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石田亜佑美がタクフェスの名作に初参加。宅間孝行の“うーやん”、これで見納め!

2025/11/6

インタビュー

タクフェス第13弾『くちづけ』

宅間孝行が作・演出を手掛けるタクフェスの第13弾『くちづけ』が、全国6都市で上演。2010年に初演し、13年の映画化を経て、15年、20年に続き4回目の再演だ。物語の舞台は、知的障がい者たちのグループホーム“ひまわり荘”。漫画家・愛情いっぽん(金田明夫)と娘のマコ(石田亜佑美)が住み込みで働くことになり、マコは入居者の“うーやん”(宅間)と惹かれ合うが…。純粋な恋と親の深い愛が胸を打つ、優しく切ない物語。初演から続投の金田×宅間コンビは今回で最後となる。稽古前日、初参加の石田と宅間が来阪し思いを語った。

――泣いて笑って心が痛くなる、宅間ワールド全開の名作。まずは2010年の初演から4回目の再演『くちづけ』の誕生を教えてください。

宅間「当時、2010年までの間にずっと新作を作っていました。2007年に『あいあい傘』を作った時に行き切った感じがして。自分が一番琴線に触れるテーマはなんだろうと考え、思い出したのが10年ほど前に見かけた新聞記事だったんです。新聞の3面記事下にあった10数行の記事。その小さな記事にいたく心を打たれ、いつか映画とかにできたらいいなと、ぼんやり思っていたのを思い出して。当時は同年代のメンバ-でやっていましたが、56歳だった先輩の金田明夫さんに少し老けていただいて、出来上がりました。僕としてはひとつ大きく作風が変わった作品です」

――そこから5年に一度、上演を続けて来られたのは?

宅間「初演の時にどういう評価を受けるのか心配な部分もありました。フラットに、決して美しい面だけじゃないところも描いているので。でも、知的障がい者のお子さんを抱えた親御さんから、よくぞこの世界にスポットを当ててくれたという言葉をたくさんいただき、これは伝えるべきテーマなのかもしれない、定期的に世の中に発信していくべきものなんだろうという使命感のようなものを感じ、そこから5年に一度上演してきました」

――その金田×宅間コンビが、今回で最後だと?

宅間「明夫さんは71歳、私が今55歳になり、“うーやん”の設定が35歳なので、そろそろ限界がやってまいりまして。今回、明夫さんと共にいったん区切りをつけるべく、決定版を皆さんにご披露出来たらと思っております。実は5年前『私の“うーやん”は最後』と宣言したんですが、2020年はコロナ禍で多くの制限があり、実に忸怩(じくじ)たる思いを抱え最後を迎えた感もあって前言撤回。ご容赦いただきたいと思っています」

――石田さんはタクフェスをご存じでしたか?出演のお話をいただいた時のお気持は?

石田「舞台を拝見したことはなかったのですが、タクフェスの名前の強さは知っていましたので、出演のお話をいただいた時は考える間もなく『是非やらせてください』と意気込んだんです。その後、5年前の『くちづけ』の映像を拝見して、金田さんと宅間さんが初演からやられてきたものをついに最後にするということの重大さに気づき、すごい現場に入ることになるんだなと覚悟を決めました」

――役を演じるにあたっての思い、またご自身との共通点はありますか?

石田「阿波野マコちゃんは31歳ですが、心はすごく純粋で、少女のように真っすぐな心を持った女の子。金田明夫さん演じる漫画家の愛情いっぽん先生に愛情たっぷりに育ててもらって、ピンク色が似合うすごく可愛いらしい女の子です。私はモーニング娘。の時のメンバーカラーが青で、どちらかというと、ダンスでバキバキ、ラップで決める、かっこいい系だったので、マコちゃんの可愛い雰囲気とは真逆にいたかなと思います。でもマコちゃん、可愛いだけじゃなく、突然、口が悪くなったりするんですよ。「うるせえ」とか(笑)。そんな切れの良さが人間らしくて惹かれています。想像の世界の登場人物ではなく、この世界にしっかりといる人間らしさを出しながら演じたいと思います」
宅間「うーやんは知的障がい者で、グループホームの入居者です。大人になりきっていないハートで、ある意味自由奔放に生きている。今まで何度か上演してきて非常に愛着のある役ですし、うーやんのことを大好きな方たちがたくさんいるので、その方たちのために最後、演じられたらなと思っております。エモーショナルな感じで感動できる、主人公たちに寄り添える物語になっていると思います」

――タクフェスの舞台は、芝居のあとに毎回あるダンスタイムも見どころです。ダンスがお得意な石田さんのファンはうれしいでしょうね。

石田「公演の詳細が発表された時、ファンの方たちはダンスタイムとは?って反応をしていらっしゃいました(笑)。すごく素敵な作品だからこそ、自分がこの世界を知ってもらえるきっかけになれるのは本当に嬉しいです。もともとタクフェスが好きで、私のファンという方が『亜佑美ちゃんがマコちゃんやるの! マコちゃんを知っているからその発表だけで泣いちゃう』と反応してくださっていて、その期待にも応えたい。本編で涙していただいた後に、ダンスタイムを楽しんでいただければと思っています」
宅間「実はダンスタイムは、役で踊る時と役者自身が踊る時の2パターンがありまして。『くちづけ』はタイトルバック的な位置づけなので役で踊るんですよね。だから、石田さんはマコちゃんで踊る。マコちゃんのダンスがあんまりキレッキレだと、それはそれでおかしいな、みたいな(笑)。とも思いつつ、せっかくなので見せ場みたいなところを作ってあげられたらと思っています」

――またタクフェスにはプレイベントのような前説を、上演20分前から開始。そのため開場時間が60分前と早い。芝居の前後もサービス満点で大阪の観客はいつも大喜びです。

宅間「僕は毎日出ていますが、日替わりで何人か出て、グッズ買ってくれた人にサインするよとか、ツーショット撮るよとか、じゃんけん大会やったり、客席に降りて行ったり。いろいろ盛りだくさんでやっていたんですが、コロナ禍で全部リセットされて。今は新しい形で、お客さんとのキャッチボールが多くなっています。関西のお客さんはすごいですよ。空気の作り方をお客さんもわかっているから、いいところでちゃんとボケてくれたりするし。一緒に作り上げるのが楽しいです」

――大阪公演の楽しみと意気込みを。

宅間「お客さんの反応が大阪はダントツにいいじゃないですか。なので、こっちとしても非常に楽しませてもらえる。もう 20年近く来ていると、関西の方たちとたくさんの人間関係が出来上がっていて。僕の中ではホームっていう言い方もするんですけど、こっち帰ってきて皆さんの前でやると、テンションがガッと上がるし、ホッとしますね」
石田「大阪公演では、求められているものが多いから応えなくちゃいけないわけですよね。なるほど、と思って身構えています。確かにモーニング娘。の時も、大阪ではどういう話をしようって念入りに下準備していました。盛り上がりも熱いし、どんな話で笑わせてくれるんだっていう圧はいつも感じていました(笑)。あと、大阪に来た時の楽しみが大好きなスパイスカレーを食べること。今回もスパイスカレーの話をしていたら、宅間さんもカレー好きで、いつも大阪公演の時に食べているおすすめのカレーのお店を教えてもらったので、ぜひ行きたいです(笑)」

――カレーがお好きなんですね!

宅間「大好きなんですよ。大阪スパイスカレーは、他の都市にないカルチャーなんで。東京にもあるんですけど、やっぱり違う感じがする」
石田「やっぱり大阪です。大阪にはプライベートで何度もスパイスカレーを巡るために来たくらい好きです。ランチに2軒とか行きました。お腹いっぱいになりながら、せっかく来たら食べなきゃと思って(笑)」

――タクフェスのファンと石田さんのファン、皆さんへのメッセージをお願いします。

石田「グループを卒業して、朗読劇や舞台に出演させていただいてきましたが、各地を回る舞台に出演するのも大阪に来るのも初めてです。全国各地のファンの方に自分のお芝居を、この『くちづけ』を観ていただけるのがすごく楽しみ。ライブをやっていた時、各地のリアクションにその土地の色が出ていて楽しかったので、今回、大阪の皆さんのリアクションを楽しみにしています。観たらどうやっても考えさせられる作品なので、何も構えることなく劇場に足を運んでいただければ、この世界に引き込みます。そういう期待を込めて、観に来ていただきたいなと思っています」
宅間「金田明夫さんと一緒にやることになった15年前、先輩で男の俳優さんとやるのは初めてだったので、明夫さんのために作った戯曲でもあります。今回、その明夫さんが一区切りを付ける最後の愛情いっぽんということで、その明夫さんの雄姿を、そして私もリベンジという形でやりますので、ぜひ生の我々の芝居を目に焼きつけに、劇場に来ていただけたら嬉しいです」

 
取材・文/高橋晴代

 

タクフェス第13弾『くちづけ』

■作・演出
宅間孝行

■出演
金田明夫 石田亜佑美/
松本幸大 上田堪大 加藤里保菜/浜谷健司/
町田萌香 下川恭平 宮城弥生 神月柚莉愛
ヨスケ。(Wキャスト) 河内宏大(Wキャスト)/
鈴木紗理奈/小川菜摘/宅間孝行

■映像出演
宮根誠司

▶▶オフィシャルサイト




大阪公演

|日時|2025/12/18(木)~2025/12/21(日)≪全5回≫
|会場|シアター・ドラマシティ
▶▶公演詳細

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