
            new          2025/11/4
取材レポ
身近な職場を舞台に、希望や不安が入り混じる毎日をユーモアたっぷりに描く“痛快お仕事コメディ”の第3弾『スイートホーム ビターホーム』。12月の開幕に先立って行われた取材会には、中山優馬、秋元才加、藤野涼子、井上拓哉、舞羽美海、瀬戸カトリーヌ、駿河太郎、佐藤アツヒロのキャスト陣と、作・演出の藤井清美が登壇。前日に初の読み合わせを終えたばかりとのことで、座組は一致団結に向けてあたたまり始めているようだ。

2019年『ブラックorホワイト? あなたの上司、訴えます!』、2022年『行先不明』に続く第3弾は、「家」と「信頼」がテーマ。今回のお仕事場はハウスメーカーで、社内の上下関係はもちろん、施工会社などの取引先、モデルハウスの内覧にやって来るお客様、はたまたプライベートな家族問題と、さまざまな人間模様が交錯。
中山は、「2つのことを同時にやるのが苦手とセリフにもあるんですが、そんな不器用ながらも、仕事や人生にプライドを持っているキャラクターです。僕自身も、仕事に対して信じているものやこうありたいと思う部分に共感があります」と、理想と現実に挟まれながらひたむきに生きる主人公・良介を、理解しながら演じることに意欲を見せた。

良介のかつての恋人で、起業し成功した社長・亜紀子役の秋元は、AKB48のキャプテン時代と今回の役を重ねる。「キャプテンという立場の責任に葛藤もしました。今回、成功した社長でありながら自分に自信が持てず、悩みながら仕事をしている役をいただいて共通点を感じ、真摯に向き合って演じたいです」と、すでに役に入り込んでいる一面を見せる。
作中のポジションとしては若手のエースだが、「先日の本読みで先輩方に圧倒されて、わたしも負けじとがんばらねば」と打ち明けるのは、良介の後輩・夏葉を演じる藤野。「思ったことを論理的にズバズバ言うところが普段のわたしと違うので、声のトーンをいつもより高くライトめにするとか工夫したい」と、役作りのイメージを語った。
良介の後輩・丸元を演じる井上は、「優柔不断なところが自分とそっくり(笑)。自分もまもなく30代に入り立ち位置がわからなくなってきて、責任を負わねばと思う一方で、逃げ出したいようなところもあって」と本音を吐露。「演じていく中で成長を感じていただければと」と意気込んだ上で、「作品では関係する方々との信頼関係を、そして稽古場では共演者や演出、スタッフのみなさまと信頼関係を築けたらと思います」と結んだ。
親から受け継いだ会社で、社員や職人を守るために奮闘する施工会社の社長・段田役、舞羽は、「いままでやったことのない役柄なので新鮮です。ちょっと藤井さんのエッセンスが入っているような気がするので、役作りにいただこうかなと思って」と、興味深い発見をした様子。「いい意味でお客様を裏切れるようにしたい」と挑戦を誓った。
「スイートホーム、ビターホーム、アットホームなメンバーでいきます!」と、ゴロよく元気よく言ったのは瀬戸。世代間ギャップでいうところの昭和世代とZ世代に挟まれる役どころ、良介の先輩・舞子役に、「責任感が強くて煙たがられる感じが自分と似ていて、最終的には責任を取りたくないタイプというのも似ているかも(笑)。いつまでも新人ぶりたいんですが、今回は柱の一本になるとここで宣言します!」と断言。
部長の権藤を演じる駿河も、「どの現場へ行ってもちょうど中間で、緩和剤みたいに居ることが多いですが、今回の役は部長でまさに中間管理職。普段に近い感じもあって、リアルにいけそうです」。駿河は取材会の冒頭でも、「駿河と瀬戸が中間管理職として座長(中山)を支えます!」と頼もしい発言で場を沸かせた。
お仕事コメディ第1弾、第2弾で主演を務めた佐藤は、「今回は不思議な役を演じる」という。「第3弾はハウスメーカーで、お家を建てるんですね。ドタバタコメディなのは同じでも、僕の役は不思議というか、謎というか、いまのところ山田という苗字しかないんですよね。最後にどうなっていくのかここでは言えませんが(笑)、いいスパイスを与えて印象が強く残るようにがんばりたいです」。

作・演出の藤井は、「全員でヨイショと支えていくぞ、という感じがとてもします」と、今回の座組に期待いっぱい。「お仕事コメディの登場人物たちは会社員やサラリーマンと、お客様のほうが近い存在だと思います。出演者の皆さんは特徴をとらえながら再現していかなければならず、難しさはあるんですが、そこを超えて、こうやって生きてきたんだなという人物たちの人生が端々から見えてくるような、そしてそれがお客様を魅了するような、そんな作品にしていただきたいと思っています。わたしも改めて責任を感じ、稽古に集中していきます」。
2026年に閉館が決まった松竹座について話題が移ると、次々と思い出が語られた。
「12、13歳のころから松竹座の舞台に立たせていただき、地下鉄で通っていたことを昨日のように思い出します。松竹座に育ててもらいました。本当にお世話になった劇場なので、感謝しながら今回も走りぬけたい」と中山。秋元は、松竹座で中山と共演したミュージカル『にんじん』(2017)を挙げ、「あのときは兄妹の役で、今回は元パートナー。こうしてまた松竹座でご一緒できることにご縁を感じています」と中山に視線を送る。そして、舞羽は、「松竹座では、『道頓堀パラダイス~夢の道頓堀レビュー誕生物語~』(2014)の主演を務めさせていただきましたが、あの場でやらせていただけることにすごく意義がありましたし、お客様もあたたかく、再び立てることがうれしくて」と目を輝かせた。

作品のテーマである“信頼”について質問が出ると、まっ先にマイクを取ったのは佐藤。「信頼、そうですね、諦めない、ということでしょうか。毎日仕事をしていると、自分もここまでかなと体力に限界を感じたりもしますが、だれか一人が元気でいてくれると、よし、自分ももうちょっとがんばろうと思える。一人一人が諦めない気持ちを持って、みんなで支え合っていこうという仲間が、信頼できますよね」。すると、すかさず、「僕は憧れた先輩(佐藤)の背中を無条件で信頼してますので、よろしくお願いします」と中山が呼応。「え、そこ?」と佐藤も苦笑で応え、ますます場が和んだ。13年ぶりとなる先輩・後輩の共演が楽しみだ。
最後に、中山は、「妥協せずに生きていくのは難しいけれど、だれしも一人では生きていけない、家族や仲間との支え合いがあってこそ。そんな物語に僕らチームで立ち向かっていきます。舞台づくりはチームプレイですが、それは、この世の中で生きていくのも一緒だと思うんです。作品としてはコメディだけど、ただ笑えるだけじゃなく、自分が置かれたいろんな立場を受け止めながら一生懸命に生きる人々の姿を見て、人間ってやっぱりおもしろいなと思っていただける作品にしたい。この空気感をぜひ一緒に楽しんでほしいです、劇場でお待ちしています」と語りかけた。
身近な人を連想させる登場人物がザクザクで、喜びや悩みにも共感が続出する“お仕事コメディ”は、「今年1年もがんばったぞ!」という締めくくりにぴったり。ぜひ劇場に足を運んで堪能してほしい。

文:丸古玲子

松竹創業130周年
『スイートホーム ビターホーム』
■作・演出
藤井清美
 
■出演
努力良介:中山優馬
佐久間亜紀子:秋元才加
弓川夏葉:藤野涼子
丸元翔太:井上拓哉
辰巳万理:小林美江
黒田勝:駒井健介
黒田光:勝賀瀬彩莉
河野梓:雪見みと
段田晴菜:舞羽美海
田辺舞子:瀬戸カトリーヌ
権藤正則:駿河太郎
山田:佐藤アツヒロ
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|日時|2025/12/26(金)~2025/12/29(月)≪全6回≫
|会場|シアターH(東京)
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