今年、ソロ活動25周年を迎えた津軽三味線奏者上妻宏光が、ニューアルバム『繋』をリリースし、全国ツアーを敢行。ツアー最終地が来年3月の東大阪市文化創造館というのだから、これは聴かない手はない。津軽三味線の知名度を上げたのが、盲目の奏者 髙橋竹山なら、それを身近な独奏楽器に発展させたのが上妻宏光といっても過言ではない。多忙を極める上妻宏光に、あんなコトやこんなコトを聞いてみた。

――ソロ活動25周年記念アルバム『繋‐TSUNAGU‐』が今月26日にリリースされました。

「これまでの活動を経て「伝統とは革新と共に繋ぎ続けること」だと確信しています。今回のアルバムは、“ジャンルや世代、国境を越えて繋ぐ” をテーマに共演者を人選し、作曲しました。チェロの宮田大さん、箏のＬＥＯさん、和太鼓の林英哲さん率いる「英哲風雲の会」のメンバー、そして津軽三味線の浅野祥さんといった、古典をしっかり勉強した下地があり、そこに留まらずジャンルレスに活動をされている若い方達です。従来の津軽三味線のイメージとはまた違った世界観が提示できたのではと自負しています。」

――韓国の作曲家で、アカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』や人気ドラマ『イカゲーム』などの音楽で知られるチョン・ジェイルによる書き下ろし曲「ＹＵＧＥＮ（ゆうげん）」も、このアルバムの売りのひとつとされています。

「「ＹＵＧＥＮ」は、日本的な旋律で違和感なくお聴きいただける曲ですが、メロディやハーモニーはチョンさんならではです。三味線のテクニックひけらかす訳ではなく、空間や間を大切にされているのは、金沢で日本文化の “侘び寂び” にインスパイアされて書かれたためだと思います。幻想的な雰囲気は、能楽の世界の “幽玄” を想起します。これまでの僕の作品には無い、新しい三味線の世界が生まれたと感じています。」

――新アルバム『繋』を携えての「生一丁！」Tour 2025-2026 は、既に今月15日のニューヨーク公演を初日に始まっています。ニューヨークでの様子は如何だったでしょうか。

「三味線のコンサートとは思えないほどの凄い盛り上がりで、拍手喝采をいただきました。映画「サウンド・オブ・ミュージック」から「My Favorite Things」を演奏したのですが、皆さん、口ずさんでノッてくれましたね。また、ニューアルバムからチェロの宮田大さんと共演した「NIKATA」を、ニューヨーク在住のチェリスト玉木光さんと一緒に演奏したのですが、クラシックの曲のように譜面に起こして演奏し、上手く行ったのが、密かに凄い自信になりました。津軽三味線は盲目の人の門付け芸が始まりで、譜面などなく口伝で広まった芸です。この芸術を後世に残すには、書き譜として残すことが大事だと思っています。クラシックの演奏家と共通の譜面で演奏出来ることは、世界中どこでも津軽三味線との共演が出来る訳で、これは津軽三味線にとって可能性を占う上で、大きな意味を持つことでした。」

――上妻さんのこれまで25年の活動期間は、常に古い風習のようなモノとの闘いの歴史だったのでしょうね。

「津軽三味線は津軽地方の出身者でないと演奏出来ないみたいな言われ方もそうですが、師匠方も時間の経過とともに意識も変わり、25年前と比べると隔世の感です。細棹三味線とのコラボや、歌舞伎本興行の歌舞伎十八番の舞台に津軽三味線が登場し、清元や竹本連中と一緒に演奏するなんて誰が想像したでしょうか。僕がやっていた和楽器によるロックバンド「六三四」が、現在人気の和楽器バンドに何らかの影響を与えたことは確かでしょうし、この25年は津軽三味線の発展にとって意味のある期間だったとは思います。」

――全国ツアー「生一丁！」Tour 2025-2026は、11月30日の宮城公演を皮切りに始まります。

「年内は12月20日の滋賀県びわ湖ホールで打ち止め。そして新年からは、ツアー最終地の東大阪市文化創造館まで全14公演を廻ります。3月28日の東大阪に伺う頃には、今の自分自身の気持ちから更に熟している事でしょう。“生音” にこだわった「生一丁！」のツアーでは、ニューアルバムの曲だけでなく、「津軽じょんから節」など津軽五大民謡もお聴きいただきます。どうぞ、生の津軽三味線の音を全身に浴びに、びわ湖ホールや、東大阪市文化創造館にお越しください。関西はとりわけノリが良いので大好きです。会場でお会いしましょう。」

滋賀公演

｜日時｜2025/12/20(土) 14:00
｜会場｜滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
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大阪公演

｜日時｜2026/03/28(土) 14:00
｜会場｜東大阪市文化創造館 ジャトーハーモニー小ホール
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