2023/6/10
インタビュー
パク・ミンソン(当時の名前はパク・ソンファン)が、2016年『ミス・サイゴン』日本公演にジョン役で出演した舞台をご覧になった方も多いのではないでしょうか。韓国に帰国後、ミュージカル俳優としての進路を悩んでいたときに、イ・ソンジュン監督と運命的に出会い、そのキャリアが大きく花開くことになります。『フランケンシュタイン』上演に向けて制作されたガイド音楽では、代表曲「偉大な生命創造の歴史が始まる」を一番最初に歌い、2017年と2019年『ベン・ハー』ではメッサラ役を、2018年『フランケンシュタイン』ではアンリ/怪物役を演じました。両作品の魅力や経験、ミュージカルとの出会いや魅力、コンサートに向けた思いなどを聞いた、パク・ミンソンのインタビューお届けします。
――『ベン・ハー』の作品と楽曲の魅力についてお聞かせください。
たくさんの魅力がありますが、まずはスケールです。原作の力もありますし、舞台の上でも想像以上に規模の大きいセットの大きさ、音楽が魅力です。曲の印象は、戦車競争の様子を表現するための、ブラスや弦楽器などを使った、聞いただけで心臓がドキドキするような音楽がいいと思います。
――歌う面ではいかがですか?
戦車に乗って競争するシーンがすごくよかったです。練習の時も実際に戦車に乗って、競争するような気持ちで練習したのでダイナミックでした。
写真提供 EMKミュージカルカンパニー
――『フランケンシュタイン』の作品と楽曲の魅力をお聞かせください。
一番の魅力は、すべての役が一人二役であることです。そして、原作が持っている感動とスケールがあり、ファンタジーやSFのように観客に感動を与えるのが魅力だと思います。曲は『ベン・ハー』も好きですが、『フランケンシュタイン』の曲は個人的に自分のタイプでもっと好きです。その理由は叙情的な気持ちが伝わるから。『ベン・ハー』は男性的でダイナミック、『フランケンシュタイン』の曲は華やかで美しいと思います。
写真提供 EMKミュージカルカンパニー
――Brandon Leeの楽曲の印象をお聞かせください。
いろいろありますが、一つ目はジャンルに縛られない無限の曲であること、二つ目は曲を聞いた瞬間に心を打つ、皆にうける大衆的な音楽であることです。だから、多くの観客に愛されているのだと思います。
――その楽曲を歌う時の難しさや、表現についてはいかがでしょうか?
俳優によって個人差があると思いますが、自分はイ・ソンジュン監督と長く一緒に仕事しているので、難しいと思うことはほとんどありません。監督は俳優をサポートして合わせてラクにやらせてくれます。あ、難しいことが一つありました。高音の曲があるので俳優は歌うのが難しいです。
――イ・ソンジュン監督が、パク・ミンソンさんの声にものすごく惚れ込んで抜擢されて、その後、いろいろな作品に出演されるようになったと伺いました。出会った時の印象はいかがでしたか?
プーさんみたいな感じで可愛かったです(笑)。前は可愛かったですが、いまは格好いいです。
――出会った時にお話されたことなど、覚えていますか?
一番最初に出会ったのは、葬儀場でした。初めてでしたので、あまり話せなくて、ご挨拶だけでした。その後、お仕事でお会いするようになりましたが、初めて仕事する時はとても緊張しました。
――ワン・ヨンボム演出家、イ・ソンジュン監督と、長い間一緒に多くの作品をされていて、家族のようかと思います。家族のような雰囲気の良い点と悪い点は何ですか?
お互いによく知っているからこそ、演出家と音楽監督は、僕が舞台上で一番格好よく魅力的にアピールできる表現を知っているので、それを指導できることが良い点ですね。そして、僕にとって良かったことは、演出家と音楽監督が何を求めているかを早く理解して決意できること。良くないことは、お互いを家族のようによく分かっていて、僕が新しいことを始めようとしたら、少し恥ずかしいことです。
――ワン・ヨンボム演出家と他の演出家との違いは何ですか?
他の演出家たちもたくさんいますが、ワン・ヨンボム演出家は、俳優一人ひとりと個人的に話をして、その俳優がより自分の役割を果たせるように、もっと自分らしい表現ができるようにと演出してくれるので、素晴らしいなと思います。
――イ·ソンジュン監督と今回の共演に当たり、改めて思うことはありますか?
何年か前に、イ・ソンジュン監督のコンサートが東京で開催されて、ゲスト出演したことがあります。今回も同じくイ・ソンジュン監督のコンサートですが、今回は規模が全然違いますし、東京を代表する東京フィルハーモニー交響楽団、関西を代表する関西フィルハーモニー管弦楽団との共演なので、正直プレッシャーもあります。皆さんにどうやってお見せするか、期待感もありつつ、プレッシャーも感じながら準備しています。
――去年11月に、韓国でのBrandon Leeコンサートに出演されましたがいかがでしたか? 何曲歌いましたか?
『ベン・ハー』と『フランケンシュタイン』合わせて4曲歌いました。その時も60人オーケストラでした。韓国でも60人オーケストラでコンサートを行うのはあまりないことですが、本当に胸が熱くなり、すごく光栄な気持ちでコンサートに出演しました。
――パク・ミンソンさんの「I, Messala(私はメッサラ)」を、ミュージカルファンがたくさん愛していらっしゃいますよね。 歌を準備する時に大変だったことは何ですか?
一番最初に、ただ立って歌う稽古をしていた時は、この曲はそんなに難しくないだろうと思っていたのですが、芝居の稽古をする時は、ローマ軍のトップになるまでの5分以上のシーンを全部演技して、歌だけではなく、アクション、ドラマ、演技まで入れて歌わないといけなかったので、本当にすごく難しい曲だと思います。最初は木刀を持って稽古しました。本番の直前には、舞台用の本物の剣をもらいましたが、とても重くて、持って演技しながら歌うのが本当に大変でした。歌がつらい、高音が出ない、音が揺れる、剣が重くて呼吸が苦しいなどの理由で、最後まで歌えませんでした。5キロのダンベルを持って毎日歌の練習をしたら少し体が慣れたので、ダンベルを置いて剣を持って稽古できるようになりました。本当に大変でした。
――今回のコンサートではどう表現する予定ですか?
いまは体が慣れているので、歌だけでも表現ができると思います。
――共演の皆さんについて、何か思い出などがあればお聞かせください。
それぞれの共演者たちとの思い出はたくさんありますが、本当に日常的、一般的なことです。例えばユ・ジュンサンさんは、韓国ではとても有名な俳優さんです。時々電話しますが、隣に住んでいるお兄さんみたいな感覚で、とても楽です。本当に優しく仲よく話してくれます。KAIさんは1歳年上で、すごくプロフェッショナルな姿が、学ぶべきことだと思います。クラシックが専門ですが、それを見せてもらったり、教えてもらったりしています。ミン・ウヒョクさんは、同じ役もしましたが、相手役が多かったです。すごく格好よくて、ハンサムすぎて、壁がすごく高いです。本当に格好いいなと思います。身長も高いので、僕とは世界の感じ方が違うのではないかなと思います。
――日本からは加藤和樹さんが出演されます。
初めての共演なので、緊張と期待感があります。加藤さんは日本でも有名な方だと聞いていますので、すごく楽しみです。
――パク・ミンソンさんのパーソナルな部分について伺いたいのですが、ミュージカル俳優を目指そうと思ったのはどんなきっかけがあったのでしょうか?
僕にできることがこれしかなかったんです。
――ミュージカルとの出会いは?
大学時代に、歌手としてデビューして、歌ったり踊ったりしましたが、元々は演技が専攻でした。「歌う」「演技する」「踊る」という3つを全てできるのがミュージカル俳優で、仕事にできていることが、いま本当に幸せです。学生の時に、友達がオーディションを受けに行こうと言いましたが、友達は落ちて、僕だけ受かりました。その友達には、時々会います。彼がお酒を飲むと、「おい! 俺がきっかけでお前は俳優になれたんだぞ!」と言います(笑)。
――きっとミュージカルに導かれたんですね。
そうかもしれません。
――ミュージカルは総合芸術だと思います。その「ミュージカル」という芸術が、観客に伝える力を、どのようにお考えでしょうか?
演劇と違って、台詞にリズムとメロディが入っています。単純に台詞という言葉で聞くのではなく、音楽的に伝えるので、よく理解できるようになり、感動します。それが一番大きな魅力だと思います。
――音楽が心を動かすということですね?
そうです。同じ言葉でも、「愛している」という言葉だとドライな感じになりますが、音楽的にリズムとメロディで伝えたら、セレナーデ的にもっと感動を伝えられると思います。
――過去に出演したミュージカルの中で、特に印象に残っている作品はありますか?
難しい質問ですが、やはり『フランケンシュタイン』と『ベン・ハー』です。このふたつの作品を愛しています。愛していることに理由はありません。
――特別な愛情があるんですね。役を演じてなのか、作品全体を通してなのか、音楽なのか、特別な要素はありますか?
全て含まれています。ガイド音楽というものがあるのですが、ミュージカル『フランケンシュタイン』がこの世に誕生する前に、僕が一番最初にガイド音楽を歌ったので、感覚が違います。ガイド音楽ではビクター・フランケンシュタインを歌いましたが、本公演の時はアンリ/怪物役を演じました。役の上ではアンリ/怪物を演じましたが、ビクターもアンリ/怪物役も、一番最初は自分でやったので、特別な感情があります。
――両方の役の目線から物語を体感されたということですね。
その通りです。
――日本で『ミス・サイゴン』に出演されましたが、日本での思い出などをお聞かせください。
やはり言葉の壁があり、日本語で演じて歌うことが心配の種で、毎日緊張していました。外国人がジョン役をやっているのではなく、『ミス・サイゴン』の中のジョンとして見せたかったんです。名古屋が最後の地方公演でしたが、千穐楽まで毎日集中して演技しました。それが一番の思い出です。
――同じジョン役の上原理生さんと、よく飲みに行っていたと伺いました。
(笑)。会いたいですね。上原さんとはしばらく連絡していないのですが、コロナで舞台がなかった時期にLINEで励まし合いました。
――日本公演の抱負をお聞かせください。
すでに『フランケンシュタイン』は日本の皆さんに愛されていて、そのおかげで、イ・ソンジュン監督や他の俳優たちと一緒に日本公演ができることになりました。皆さんの愛と期待に応えられるように、一所懸命準備しています。観客の皆さんに合える瞬間を、毎日楽しみに、会いたい思いが募っています。舞台から客席に座る皆さんの姿を早く見たいです。観客の皆さん大好きです。愛してます。
――最後に、コンサートやその後のご活動にむけて、メッセージをお願いいたします。
今後もミュージカルは続きます。4月までミュージカル『MID NIGHT』に出演していました。6月も『WILD GREY』が入っていますが、途中で『MID NIGHT』に再び出演する予定です。そしてコンサートでは、皆さんは、この世で一番美しい音楽を聴いていらっしゃいます。どうぞ最後までお楽しみください。
(取材・文:岩村美佳)
日本公演「ミス・サイゴン」にてジョン役としても出演(パク・ソンファン)し、「三銃士」や「ジャック・ザ・リッパー」等の韓国ミュージカルでも幅広く活躍する。力強い歌声でファンを魅了する。
◆出演作:ミュージカル「フランケンシュタイン」「ミッドナイト・エントラス」「ルドウィック」「容疑者Xの献身」「人間法廷」「シデレウス」「ニジンスキー」「ヴィンセント・ファン・ゴッホ」「ザ・デビル」「ミョルファグン」「忽然とした」「アランガ」「英雄本色」マーク役(19) 「ベン・ハー」「ミス・サイゴン」日本公演 他
BRANDON LEE
ミュージカルシンフォニーコンサート
フランケンシュタイン&ベン・ハー
■作曲 BRANDON LEE / 指揮 イ・ソンジュン
■出演
韓国キャスト:ユ・ジュンサン(大阪公演のみ)
KAI
パク・ミンソン
ミン・ウヒョク(東京公演のみ)
日本キャスト:加藤和樹
■演奏
東京公演:東京フィルハーモニー交響楽団
大阪公演:関西フィルハーモニー管弦楽団
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|日時|2023/06/17(土) 18:00
|会場|文京シビックホール 大ホール
▶▶ 公演詳細
|日時|2023/06/17(土) 18:00
|会場|文京シビックホール 大ホール
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