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2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演
いのうえ歌舞伎『天號星』 大阪公演レポート

2023/11/1

公演レポ

2023年 劇団☆新感線 43周年興行・秋公演 いのうえ歌舞伎『天號星』

驚異のライブ感とアクション! 多彩なキャストが大阪の客席内でも暴れまくる!

東京・THEATER MILANO-Zaでの上演(9月14日~10月21日)を経て、いのうえ歌舞伎『天號星』が11月1日に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールでいよいよ開幕。初日前日にはゲネプロがおこなわれ、大阪城公園内にある劇場にロックが響き、奇想天外な本格バトル時代劇が熱く繰り広げられた。

大きな劇場へ進出後、これほど客席を多用する劇団☆新感線の舞台があっただろうか!? 場内全体が元禄時代の江戸と化し、通路を駆け抜ける俳優の〝風〟を受け、近くでふと見せるあんな表情、こんな表情まで釘付けになるライブ感。舞台袖からの登場より、客席からの登場の方が多いのでは……と錯覚するほどで、俳優たちの運動量はかなりのもの。そのうえ「今回はガッツリチャンバラ新感線を創ります」と、演出のいのうえひでのりが予告していたように、多彩なアクションが炸裂! さすが観客を楽しませるエンタテインメントを追い続けて43年の劇団☆新感線。アッパレだ。

中島かずきが〝池波正太郎風エッセンス〟も盛り込んで書き下ろした本作は、これまで何度も新感線の舞台に出演してきた早乙女太一&早乙女友貴兄弟が、初めて二人揃って看板俳優・古田新太と共演することでも話題。古田の殺陣に憧れ続けた早乙女兄弟が、古田と刀を交わす興奮とカタルシス。それは長年新感線の舞台を観てきた人にとってもたまらない瞬間だが、なかなかどうして、一筋縄ではいかない。なんと古田と早乙女太一の役の人格が入れ替わるのだ。最初は観ていて頭が多少混乱するが、その〝入れ替わり〟が別のカタルシスへと転化していくのだから、またまたアッパレ!

口入れ屋の藤壺屋主人・半兵衛(古田新太)は、裏では世のため人のため、悪党を始末する〝引導屋〟の元締めだが、実は気弱で温厚。女房のお伊勢が真の元締めとして仕切っている。そうとは知らない、はぐれ殺し屋の宵闇銀次(早乙女太一)は、裏稼業の独占を目論む黒刃組に依頼され、金のためよと半兵衛に斬りかかる。すると天號星の災いか、激しい雷鳴の中、半兵衛と銀次の身体が入れ替わってしまう。そこへ銀次を追う人斬り朝吉(早乙女友貴)が、心は半兵衛の銀次に襲い掛かり――。

強面なのに弱腰、女房に「はい!」と小学生のような返事をする古田の半兵衛。それが銀次の人格になると、貫禄たっぷりの頼もしい元締めに。でも身体はなまっているので、キレキレの立ち回りとはいかない。このあたりの遊び心満載な演出に、思わず笑ってしまう。飄々としているようで、キリッと場を締める存在感の古田にうってつけのキャラクター。その振り幅に、こちらの気持ちもどんどん前のめりになっていく。

半兵衛の人格になった見た目は銀次の早乙女太一は、〝狂犬〟の異名をもつ殺し屋の眼差しと素早い動きから一転、挙動不審なモジモジ半兵衛の銀次になるから、おかしくてたまらない。過去の舞台ではクールな闇の剣客というイメージの早乙女太一が、終盤まで新境地を開拓し続ける姿に拍手喝采。もちろんフルスロットルな立ち回りもあるのでご安心を。

無宿渡世人で、強い者を斬るのがなにより好きという危険な男、朝吉を演じる早乙女友貴は、黒一色コーデの格好いいスタイル、荒くれ者の風情がハマっていて、楽しんで演じているのが伝わってくる。超高速、流麗な立ち回りはますます磨きがかかり、やはり兄弟ならではの息の合った斬り合いにも惚れ惚れ。刀の一振り一振りに尖ったキャラクター性を表出させるなど、アクション自体が物語の奥に潜むものを語ってゆく。

ケレン味たっぷりの多彩なチャンバラが繰り出されるなか、まるでワイヤーアクションのように体を浮かせて回し蹴りを放つなど、驚くような身体能力を見せるのが、新感線に初出演の山本千尋。3歳から武術太極拳を始め、世界ジュニア武術選手権大会で2度優勝もしている彼女が、半兵衛の義理の娘・早風のいぶきを熱演。引導屋として次々と斬りつける驚異的なスピード、中国武術をベースにした動きに目を奪われる。かなり強気な女の子かと思いきや、口調は優しく温かいというギャップもいい。

同じく新感線の舞台に初出演の久保史緒里(乃木坂46)は、現役アイドルとしての華やかさを、歌って踊る神降ろしのみさき役で放ち、スリリングな斬り合いのドラマの清涼剤に。みさきの母・渡り占いの弁天を演じる高田聖子との母娘関係など、芝居の面でもさまざまな顔を見せ、新感線の舞台にしっかりと足跡を残した。また、占い師としての怪しさ全開、天號星の運命の行方を見届ける高田聖子の存在感も健在。

時代劇には欠かせない悪代官、敵役を一手に引き受けるのが、明神甲斐守忠則役・粟根まことと、新感線最多出演歴を誇る白浜屋真砂郎役・池田成志。妙なマゾ癖!?のある粟根のクセモノ感と、眼光の鋭さからモミアゲまで目に焼きついて離れない池田の奇矯。このオモシロ芝居に観客がどんな反応を示すのか、大阪の盛り上がりが実に楽しみ! また半兵衛の女房・お伊勢役を、任侠映画を地でいくような格好良さで演じた村木よし子、歌の場面に欠かせない右近健一や山本カナコなど、劇団メンバーの活躍が、怒涛のように展開する人情味に溢れた物語の魅力を押し上げる。

盆が回り、派手なライトが交差し、チャンバラと一体化したスキのない演出で、攻めに攻めるアクション時代活劇。この一体感あるサイズの劇場で感じるダイナミックな熱量を、全身でしかと受け止めて!

取材・文:小野寺亜紀
撮影:田中亜紀

  

2023年 劇団☆新感線 43周年興行・秋公演
いのうえ歌舞伎『天號星』

|日程|2023/11/01(水)~2023/11/20(月)≪全22回≫
|会場|COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
<当日券販売決定!>

■作:中島かずき
■演出:いのうえひでのり
■出演:古田新太 早乙女太一 早乙女友貴
久保史緒里 高田聖子 粟根まこと 山本千尋
池田成志
右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋
山本カナコ 磯野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ
村木 仁 川原正嗣 武田浩二
藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平 紀國谷亮輔 寺田遥平 伊藤天馬
米花剛史 武市悠資 山崎朱菜 本田桜子 古見時夢

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