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ONEOR8『ママごと』開幕! 笑いと涙であっという間の2時間

2026/1/30

公演レポ

ONEOR8公演「ママごと」

劇作家・演出家の田村孝裕率いる劇団ONEOR8『ママごと』が、1月21日、東京・紀伊國屋ホールで初日の幕を開けた。もともとは劇団テアトルエコーのために書き下ろされ、2022年に上演された際に高い評価を得た作品。今回はONEOR8の劇団公演として福田沙紀、須賀健太という若手実力派のほか、テアトルエコーから重田千穂子、そして重田と同期だった安達忍と岡のりこも出演。さらに佐藤B作(劇団東京ヴォードヴィルショー)も参加と、貴重な顔合わせが実現した。温かくてどこか笑える人間の機微が、演技巧者たちの絶妙なセリフの応酬によって生き生きと描かれる本作。公演は東京の後、松本、大阪、士別、湧別、深川、北広島、能登、倉敷、鹿児島公演と続くが、まさに世代を問わずに気軽に楽しめる舞台となっている。

物語の舞台は、とある高級料理店。結納の食事会を開くために訪れた拓実(須賀健太)と叔母の由紀子(重田千穂子)が部屋の眺望を確かめる中、婚約者のはな(福田沙紀)と、母で後妻の幸(岡のりこ)、父の嘉郎(佐藤B作)も到着する。拓実の母・美佐枝(冨田直美)も揃い、ようやく食事会をというところへ、はなの実母・あゆみ(安達忍)が突然現れる。シングルマザーの美佐枝と共に拓実を育てたと自負する独身の由紀子も含め“4人のママ”に囲まれて、拓実もはなも困惑。さらには浮気、不倫、略奪愛と不穏な背景が次々と浮かび上がり、最後にはなと拓実が取った行動は……。

育ててくれた継母の幸と、十数年ぶりに再会した実母のあゆみとの間で揺れるはな。最後までどうなるか分からない物語の行方を担うはな役・福田は、丁寧にその心情をたどることで観客を引き込んでゆく。拓実役の須賀も同様だ。物語の前半はどこにでもいる若者として由紀子ら“ママ”たちの言動に押されて右往左往。そこから終盤のある行動で拓実という青年をもう一段深く掘り下げられたのは、やはり須賀ならではだろう。
幕開きからベテラン俳優陣の丁々発止を楽しんでいると、後半から終盤ではいつのまにか若いふたりの姿がくっきりと立ち現れてくる。最後の最後まで飽きさせない構成で、2時間の上演時間があっという間に感じられた。

由紀子役の重田は登場シーンから佇まいひとつ、咳払いひとつで客席を沸かせる。だからこそ由紀子自身の“事情”がうかがえる場面では、その心情が胸に迫る。嘉郎役の佐藤も冒頭ではサングラス姿で“怪しい社長”感満載だが、妻の幸と前妻のあゆみとの間でアタフタする姿に人間くささがにじみ、思わす応援したくなるから不思議だ。
幸役・岡の上品だがどこか本心を隠している表情、あゆみ役・安達の、はすっぱさはあるがはなへの真心が伝わる姿など、それぞれの人物像も魅力的。気苦労の多そうな美佐枝役の冨田や、真面目だが空回りしがちな料理店の店長・平川役の山口も含めて、思わず「あるある」とうなずきたくなるような登場人物ばかり。いつのまにか一緒に笑ったり、少しホロリとしたりと、観客が肩の力を抜いて気持ちよく舞台に身を委ねられる一本になっている。

初日を前に行われたゲネプロでは、福田と須賀、山口、そして作・演出の田村が公演への意気込みを語った。
福田は「役づくりは大変だったのですが、稽古場で積み重ねてきたものを大切に、毎回新鮮な気持ちで本番にのぞみたいです」と真剣な表情。「実は役への思いが募って、田村さんにたくさん質問しているうちに涙が……」と続けると、須賀と山口が「僕たちは全員で『ここはそっとしておこう』と見ないふりをしつつ、実は見守っていました」と明かすなど、チームワークの良さを改めてうかがわせるひと幕も。
田村は「今回の座組みはもう、本当に演者の皆さんの(芝居の)“呼吸”で生まれているところがあるんです」と話す。「その一瞬一瞬の気持ちで進めてほしいというのは皆さんに伝えています。福田さんもどうそこに入っていくかというのを意識していたみたいなので、そこは相談しながら稽古を進めました」と振り返った。

一方の須賀は、「“泣かせるより笑わせるほうが難しい”とは本当で、やっぱり笑いどころのある作品は難しいなと感じています。この作品は笑いだけでなく、気持ち的にグッとくるところもたくさんあって、そこを外してしまうと成り立たない。そういう“おかしみ”みたいな部分を毎日ちゃんと新鮮にやるっていうこと、そして自分自身も物語にしっかり没入することを大切に、3月9日の(全国ツアーの鹿児島での)千秋楽まで務めていきたいです」と話した。
また、ONEOR8劇団員の山口は、「劇団公演ではいろんな役をやらせていただいているんですけど、今回は初めて田村さんに『つまらない男でいて』と言われて(笑)。今までずっと面白さを追求してきていたので、まだ戸惑いはありますが、せっかくなので“つまらなさ”を極めたいと思います」とアピール。演じる平川がただの「つまらない男」でないことはもちろんなので、その意味するところはぜひ劇場で確認を!

最後に、全国で楽しみにしているお客様にメッセージをお願いすると。
「この作品はお客様が入って、一緒に楽しんでくださることで初めて完成する舞台だと思うので、ぜひ劇場で楽しんでいってください!」(山口)、「家族の話ってすごく普遍的だと思うので、どの地でもどんな世代の方でも楽しんでいただけると思います。ぜひ劇場にいらしてください」(須賀)、「舞台って、お客様の反応によって少しずつ変わっていくものと思うんです。だからお客様も一緒にこの舞台を作り上げるような気持ちで(笑)、ご家族やお友だちと一緒に観に来てください」(福田)と、それぞれに本作への想いを込めた。

最後に田村が「老若男女どの方にも何かしらの感情移入ができる作品になっていると思うので、ご覧になった方がふと人生を振り返ったりするような、そんな作品になればいいなと思っています」というと、うなずく3人。
「コメディではないけれど、舞台を観て気づいたら一緒に笑っていたというのは“演劇体験”ならではの楽しさ。そんな時間をぜひ経験しに劇場にいらしてください」という田村の言葉が、本作の魅力を伝えているといえるだろう。

取材・文:藤野さくら
写真:塚田史香

 

ONEOR8公演「ママごと」

■作・演出
田村孝裕
■出演
福田沙紀、須賀健太
冨田直美、恩田隆一、山口森広
重田千穂子、安達忍、岡のりこ、関口アナン、小口ふみか
佐藤 B 作

▶▶オフィシャルサイト




大阪公演

|日時|2026/02/06(金)~2026/02/08(日)≪全4回≫
|会場|ABCホール
▶▶公演詳細

 

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