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【インタビュー】「六本木歌舞伎2022」市川海老蔵

2022/3/4

インタビュー

六本木歌舞伎2022 『青砥稿花紅彩画』より『ハナゾチル』

江戸の男たちの生き様は咲いては散っていく花のよう
市川海老蔵が語る「六本木歌舞伎2022」

市川海老蔵主演で歌舞伎を新たな視点から大スペクタクルで見せる舞台「六本木歌舞伎2022『ハナゾチル』(『青砥稿花紅彩画』より)」が上演される。このシリーズは2015年に始まり、第1弾には中村獅童、第2弾には寺島しのぶ、第3弾には三宅健が出演し話題を集めてきた。今回は、A.B.C-Z の戸塚祥太が市川海老蔵と初共演を果たす。また、これまで演出を手掛けてきた映画監督の三池崇史は監修として参加し、演出は藤間勘十郎が担当する。一体どんな舞台になるのか、海老蔵が取材で語ってくれた。

――今回、題材に選ばれたのは、河竹黙阿弥の名作『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなのにしきえ)です。

『青砥稿花紅彩画』は『白浪五人男』というゴレンジャーのはしりになったお芝居になります。それが物語の中心なのですが、戸塚さん演じる宗之助が、現代の強盗団の一員としてタイムリープして、その時代の人たちとコミュニケーションを取りながら話が進んでいく。今まで六本木歌舞伎は比較的、新しい試みをしてきたんですが、古典というものを新しい角度で見えるように、かつ古典を尊重した作品になります。そこを楽しんでいただきたい。
『ハナゾチル』という題名は、悪の華や、男たちの生きる姿を表しています。そもそも『白浪五人男』というタイトルの由来は、海の白波がサーッとはける、その潔さやはかなさを表現しているんです。「桜は散ることを知りながら咲くことを恐れない」という言葉があるように、白波と花が散っていく様は、当時の若者たちの粋というか、生き様に似ていると思うところもあり、そういう意味も踏まえて『ハナゾチル』という題名になりました。

――作品のどこに魅力を感じますか。

歌舞伎の部分が非常に分かりやすい。私が浜松屋の場で弁天小僧菊之助という役で女装をして、ゆすりたかりに行くんです。ばれるのに堂々と行く。普通はばれたら「すみません」とか「二度としません」と謝りますが、「えっ、君たち私のこと知らないの? 知らないんだったら教えてあげるよ」と、こちらが明らかに悪いのに言う。そして、説明して皆を唖然とさせて、堂々とその場から消えていく。そういうのは古典ならではの面白さです。初めてご覧になる方には「実は古典は面白いぞ」と思ってもらえるような作品なんです。

――六本木歌舞伎で演目を選ばれる時のコンセプトは?

時代の流れがあるんですよね。最初は、十八代目中村勘三郎さんが私に「地球を投げるくらいの荒事をしないと」とおっしゃったことがテーマとなって『地球投五郎宇宙荒事』が上演されました。その後には『座頭市』や『羅生門』など、新しいタッチの作品をしました。コロナ禍で、六本木歌舞伎とは別に、今年の1月も新作歌舞伎『プペル~天明の護美人間~』を上演したので十分に新しいことには挑戦しました。新しいことをするのはいいことだと思いますが、古典の演目も尊重しながら、多くの方に楽しんでいただくには『青砥稿花紅彩画』がいいという判断になりました。

――戸塚さんは歌舞伎に初挑戦です。海老蔵さんが期待されることは。
 
今後稽古をしながら戸塚さんと向き合っていく中で、どこか似ているところがあるんだろうなと思うので、そういう部分を発見できるのが楽しみです。演出で戸塚さんが得意とするアクロバティックでパルクールみたいな動きがあればいいなと期待しています。

――三池監督と海老蔵さんは何回もお仕事をされていますが、監督から刺激を受けたり学んだりしたことは?
 
監督は強面ですが(笑)、すごく優しいんですよ。何のために映画を作られているかといえば、もちろん、お客様のため、作品のため、ご自身のためと大前提があるんですが、撮影の後に、スタッフの方々がビールをプシュッと開けて「ああ、今日もいい仕事したな」と思えるようにするために気を遣う、繊細な方です。どちらかというと暴力的な作品が多いんですが、それとは全く逆に、監督の中に流れている優しさをいつも感じますね。演出されている時も対応が優しいです。三池監督はそういった魅力のある方なので、作品から痛みが伝わるんだと思います。今回の『白浪五人男』もいわば不良の話で、監督の作品には「クローズ ZERO」という映画もありますので、そのような点でもアドバイスをいただけるかと思っています。

――演出は藤間勘十郎さんです。

勘十郎さんとは、たくさん一緒にお仕事をしていまして10年以上のお付き合いですが、音楽的なセンスが素晴らしい方です。最近は歌舞伎以外にも宝塚歌劇団の作品なども演出されていて、勘十郎さんなりの世界観を持ち出してきてくれるはずです。普段は私は台本にも演出にも口を出すタイプなのですが、今回はお任せしようと思っています。

――海老蔵さんが観客に見てほしい、これはというシーンは?

『白浪五人男』の弁天小僧菊之助が女性(女装)から男性に変わる場面と、『どんたっぽ』という立廻りの音楽効果がある、最後のクライマックスとなる場面ですね。感染対策をしっかりした上で、花道も作りますので、臨場感あふれる舞台になると思います。

TEXT:米満ゆうこ

六本木歌舞伎2022
『青砥稿花紅彩画』より『ハナゾチル』

日時:2022/03/18(金)~2022/03/21(月・祝)≪全5回≫
会場:フェスティバルホール

■脚本
今井豊茂
■演出
藤間勘十郎
■監修
三池崇史

■出演
市川海老蔵
戸塚祥太( A.B.C-Z)
中村児太郎
市川右團次 ほか

公演詳細
https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/3876

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