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『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』開幕レポート

2023/5/12

公演レポ

ミュージカル『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』

〝明日海りお×戸田恵子〟が放つ想像以上の化学反応
華やかな美と人間ドラマにテンションが上がる!

 逞しくも美しく、シニカルでチャーミング。なんて魅力的な女性二人のバトルなのだろう! 20世紀前半、化粧品業界に革命を起こしたエリザベス・アーデンとヘレナ・ルビンスタイン。実際に強烈なライバル意識を持っていた二人の女性創業者を描く、ミュージカル『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』の日本初演が、5月7日、日生劇場で開幕。初日の前には通し舞台稽古がおこなわれた。

 2017年のトニー賞ではクリスティン・エバーソールとパティ・ルポーン、二人の大女優がそろってミュージカル主演女優賞にノミネート。この注目作を、『マイ・フェア・レディ』『SPY×FAMILY』などのミュージカルから、ストレートプレイ、歌舞伎まで手掛けるG2が翻訳・訳詞・演出。初共演の明日海りおと戸田恵子がダブル主演し、上原理生、吉野圭吾をはじめ、キャリア豊富な実力派が集結した。

 幕が開くと生演奏で奏でられるゴージャスな旋律の音楽に心躍り、サロンの赤い扉から飛び出してくるコケティッシュな〝アーデン・ガール〟たちに、1930年代ニューヨークの粋な輝きを感じる。そこへ鮮やかに登場するエリザベス・アーデン役の明日海りお。第一声から観る者を惹きつけるカリスマ性を放ち、歌声も伸びやか。やはり宝塚歌劇団花組トップスターとして圧倒的人気を誇った説得力ある〝華〟が、美容界の先駆者という役にピタリとはまる。

 エリザベスはカナダの貧しい家に生まれたがニューヨークに移り住み、化粧品ブランドを立ち上げる。ピンクがシンボルのパッケージで女性の心をつかみ、第一次世界大戦後の自由な美を謳歌する時代の流れにも乗り大成功。自信に満ち満ちたエリザベスだが、この街にカムバックを果たしたヘレナ・ルビンスタインについて、いらだちを隠さない。二人が終始、「あの女」「あいつ」など辛辣な言葉を放つのが、もはや痛快!

 そう、この作品は「倍返しだ!」の決め台詞があった某人気ドラマのような丁々発止のやり取りが、バラエティ豊かな楽曲とともに繰り広げられる、エンターテインメント性に満ちたミュージカル。そのスカッとした潔さを演技と歌で体現するもうひとりの主役、ヘレナ・ルビンスタインを演じるのが戸田恵子。力強い存在感とコメディセンスを放ち、貧しい境遇から自身のブランドを立ち上げ、科学的アプローチで美を追求し大富豪となったヘレナを演じ切る。明日海も戸田も、変拍子や和音が盛り込まれた難曲を歌いこなし、役の中にうごめく複雑な感情をあぶり出すのはさすがだ。

衣裳替えは何度ある!? ファッションショーのようにお洒落な舞台

 業界の裏話的なエピソードも飛び出し、トップランナー同士の攻防が繰り広げられるという点で、男性の観客も興味深いはず。なんとエリザベスの夫、トミー・ルイス(上原理生)は、仕事上の立場に不満を抱きヘレナの片腕に。ヘレナの優秀なビジネスパートナーであったハリー・フレミング(吉野圭吾)は、ヘレナに嫌気がさしてエリザベスへ寝返る。これも実話。そんなトミーとハリーが歌う「ふたりは恐竜」は、立場上の悲哀が垣間見え、上原と吉野の歌と芝居が絶妙で笑ってしまう。

 さらに女性の観客はファッショナブルな衣裳、豊かな時代性を感じる帽子やアクセサリーなどにも釘付けとなるはず。エリザベスはピンク、ヘレナはブルーなど、色のコントラストで二人の対比を見せ、高くそびえる化粧品の棚もカラフルにライティング。ときにミラーボールまで回り、華やかなダンスナンバーが繰り広げられ、これぞブロードウェイ・ミュージカルの贅沢さ!

 エリザベスとヘレナは、史実では顔を合わすことはなかったと言われている。ただライバルとして常に意識し、ともに女性創業者、そして移民としての社会の壁を感じていた二人。その想いが「男だったなら」「ふたりきりで」などのデュエットでドラマティックに交差する。シルクのように滑らかな明日海りおの心地よい歌声と、スパッと切れ味のある戸田恵子のパワフルな歌声がフィット。声質の違う二人の歌が重なることで、メロディーの深さと、どこかでお互いシンパシーを感じている心の内が浮かび上がる。これこそ想像を超えた化学反応! さらに終盤には、エリザベスに「ピンク」、ヘレナに「永遠に美しく」というビッグナンバーが。成功から歳を重ね、衰えを指摘され…。プライベートでは幸せとは言えなかった人生を、ウエットになり過ぎず絶妙なドライ加減で振り返る二人の格好良さに、ブラボー!の拍手を送った。

 男性優位の社会でもがきながら、揺るがない美意識を貫いたエリザベスとヘレナ。ラストの二人の掛け合いは、名場面と語り継がれそうな芝居の醍醐味が詰まっている。この場面ひとつとっても、大阪、名古屋、最終地の京都で、どこまで熟成するのだろう。楽しみでならない!

******

舞台稽古直前に明日海りおと戸田恵子の囲み取材が行われ、信頼し合う二人が率直な思いを語った。

明日海りおのコメント

「どの役の衣裳も豪華でお洒落で、華やかな装いが役を助けてくれている気がします。人生の酸いも甘いも…酸いの方が強めかな(笑)、いろんなものが詰まった素敵なミュージカルで、戸田さんのヘレナによって、そこがさらにぐぐっと深まっています。製作サイドと演者の愛が詰まった作品になっているので、ぜひ観に来ていただければ嬉しいです」

戸田恵子のコメント

「明日海さんは宝塚で何回もステージをこなされていたから本当にタフで、頼りにしています。ミュージカルってこんなに歌が多かった!?と思うぐらいの分量で難しいですが、初演をさせていただける喜びをかみしめています。絶頂期から二人が落ちていく、とても切ないけれど美しいミュージカルになっているので、楽しんでいただければと思います」

取材・文 小野寺亜紀

 

ミュージカル『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』

■出演
明日海りお 戸田恵子
上原理生 吉野圭吾
朝隈濯朗 後藤晋彦 俵和也 井上珠美 河合篤子 罍陽子 小林由佳 原広実 彩花まり 美麗 吉井乃歌

■脚本
ダグ・ライト
■音楽
スコット・フランケル
■歌詞
マイケル・コリー
■翻訳 / 訳詞 / 演出
G2

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大阪公演

|日時|2023/05/27(土)~2023/05/29(月)≪全4回≫
|会場|森ノ宮ピロティホール
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京都公演

|日時|2023/06/08(木)~2023/06/13(火)≪全7回≫
|会場|京都劇場
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