2021/9/7
取材レポ
――まず、台本を読んだ印象をお聞かせください。
オファーをいただいて、原作と台本を読んだんですが、普段、主人公にならないような役柄にフォーカスした作品だなと。日常を生きていて、誰もがこんな感情あるな、ひりひりするなという感情の機微をしっかりとすくい取って、丁寧に描かれている作品だと思いました。ホリガイを演じるのは簡単ではないけど、ぜひ、挑戦してみたいと思いました。
――原作者の津村記久子さんの印象は?
ほんの短い間にご挨拶させていただいた程度なんですが、自分が書いた小説を「どうやって書いたか覚えてない」とおっしゃっていたのが印象的でした(笑)。物語について、色々と答え合わせみたいなことをお聞きしたかったんですが、緊張しちゃってできませんでした。いつかもっとお話しさせていただきたいです。
――どのように役柄を作り上げましたか。
吉野竜平監督と話し合い、ホリガイの履歴書を一緒に作っていったんです。
好きな愛読書、部屋がどれぐらい散らかっているか、かばんの中身など。監督が「水筒を持ってる子ってかわいいよね」と個人的な好みを言われるので(笑)、必ず紅茶を入れた水筒を持ち歩いている女の子にしました。いつも、自分一人で台本の余白に人物像を書く作業をしていたので、ここまで具体的に監督と作り上げたのは初めてでうれしかったです。履歴書を作った後は、現場で、その場の空気を感じてセリフを言うことを心がけていました。
――ホリガイは、どのような人だととらえていますか。つかみどころがないような人物に思えたのですが。
彼女はその場をできれば平和に過ごしたい。誰かが怒るぐらいだったら、自分がヘラヘラふるまうことで落ちつくことを選ぶ。でも、正義感があるから、そこが葛藤だったりもするんです。その場の空気を読みすぎて空回りしている感じを意識しようと心がけました。つかみどころがないと言われればそうなのかもしれません(笑)。
――共通点はありましたか。
物語の中でホリガイが他人に対して闘争心が持てなくなるきっかけになった事件があるんですが、私も似たようなことが過去にあって。今はそんなことないんですが、昔は誰かより勝ちたい、個性を持ちたいということがあまりなかったんですよね。そういう自分を思い出しました。
――奈緒さんが演じるイノギとホリガイとの関係はどう思いますか。
あの二人の関係性が大好きで、うらやましいと思います。色んなとらえ方があると思うんですが、友情や恋愛を超えた関係で、魂でつながっているソウルメイト。そこまでお互いのことを知っているわけではないのに、本音をポロリとこぼしてしまう。ベタベタする関係ではないけど、一緒にいて安心する、信頼関係があるんですよね。
――映画の中で「やりたい仕事と、(自分に)合っている仕事は違う」というセリフがありました。佐久間さんは、女優の仕事は好きですか。合っていると思いますか。
好きだからやらせていただいているんですが、向いてないなと思います(笑)。向いてないと自分で思う瞬間があったとしても、辞められないし、辞めたくない。そこは好きが勝るんです。悩んだ時に私の母に相談したことがあって、母から「向いてないと言って、仕事を辞める子、いっぱいいるんだよね。だから、そういうこと言うのやめたら」と活を入れられました(笑)。そこから、向いている、向いていないは置いといて、好きだからやらせてもらっているということを大切にしようと。落ち込むことは多いですが、活を入れられたことで逆に燃えました。
――今回の撮影中に、向いてないなと思ったことは?
えーーっ、なんですかね、あったかなぁ…。褒められると同じことができなくなるんです。致命的なんですけど(笑)。調子に乗っちゃうのもあるんですが、同じことをしようという欲が生まれて。純粋に受け止めてクールにできたらいいんですけど、褒められているのに落ち込むことはありますね(笑)。
――監督は作品に「ありのままでいいんだよ」みたいな無責任な言葉ではなく、自分なりのメッセージをホリガイの姿に託したそうですが、佐久間さんはいかがですか。
色んなとらえ方をしてもらえる映画だと思います。私自身もそうですが、自分にコンプレックスや劣等感があったり、人と比べてしまったりとか、誰もが色んな悩みを持っていると思います。そういう人でも誰かのヒーロー/ヒロインになれる、誰かと関わっているし、その中で無意識に支えたり、支え合っていたりする。ただただ寄り添うような優しい映画として届いたらと思います。若い世代や、こういう気持ちを懐かしく思う大人の世代まで幅広く見ていただきたいですね。
TEXT 米満ゆう子
映画『君は永遠にそいつらより若い』
出演:佐久間由衣 奈緒
小日向星一 笠松 将 葵 揚 森田 想ほか
監督・脚本:吉野竜平
原作:津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』(ちくま文庫)
(c)『君は永遠にそいつらより若い』製作委員会
>>2021年9月17日(金)テアトル梅田、京都シネマほか全国順次公開
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