2023/12/25
インタビュー
――東京公演も2週間を過ぎ、現状の手ごたえはどのようなものですか?
「体はボロボロですが、逆に、マインドは日に日にテンションが上がっている感じです。なぜかというと、お客様がライブのように声を出して反応してくださるからなんですよ。人間ドラマがフューチャーされるお芝居部分は、客席の感情移入をこっちが感じ取るくらいしっかり見てくれて、最後のカーテンコールになると、もうね。お客様も一皮むけるというか、ものすごい解放が起きるんです。羽を伸ばしてくれるというのが、とてつもなく元気をもらえます」
――お客様まで一皮むける、素敵な表現ですね。ステージ上で限界を迎える瞬間は、ここだ、というのがありますか? それを迎えてどう超えています?
「ポイントはだいたい決まってきましたね。でも、抗わない。限界を超えたところから急にリラックスするんです。この感覚は僕だけ? 頭は働かない、ただ、身体に沁みついているものをどんどん表現していくだけ。それでいて、心は一番落ち着いている瞬間です。限界に達する前は、いろいろ視界に入っていて、言い方はアレですが邪念もあるわけです。でも、限界に近づくにつれて見えるものがどんどん絞られ、限界を超えるともうコレしかなくなる(と、両の手のひらで目の前に細い道のようなしぐさ)。ここが一番好き。だから、絶対に手加減はしません」
――この作品だからこそ、というものがありますか?
「ありますね。もっと俯瞰で自分を見なきゃならない作品ももちろんあります。でも、実は僕は昔から俯瞰の視点より、入り込んで泥みたいに這いつくばってやるのが好きなんですよ。あんまり自分を綺麗に見せたくないというか、人間くさいほうがよくて。今回の作品はまさに這いつくばるしかない。小手先ではできない。ケガをしないよう冷静さもあるけれど、なにも考えられなくなった瞬間が僕自身は好き。パフォーマーとして最も自由になっている瞬間かもしれないです」
――そうやって究極に自由になったお姿を見るから、お客様にも羽が生えちゃうんですね。
「なるほど、そうだといいなあ(笑)」
――今回のレンというキャラクターについて教えてください。
「今まで表現したことないぐらい、すごく影を持っているキャラクターです。過去のトラウマを背負い、なんで自分が生きているかがわからない、かといって死ぬ勇気もない。これって人間の究極の心情じゃないかと。だから自暴自棄にもなるし、人に殴られることが贖罪。それでも、仲間に出会って成長する、そこがドラマなんですが、じゃあなにをお客様に感じてもらえるかというと、這い上がれるぞ、っていうのがあると思うんです。無理だと思えば無理だけど、仲間を信じてみたらなにかが変わるかもしれない。僕が演じるレンの希望が、そこです」
――植木豪さんとのダンスアクションは、TETSUHARUさん監修のもとお2人でつくったとのこと。たっぷり2回ありますね。
「オープニングと、2幕の冒頭です。豪くんとはお互いの武器を熟知しているから、こうして、ああして、ここでバク転を入れてと、まずは口頭でパッと1時間ほどでできました。バク転一つとっても人によってやり方は違うけれど、僕は豪くんのバク転がわかっているから、じゃあそこにこのアクションを挟もうとか、逆に豪くんも僕のアクションを理解し尽くしていて。いわゆる阿吽の呼吸ができるのは豪くんとだけです。その上で、キャラクターの関係性とかストーリーの流れに合わせていくんですが、アクションの構成よりも考えどころでした。ショーとして見せるのであればすぐできちゃうけど、キャラクターの心情や場面を考慮しないと物語にならない。TETSUHARUさんが調整してくれるので、TETSUHARUさんと豪くんと僕のいい三角関係で、……ん?三角関係はおかしいか(笑)、3人のいいバランスで(笑)」
――(笑)。さまざまなキャラクターとの絡みがある中、屋良さんから見た見どころは?
「沢山ありますが、一つ、豪くんとの関係性。『THE CIRCUS!』シリーズでは敵対していた2人が、今回は仲間になって悪に立ち向かっていくという。前作を知っている方にはすごくエモいと思います(笑)。あと、北園(涼)くんがすごく大きくて、身長184cmかな。僕とこの身長差でアクションするってほぼないですよ。北園くんにしたら僕なんてダーツのブル(的の中心)くらい。で、僕は北園くんをウルトラマンだと思って戦っています(笑)。見どころですね」
――兵庫公演のお客様にメッセージをお願いします。
「兵庫の劇場がすごく好きです。ステージから見る景色も好きだし、前回見に来てくれた知り合いが音響が良かったと言っていました。音楽を大事にする作品なので、それをまた兵庫の劇場で演じられれば、東京とも違った迫力になるはず。素敵な音楽の中で自分たちが踊り戦っているって想像するとやっぱりワクワクしますよ。このエネルギーをぜひご一緒に。ライブみたいに盛り上がって、カーテンコールではなんなら立ち上がってくれてもいいのになあ!ってくらいです(笑)」
文:丸古玲子
Special Entertainment Show THE CIRCUS! presents
オリジナル・ミュージカル「The Agent」
■企画・演出
TETSUHARU
■脚本・作詞
福田響志
■音楽
坂部 剛
■出演
屋良朝幸
愛加あゆ
寺西拓人 原 嘉孝 木内健人 高橋駿一(PADMA)
なかねかな
北園 涼 可知寛子
植木 豪 他
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|日時|2024/01/13(土)~2024/01/14(日)≪全3回≫
|会場|兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
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