2023/10/13
インタビュー
「テレビと映画と舞台と、3つの現場をやらせていただいていて。少年時代に最初に影響を受けたのはテレビなので、自分の中で1番恩返しをしなきゃいけないなと思うのは、まずテレビなんですよね。それから映画があって、舞台。舞台はちゃんと観るようになったのは大学生になってからだから、結構遅いんです。だけど、自分がやりたいなと思うことを一番理想的な形で作ることができる現場となるとこれが、1番が舞台で2番目が映画、3番目がテレビなんですよね。舞台は特に、僕のやりたいことを付き合いの長いスタッフが全部わかってくれているし、自分の中の経験値もあるから好きなことを自由に作れて、冒険もでき、そしてこれが大事なことだけど、ちゃんとお客さんも付いてきてくださってる、今のところは。最も恵まれた環境にいるという意味で、やっぱり舞台がいいなと思います」。
「書き始めたばかりですけど、頭の中では第一声からラストまで、ちゃんと全部ありますから、安心して下さい」。
「意味は、ないです。英語が重要なモチーフになるから、アメリカの片田舎の物語にしたくて、その場所をどこにしようかと。で、一番音としておもしろい場所を選びました。オデッサなのにテキサスというのも面白かったし。調べてみたら、本当に何もない街で、これもまたおもしろいなぁと。たまたまですが、オデッサにはシェイクスピアのグローブ座を模した劇場があるんですよ。意外と演劇が盛んなのかもしれない」。
「自分の作品に影響受けるというのも変な話ですけど、久々に『笑の大学』を再演してみて、少人数でやるお芝居がやはり演劇の原点のような気がしたんです。もちろん多人数の芝居も、それなりのおもしろさはあるし楽しいんだけれども。でも今回は、できるだけ削ぎ落した形の、ギリギリの状態で作品を作ってみたくてこういう形になりました。脚本家として一番書きやすいのは二人芝居なんですね。会話劇であるかぎり、どちらかが一方が喋っていれば、お芝居として成立する。ところが3人だと、2人が話している間にもう1人が何をやっているかが重要になってきて、いきなり構成が複雑になる。実は大変なんです、三人芝居は。でもその分、やりがいがあるし、考えがいがあるなと」。
「昔から、言葉をテーマにしたものをやりたいと思っていたんです。言葉は人と人との関係性の基本の部分。脚本家として、一度きちんとそこに向かい合った作品を作ってみたいと。『トーク・ライク・シンキング』をニューヨークでやった時、1か月半ぐらい向こうで生活していたんです。僕は英語が出来ませんから、毎朝行くカフェでエッグベネディクトを頼むんだけど、これが全然伝わらない。で、ある時、やけくそになって日本語で言ってみたら、細かいところまでちゃんと伝わったんですよ。大事なのは心なんだってその時、すごく感じた。じゃあ逆に言葉って一体何なんだろうって。その時の経験が、今回のお芝居にも役立っている気がする。役立ってないかもしれないけど」。
「映画や舞台のキャンペーンで海外へ行くと、ステージで話す時に必ず通訳の方が付いてくれるんですね。僕は海外でも、どうせなら観客に笑って欲しいからなるべくジョークを挟むようにしている。それを通訳さんが理解してくれていると、ちゃんとお客さんが沸くんですが、あまり笑いのセンスのない方だと客席がシーンとなっちゃう。逆に通訳さんが意訳してくれて、めちゃくちゃ盛り上がる時もある。そう考えると、通訳ってすごく不思議な存在だなって。ただ言葉と言葉の間をつなぐ役割だけでなく、演出家でもある。そんな通訳の物語がずっとやってみたかった」。
「今回は純粋な意味でのコメディにはならないと思います。僕が思っているコメディとは、頭から終わりまで、どのシーンもどのセリフもすべて笑いにつながる、笑わせるためだけに成立しているものだけで作られているもの。それで言うと今回は、笑わせることを第1の目標にした作品ではないです。もちろんお客さんに楽しんでもらいたいですし、笑ってもらいたい。そういう設定やシ-ンはあるけれど。通常の僕のコメディって会話がメインで、スピード感あふれた言葉のやり取りから生まれる笑いが大事な要素になるんだけど、今回は言葉が通じ合わない者同士の話だから、そこが封印されるわけで、僕としてもある意味チャレンジなんです。会話の間に必ず通訳が入る。丁々発止になりそうでならない、もどかしさみたいなものの中にこのお芝居のおもしろさがきっとある。そんな気がしています、まだ出来てないけど」。
宮澤エマさん「僕の作品のことをすごく理解している女優さん。『鎌倉殿の13人』もそうだったけど、ドラマの場合、僕は演出に携わらないので現場にはいない。だから僕がこうやってほしい、と思ったことが俳優さんに伝わらない場合がある。でも彼女は、何も言わなくても僕が言ってほしいセリフの音やリズムを的確に判断してくれるんです。ありがたいです」。
柿澤勇人さん「『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』の時に感じたんですけれども、追い詰められるとすごい力を発揮する。そして舞台上で追い詰められている姿がまた絵になる。のたうち回っているのがあれほど絵になる人はいないと思いますね。今回も思いっきり追い詰められて欲しいと思っています」。
迫田孝也さん「迫田さんは、いろんな意味でラッキーな人(笑)。ここでは詳しくは語りませんが、とにかく強運なんです。その運を僕にも分け与えてもらいたくて、今回も出演してもらいました」
「大河ドラマは本当に大好きで、すごくやりがいのある仕事ですが、3年近く没頭しないといけないぐらいヘビーな作品なんですよね。ずっとテレビの世界にいて、スケジュール的に舞台から離れていて、ようやくこの作品で戻って来る事が出来た。その喜びを作品にぶつけたい。理想のキャストに恵まれ、濃密な演劇空間で展開する三人芝居をお見せしたいです。やっぱり三谷は舞台がおもしろいね、と言ってもらえる作品にしたいなと思っています」。
TEXT:高橋晴代
舞台『オデッサ』
■作・演出
三谷幸喜
■出演
柿澤勇人
宮澤エマ
迫田孝也
■音楽・演奏
荻野清子
▶オフィシャルサイト
|日時|2024/02/01(木)~2024/02/12(月・祝)≪全14回≫
|会場|森ノ宮ピロティホール
▶公演詳細はこちら
|日時|2024/02/24(土)~2024/02/25(日)≪全3回≫
|会場|東京エレクトロンホール宮城
▶公演詳細はこちら