2025年初夏に公開される池田エライザ主演映画『リライト』は、ゴジゲン・松居大悟が監督を務め、ヨーロッパ企画・上田誠が脚本を手掛けるという初タッグ実現も話題のひとつ。演劇からキャリアをスタートさせた彼らがそれぞれ手掛ける舞台が、奇遇にも映画公開前、ほぼ同時期に上演される。

松居作品は2本、まずは3月に池松壮亮主演映画『君が君で君だ』（2018年公開）の原作として知られる戯曲『極めてやわらかい道』（2011年初演）が川名幸宏の演出によって上演される。そして4月には万能グローブ ガラパゴスダイナモス・川口大樹の脚本を演出する、万能グローブ ガラパゴスダイナモス×ゴジゲン×小山田壮平『見上げんな！』の上演を控える。

『見上げんな！』は福岡出身のクリエイターたちが集結する新作舞台。松居とガラパの共通点は、福岡出身ということはもちろん、「上田作品をリスペクトしている」ことだという。松居曰く「ウエチル」（上田チルドレン）なんだとか。福岡出身とはいえ東京で活動している松居と、福岡で活動を続けるガラパをつないだのは、実はヨーロッパ企画の石田剛太。石田は福岡のラジオ局LOVE FM『こちヨロ（こちらヨーロッパ企画福岡支部）』でパーソナリティを務めるなど、福岡とは縁がある。「石田さん、番組内で『見上げんな！』の特集を組んで、ラジオドラマにもしてくださったんですよ」とうれしそうな松居。この公演はヨーロッパ企画が全面協力!? と上田に訊ねると「いやいや、オブザーバーとして」と控えめな答え。そうはいっても、チラシに推薦コメントを提供、しかも公演会場で販売されるパンフレットでは松居と対談を行うなど、強力なサポート体制で心強い。

さらには『見上げんな！』の出演に、ヨーロッパ企画の酒井善史が名を連ねる。「（ガラパ主宰で俳優の）椎木（樹人）さんがキャスティングしたんですけど、ヨーロッパ企画の方には絶対に参加していただきたかったんです。ヨーロッパ企画が存在していないと、僕たちはこうして一緒に作る機会はありませんでしたから」と松居。「酒井さんは、たった一人でヨーロッパ企画のカラーを出せる俳優。小道具製作もしますし、京都から福岡へ発明品とともに乗り込むつもりのようです。早速、工具箱を準備していましたからね」と上田らしいユーモアで返す。

『見上げんな！』は福岡が舞台、20代の元アイドルの駆け出し映像作家と、故郷の福岡で出会った解散状態のおじさんバンドとの交流を描く。「東京と福岡の距離感、若者と大人たちの世代間交流を描きながら、夢をあきらめた人たちとこれからの夢を持っている人たちの羨望や悔しさを乗り越えるような物語になると思います。なにより脚本の川口さんと僕は、ヨーロッパ企画を通じて出会っているので《群像コメディ》ということを大事にしたい」と松居。

彼らが敬愛する上田が作・演出を務める新作舞台『リプリー、あいにくの宇宙ね』は、5～6月に上演される。「『見上げんな！』と同じ、宇宙モノなんですよね？」と松居が問うと、「そう、こういうのは響き合うんやなと思いました」と上田。「僕たちは、見上げたら宇宙がある、という感じなんですけど」「なるほど、ちょっとスペーシーなニュアンスで、ということか。僕はがっつり宇宙を描きます」と会話がつづく。「上田さんとはこの2～3年、映画の本打ち（脚本打ち合わせ）をずっと一緒にやっていましたが」「演劇についてはあまり話していないから」と、原点についての話題では、さらに熱くなるようだ。「でも『リライト』も本当に面白いので観てください！」「上田さんの緻密な脚本を、僕が感情的に撮っています。舞台も映画もぜひ観てほしいです！」と師弟コンビは締めの言葉も息が合っていた。

取材・文：金田明子
撮影：関信行
配信：チケットぴあ

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