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藤井フミヤ、約2年ぶりに開催中の十音楽団ツアーで描く人生劇場

2021/12/15

公演レポ

藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021~2022 十音楽団

藤井フミヤが12月11日、大阪・フェスティバルホールで『藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021~2022 十音楽団』大阪公演を開催した。

『十音楽団(とおんがくだん)』とは、ベース、ギター、キーボード、パーカッション、サックスに弦楽カルテットを加えた10人編成により、朗読劇のような演出と曲目で構成されるシアトリカルなツアーで、2019年以来2年ぶりの開催に。2日間にわたるフェスティバルホール公演の初日となったこの日は、藤井フミヤの意欲的な試みを見届けるべく最後部まで埋まった客席から、その期待値がひしひしと感じられる。

BGMにグレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」etcが流れる中、定刻を5分ほど過ぎた頃、舞台の中央でブルーのピンスポットを浴びたフミヤが、「ここに1枚の青いレコードがある……」と語り始める。そして、「一緒に聴いてみよう」と口火を切るや、彼を取り囲むように半円形に陣取った十音楽団により、今宵のプロローグとも言える楽曲が、麗しきストリングスサウンドで奏でられていく。ステージには「第一章 青い光の方へ」というタイトルが映し出され、その歌声はもちろんストーリーを告げる語り口も、ずっと耳を傾けていたくなる深みと心地良さだ。
「手のなるほうへ」を切々と歌い上げる頃には、光の当たり具合により街並みにもがれきにも姿を変えるような巨大なセットが、漆黒の闇からゆっくりと浮かび上がる。そんな冒頭からも今回のツアーが通常とは一線を画す内容なのは明白だが、ただの演劇でもコンサートでもないファンタジックな総合芸術に、あっという間に引き込まれていく。

「第2章 青いメロディー」でも、ウインドチャイムと鳥の鳴き声をバックに、時折ユーモアを交えながらフミヤがストーリーテラーとして先導。MCではなく物語で楽曲の世界観に巧みにいざない、「これは随分前にあの娘にプレゼントしたオルゴールだ」と述べるや、テーブルの上のそれから流れてきたのは、印象的なあのメロディー。アコースティックギターを手にフミヤが「TRUE LOVE」を弾き語り、そこに十音楽団の面々が静かに合流していくアレンジは鳥肌もので、時代を築いた代表曲を一夜のピークに終わらせることなく、あくまで『青いレーベル』というメインテーマを構築する一曲として機能させる、ぜいたくな演出だ。

「第3章 青い影の少年」では、マーチのようなビートと目いっぱい天に手を伸ばし歌う佇まいに高揚する「BOY’S HEART」や、「もう~いいかい?」と目を伏せ語り掛け始まった「平凡な雲」など、ひときわノスタルジーなムードを醸し出し、気付けばフミヤの頭上には大きな満月が。目で、耳で、そして響きを体で楽しむ。生のショーならではのかけがえのない体験に、改めてその尊さと愛しさをかみしめる。

「星に願いを」で幕を開けた「第4章 青い夜の約束」では、その題目をほうふつとさせるロマンチックなカバーでも聴かせ、熟成する豊潤な歌声で満場の観客を魅了するフミヤ。そして、はかないピアノとストリングス、一つ一つ重ねられていく言葉がその切なさを増幅させた名曲「Another Orion」では、胸を締め付ける感動がとめどなく押し寄せ、これには大きな拍手が巻き起こる。
ループするベースとフミヤのハーモニカの絡みに身も心も溶けてしまいそうな「Pink Champagne」を経由し、「第5章 青いワンピース」では「さぁ、踊ろう!」とチェッカーズ時代のヒット曲「涙のリクエスト」も披露。オーディエンスも総立ちでスウィングする絶景を生み出し、フェスティバルホールはさながらダンスホールに。華麗な身のこなしでステップするフミヤに導かれ、会場の熱量は高まるばかりだ。

いよいよコンサートも終盤の「最終章 青い木漏れ日」では、椅子に腰掛け、人生の晩年を連想させる一人芝居を展開。思えばコンサートを通してささやかな一生を描くかのようなセットリストで、藤井フミヤの生み出す音楽とともに歩んだ幸福な道のりを振り返ったオーディエンスも多かったことだろう。エンディングにふさわしい充実感に身を委ねながら、「これを人生の最期に言えたらいいな、「ありがとう」」とフミヤ。軽やかなピアノがエピローグのように本編を締めくくる。

アンコールでは、「十音楽団、いかがでしたでしょうか。アンコールは愛と平和をテーマにお送りしたいと思います。大きな心で受け取ってください」と、再び「I have a dream」などチェッカーズ時代のナンバーも聴かせ、「世の中は大変だけど、目の前にいる人にまず優しくしたり愛したりしましょう。それが広がっていけば、きっと愛に溢れる」とメッセージを届けるなど、最後の最後まで心揺さぶられるパフォーマンスとなった。

なお、25都市34公演に及ぶ『藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021~2022 十音楽団』は年明け以降も続き、2022年4月17日(日)福岡・福岡サンパレスでツアーファイナルを迎える。

取材・文:奥“ボウイ”昌史
撮影:三浦憲治

藤井フミヤ CONCERT TOUR 2021~2022 十音楽団

■十音楽団メンバー
藤井フミヤ(Vocal) 有賀啓雄(Bass) 田口慎二(Guitar) 岸田勇気(Piano) 藤井珠緒(Percussion) 吉田翔平(Violin) 藤家泉子(Violin) 清田桂子(Viola) 林田順平(Cello) かわ島崇文(Sax,flute)

【2022年 大阪公演】
日時:2022/02/05(土) 17:00(開場 16:00)・2022/02/06(日) 15:00(開場 14:00)
会場:オリックス劇場
公演詳細

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