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ブロードウェイ・ミュージカル 『ロジャース/ハート』東京公演観劇レポート

2023/10/6

公演レポ

ブロードウェイ・ミュージカル 『ロジャース/ハート』

珠玉のナンバーで歌い踊り継ぐ
天才作詞家&作曲家コンビの軌跡

1920~40年代にかけて数々のスタンダードナンバーを世に送り出してきた作曲家リチャード・ロジャース&作詞家ロレンツ・ハートの半生を描いたミュージカル『ロジャース/ハート』が東京・有楽町のよみうりホールにて開幕。メディア向けにゲネプロが公開された。日本では2018年に初演を迎え、大好評を博した本作。初演からさらに数曲が追加され、40曲近いナンバーで天才たちの半生を鮮やかに描き出していく。

作詞家のハートを務めるのは、初演でロジャースを演じた林翔太。そしてロジャース役は、初演で歌手のエディーら4役を務めていた寺西拓人が務める。共演には、凰稀かなめ、壮一帆ら豪華キャストが集結。そして、上演台本、訳詞、演出、振付、出演を手掛ける玉野和紀が、歌、ダンス、タップと目くるめくゴージャスな空間を創りあげていく。

物語は、ロジャースとハートの出会いから描かれる。どこか掴みどころのないハートの振る舞いにロジャースは戸惑いつつも、ロジャースの弾いたピアノに即興で作詞をし、お互いの才能に惚れ込んでコンビを組むことになった2人。彼らの作り出す楽曲はたちまち人々を魅了し、ブロードウェイでの人気が高まっていく。彼らの足跡に合わせるように、華やかなダンスやタップ、そして何より軽快にスイングするナンバーで観客を魅了していく。

そして女優や歌手の仲間も増えていき、2人はブロードウェイでの確かな地位を固めていく。ロジャースとハートがパーソナリティを務めるラジオの場面では、エディー(中河内雅樹)やジョン(藤岡正明)、ベネットシスターズ(音波みのり、音くり寿、吉田莉々加)らが、圧巻の歌声を響かせる。また、さまざまなハプニングに四苦八苦する面々のコミカルなやりとりに、きっと誰しも笑みがこぼれてしまうはずだ。

ブロードウェイでの成功を手に、ハリウッドへの進出を決めた2人は、仲間たちとパーティを開く。そして、ロジャースはドロシー(壮一帆)に、ハートはペギー(凰稀かなめ)に想いを寄せ、それぞれの交錯する想いがメロウなナンバーに乗せて届けられ、美しいハーモニーが響き渡る。しかし、その心をブロードウェイに残したまま、彼らはハリウッドへと旅立つ。

ハリウッドでは目まぐるしく進んでいく映画撮影の模様が客席を巻き込んで展開。華やかな世界を夢見る若者たち、撮影を遅らせる大御所女優など、当時の勢いあるハリウッドの賑やかさがアップテンポなナンバーに合わせて描かれる。中でも、大女優ミッシェル(壮一帆)のコメディエンヌっぷりは見どころだ。

ハリウッドでの忙しすぎる日々の中で、彼らは自分たちにとって本当に大切なものに気付き始める。彼らの選んだ結末、そしてロジャースとドロシー、ハートとペギーの恋の行方は――。

劇中のセリフはごくわずかで、登場人物の想いや時代の様相などは、ほとんど多種多様なナンバーで歌い踊り継がれる。その楽曲数は実に39曲。ダイアナ・ロスやジュディ・ガーランドといったスターが歌っていた耳なじみのあるナンバーなど、さまざまな楽曲が次々と披露され、あっという間の2時間半だった。

ゲネプロ後に行われたキャスト取材会で、林は「いつか再演できたら、と思っていた。5年経ってようやくこの日を迎えられた。キャストも倍になりパワーアップしているので、お届けできることにワクワクしています」と、念願の再演と話し、「寺西とはたくさん一緒にやっているので、やり取りは問題ない。楽しんでいる僕らを感じてください(笑)。その他にもミュージカルモンスターが集まっています。その歌声を浴びに、ぜひ劇場へ来てください!」と、その仕上がりに自信をのぞかせた。

そして寺西は「曲が多い中でストーリーを展開していくのは作るのも大変だったと思うし、演じている側も難しさを感じています。ただバリエーションも豊富で素敵な楽曲ばかりなのが魅力なので、古き良き、おしゃれなナンバーを楽しんでください。玉野さんのスーパータップにも注目して!」と、楽曲のすばらしさをアピールした。

今回初参加となる凰稀と壮は、ともに宝塚歌劇の男役出身。凰稀は「退団して9年目ですが、ダンスも踊る機会があまりなかったので久しぶりに女子として必死に踊ってまいりました(笑)。生き生きと踊っているシーンばかりなので、ぜひ注目して。いろんな思いを込めて、楽しくパワフルに作りあげた作品なので、たくさんの方に見ていただきたいです」とコメント。壮も「退団からもうすぐ10年、デュエットからつまずいてしまい、リードされるというのはこういうことか、と…。ラッキーなことに宝塚OGの娘役だった方も出演しているので、学年を超えて毎日質問していろいろなことを教えてもらいました。個人的にはこの時代の服装、ビジュアルも好きなので、そのあたりも楽しんでいただきたいです」と、男役ならではの苦労がありつつも、楽しく作品に臨めたと明かした。

そして玉野は「初演は6人で32曲、今回は12人で39曲とパワーアップしていますが、ようやくここで作り手としての仕事が終わったので、今日からは出演者としてみんなを頼りながら頑張っていきます(笑)。本当にミュージカルのパイオニアだと思っている人々の物語なので、若い人たちにもこのスタンダードジャズを楽しんでほしいですね」と語った。

ブロードウェイミュージカル『ロジャース/ハート』は、10月18日(水)まで東京・有楽町よみうりホール、10月24日(火)・25日(水)に金沢・北國新聞 赤羽ホール、10月28日(土)に大阪・松下IMPホールにて上演される。

TEXT:宮崎新之
PHOTO:岡千里

 

ブロードウェイ・ミュージカル
『ロジャース/ハート』

■上演台本・訳詞・演出・振付
玉野和紀
■音楽監督
宮﨑誠

■出演
林翔太 寺西拓人
凰稀かなめ
藤岡正明 中河内雅貴
音波みのり 音くり寿 吉田莉々加
壮一帆
玉野和紀

鯨井未呼斗 MAOTO

ピアノ:宮崎誠
ドラムス&パーカッション:萓谷亮一

大阪公演

|日時|2023/10/28(土)≪全2回≫
|会場|松下IMPホール
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