2021/9/7
取材レポ
まずは中村勘九郎から今回上演される演目『浦島』を選んだ経緯についての説明がされた。「近年、いろんな役を経験したことで大きくなっていく鶴松に2019年の『三つ面子守』に続きまして今回も1本任せたいという思いがありました。本人からは『浦島』をやってみたいという希望があり、採用することにしました。浦島太郎の物語の後日談を踊りにしているので、初めて歌舞伎をご覧になるかたにもわかりやすいストーリーです。二枚扇というお扇子を2つ使ったテクニカルな踊りもあり、目にも楽しい作品ですね。これは私事ですが、巡業で私も何度も演じております演目で、父(一八世中村勘三郎)が私の『浦島』を気に入ってくれていたので、それをしっかり鶴松に継承してもらえるように、伝えられたらいいなと思います」
続いて中村七之助が『甦大宝春日龍神』の見どころとして「春日大社で兄と踊らせていただいたことがありますが、最初はお芝居仕立てで村の男女に姿を変えた龍神龍女が春日の四季折々の情景を踊ります。天竺に行こうとしていた明恵上人は龍神龍女が暴れると聞いて、天竺行きを断念します。その後、後シテとして龍神龍女の姿に替わり、迫力のある踊りなので、前半とは違った雰囲気の踊りが楽しめます」と語った。
人気のトークコーナーについては「今回は踊りをご覧いただいた後にトークを楽しんでいただく順番になっています。お客様に〝今日初めて歌舞伎をご覧になる方に手を挙げてください〟とお伺いした際に、今なお結構な数の方がいらっしゃるので、まだまだ普及されていないのだなと思います。だからこそこれからも続けていきたいですし、この巡業は中村屋にとっても大切な公演の一つとなっております」と勘九郎。
最後にお客さまへのメッセージとして「秋にはワクチンが供給されて感染も収まると思っていたのですが、いまだに拡大が続いているという中でお客様に安心安全でご覧いただくために感染対策にはスタッフも含めて厳しく徹底的に管理はします。こういう状況なので少しでも歌舞伎が心の栄養となって、現実を忘れて非現実の歌舞伎の世界に飛び込んでいただけたら嬉しいです」と勘九郎が述べ、七之助は「巡業で全国を回ることについては、賛否両論があるかもしれません。こういう状況下できてくださるお客様というのは、私たち役者にとりましては本当に〝ありがたい〟のひと言に尽きます。明日への希望に繋げていただければと幸いですし、私たちにも演る意味があるのかなと思います」と本公演に寄せる思いを語った。