時には、フランスのパリ・バスティーユ管弦楽団のチョン・ミョンフンさんが指揮する演奏を見ました。

――韓国にそのオーケストラが来ていたということですか?

そうです。韓国にオーケストラが来ていて、13歳の時に、チョン・ミョンフンさんが指揮される演奏をテレビで見て、どんな芸能人よりも強い印象を受けました。おうちでCDで聴いた音楽と、チョン・ミョンフンさんの音楽と解釈はまるで違っていて、とても驚き嬉しかったです。そして、クラシック音楽を集中的に深く勉強するようになり、KAIと同じ芸術高校に入学することになりました。ただ当時、僕にとってクラシックはあまり面白くなかったんですよね。面白いけれど、僕とは合わないところがあって、演劇的なところを入れられないかなと思っていました。その頃に、高校2年生の時なのですが、『ウエスト・サイド・ストーリー』というミュージカルをひとりで観に行く機会があり、それからはミュージカルだけを見てきました。

――その時にミュージカルを作る側になりたいと想われたのですか?

作曲したいと思ったのではなく、自分で望んだ音楽を発見したきっかけですね。それまでは、自分がどんな音楽を求めているかが、分かりませんでした。『ウエスト・サイド・ストーリー』を観て「これだ! 僕が探し求めていたのはミュージカル音楽だ!」と気づきました。ミュージカル音楽が僕の感情をかき立ててくれる音楽だと気づいたのです。毎日のように観劇していた頃もあります。今も、1週間に1本は必ず観ます。

『フランケンシュタイン』は僕が考えるミュージカル語法

――そこから作る側に進んでいくのは、何か転機があったのでしょうか。

僕はミュージカルの中でも編曲をやってきました。その後、『ボニー&クライド』や『モーツァルト!』のオーケストレーションで編曲をして、お金が入るようになりました。その時に僕が自分で曲を書いたら、もっと面白いんじゃないかと思って、書くことになりました。僕が書いた曲が、皆さんに愛されるかどうか、怖さがすごくありましたが、怖さを勇気に変える曲があったんです。それがミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』の「灰色の都市」で、最初に作曲した曲です。その曲を初めてお客さまに聴いていただいた日のことは、忘れていません。初演の時は、「灰色の都市」がありませんでしたが、2010年の再演の時、初めてお客さまにこの曲を聴いていただきました。「灰色の都市」が終わって、ミュージカルを進めなければいけないんですが、歌が終わって1分くらい拍手が続いてすごかったので、次の転換に時間がかかったことがあります。

そして、僕が考えるミュージカルの音楽を、他の表現で作ったほうがいいのではと考えるきっかけになった曲は、ミュージカル『フランケンシュタイン』です。『フランケンシュタイン』は僕が考えるミュージカル語法だと思っています。人々の会話をミュージカルの表現で作りたかった。ミュージカル音楽は愛と希望を表現することがありますが、僕の方法で表現したかったんです。特に『フランケンシュタイン』は理念の葛藤があります。実際に、人間が興奮した時に出るスピード感でメロディーを作りたいと思いました。歌詞を作ってくれたのはワン・ヨンボムさんですが、その歌詞にどうやってリズムを入れて作曲するか、音符の多い歌詞を入れるか、すごく心配しました。そして完成したのが、「ただ一つの未来」という曲です。僕が作曲することに勇気を出したはこの作品です。

音楽で絵を描くことを神様から才能としていただいた

――ミン・ウヒョクさんがおっしゃっていたのですが、イ・ソンジュンさんは日常生活で聞こえる音を、楽器や音楽で表現することに長けていらっしゃると伺いました。特に意識していらっしゃるのでしょうか。

ミン・ウヒョクさんが話してくれた通りですが、僕は本当に周りのものを観察するのが大好きです。ミュージカル『フランケンシュタイン』の中に「傷」という曲があるのですが、日常生活で疲れた時に、海や山に行きたいと思うことがありますよね。その時に僕の音楽を聴いて、実際は行っていなくても、海や山を感じてもらえる音楽を作曲したかったんです。「傷」は、日本の富士山の近くで、富士山を見て作った曲です。名前は忘れましたが、富士山の近くにすごく静かな湖がありました。その湖の静かな湖面に石を投げるいたずらを、僕は何回もしたのですが、皆さんも経験があると思います。何も考えずに何度も石を投げました。なぜその石を投げたのかは自分でも分かりません。それが私たちが感じる湖の姿、私たちの姿だと思います。「傷」の歌は「ピー」という音で始まります。それは、静かな湖を表現しました。その後に続くメロディーは、石を投げた時の姿の表現です。僕は絵を描くのがすごく苦手ですが、音楽で絵を描くことを神様から才能としていただいたのだと思います。僕は自分なりに絵を描くことを音楽で表現して、絵を描いています。

――日本でも韓国ミュージカルはたくさん上演されていますが、何か音楽的特徴などありますか?

そうですね、たくさんのミュージカルの音楽に、確かにそれぞれ特徴があります。僕はその音楽を分析するのが趣味で、K-POPの分析もしています。僕の音楽とK-POPの違いを分析するのも好きです。K-POPを分析して、人々がなぜこの曲を好きかを分析して、好きなコードを見つけ、僕が逆に作品に組み入れることもあります。K-POPもアメリカやイギリスのポップスに影響を受けて作られた歌だと思います。僕もそれらを分析して、僕の世界に合わせて作曲していますが、韓国ミュージカルの音楽の特徴より、自分なりの色を見せて、自分の音楽を作っているのが、自分の世界観だと思います。そして、周りのミュージカル作品を見て、自分が考える世界観を感じて、それを全部記録しています。別の方の作曲された作品を観て、別の方の世界観を理解した上で、自分の世界観を作り、自分の価値観を考えています。多分僕が成長した音楽を皆さんが聴きながら、また感動したり、いろいろ考えてくださるところがあると思います。

ディズニー音楽が大好き、人生は喜劇、人生は長調

――韓国で今年上演された新作ミュージカル『秘密の花園』は、『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』とは違った音楽ですが、どんな魅力を感じて欲しいなどありますか?

『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』はダークな音楽を取り入れて作曲しましたが、実はディズニー音楽が大好きで、死を表現する歌も、明るく表現したかったんです。『フランケンシュタイン』の中で死を表現するんですが、明るく作った曲が「君の夢の中で」です。最初、台本を見た俳優さんたちが、台本と歌が全然違うと言っていました。全然暗くないと。人生のことを悲劇だという人もいますし、悲しいという人も、明るい喜劇だと表現する人もいます。演劇の表現ですが、僕は人生は悲しいのではなく喜劇だと思います。人生は大変なことがたくさんあると思いますが、僕は今すごく幸せです。人生は音楽の表現では長調だと思います。だから、僕はディズニーが大好きです。

――それが『秘密の花園』に生かされているんですか?

そうです。『秘密の花園』は僕なりのディズニーです。他のミュージカルでは暗い音楽が多かったですが、今回の『秘密の花園』では明るい音楽が多く、長調の音楽があります。それと、花園の中にいるように表現したかったんです。ディズニーの中ではお姫様が出たり女王様が出たりしますが、『秘密の花園』では小さい鳥や綺麗なお花がたくさん出てきます。それをディズニー風に表現して作曲しました。

――12月にミュージカル『ベルサイユのばら』を上演する予定とのことで、この作品は日本でとても有名です。どうやって、準備しているのか気になります。

ミュージカル『ベルサイユのばら』は、日本でも人気のある日本の作品ですが、韓国でも大人気で、すごく期待しています。今、ドキドキしながら作曲している真っ最中です。特に、当時のフランスの時代背景を持っていて、現在とよく似た背景だと思います。僕が小さい頃、周りで「ベルサイユのばら」を読んでいる女の子の友達が結構いました。その時は今の話ではなく、別の国の話だと感じたのですが、今回は現代的な表現で考えて作っているところです。人に会った時のときめきを表現したいですし、仕事で疲れた時に音楽を聴いてストレスを発散する感じの表現、それをポップスで表現しようと思っています。『ベルサイユのばら』もこの冬に向けて準備していますので、楽しみにしていてください。

日本のファンたちに愛をお返ししたい、フルオーケストラの演奏で聴く一味違った魅力を

――日本公演の抱負をお聞かせください。

僕は『ジャック・ザ・リッパー』と『三銃士』の曲も作曲しましたが、その時に日本のファンたちからたくさんの愛をもらって、すごくありがたい気持ちです。今は日本のファンたちにその愛をお返ししたいと思っています。

そして、本当に尊敬して共演したいと願っていた、東京フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団と共演できることを、とても光栄に思っています。ミュージカルは20人ほどのオーケストラがピットの中で演奏しますが、今回のミュージカルシンフォニーコンサートは、舞台の上にオーケストラが上がって、コンサートとしてオーケストラと共演する形になります。ミュージカル本編では味わえない、フルオーケストラの演奏で聴くミュージカルナンバーも期待していただきたいですし、楽曲に対するまた一味違った魅力を感じていただけることでしょう。また、韓国で『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』に出演した俳優たち、それぞれの歌声も聞いていただけますし、皆さんが『フランケンシュタイン』を観た時の感動を、歌を聴きながら満喫することもできます。

――最後に、コンサートやその後のご活動にむけて、メッセージをお願いいたします。

オーケストラシンフォニーコンサートを聴きながら、俳優たちの歌、僕が指揮すること、オーケストラとの共演を楽しんでください。僕も指揮しながら癒されることもあるんです。皆さんも今回の公演にいらっしゃって、癒されたり、感動されたり、その気持ちを満喫していただいたら嬉しいです。ご期待ください。今年の夏には『ベン・ハー』が、冬には『ベルサイユのばら』を準備中なので、皆さん楽しみにしていてください。

(取材・文:岩村美佳)

  
【Brandon Lee (イ・ソンジュン) プロフィール】

作曲時はBRENDON LEE、指揮者としてはイ・ソンジュンの名前で活躍。
「クラシックギター」を専攻にソウル芸術高校を経てソウル大学校音楽大学器楽科(弦楽専攻)を卒業し、国内外有数のギターコンクールで1位を入賞する快挙を成し遂げ、国際的に認められた。
その後、ミュージカルを勉強するためにイギリスのスコットランド王立音楽院奨学生として進学し、最優秀(Distinction)で卒業し、帰国後、活発に作品活動を繰り広げてきた。
2014年、史上初の興行記録を立てた創作ミュージカルの神話<フランケンシュタイン>を興行させると同時に、第8回ザ·ミュージカルアワードで「今年のミュージカル賞」をはじめ「音楽監督賞」を受賞し、大きく注目された。 その後、「ベン・ハー」、「メアリー・シェリー」、「アーモンド」、「種の起源」、「秘密の花園」などのミュージカル作曲家として活動し、国内ミュージカル界の地位を確固たるものにしただけでなく、映画、ドラマOSTからクラシックと大衆的な音楽スタイルまで広いスペクトラムの音楽を披露している。 現在、檀国大学校教授として後学養成にも努め、旺盛な作品活動をしている。

COMPOSER & DIRECTOR [MUSICAL]
フランケンシュタイン、ベン・ハー、秘密の花園、鐘の起源、アーモンド、メアリー・シェリー、光州、モーツァルト!、ジャック・ザ・リッパー、ドッグファイター、三銃士、金剛1894、オールシュックアップ、底辺で、花より男子、バーナム、ザ・アンダードッグ、シンデレラ、ロビンフット、ゾロ、ボニー・アンクライド、キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン、ハムレット、オー! あなたが眠っている間他多数

 

BRANDON LEE
ミュージカルシンフォニーコンサート
フランケンシュタイン&ベン・ハー

■作曲 BRANDON LEE / 指揮 イ・ソンジュン
■出演
韓国キャスト:ユ・ジュンサン (大阪公演のみ) 
       KAI 
       パク・ミンソン
       ミン・ウヒョク (東京公演のみ)
日本キャスト:加藤和樹
■演奏 
東京公演:東京フィルハーモニー交響楽団
大阪公演:関西フィルハーモニー管弦楽団

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東京公演

|日時|2023/06/17(土) 18:00
|会場|文京シビックホール 大ホール
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大阪公演

|日時|2023/06/19(月) 18:00
|会場|フェスティバルホール
▶▶ 公演詳細

  

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