2025/9/12
インタビュー
――オファーを受けたときのご感想は?
「最初に「小川絵梨子さんとの作品はどうですか?」とお話をいただき、「ぜひ!」とお答えしました。その後、小川さんが『ヴォイツェック』を選ばれたと伺い、僕の好みの作品だったので嬉しかったです。」
――ドイツの劇作家ゲオルク・ビューヒナーが遺した未完の作品を、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で知られるジャック・ソーンが現代的に脚色した戯曲です。
「純粋な愛が大きな軸となっているところがいいな、と思ったのがひとつ。さらに主人公ヴォイツェックの置かれている状況が、過去も現在も過酷ながら、自分の信じた道を進み、希望をつかもうとしている姿がすごく魅力的だなと思いました。大変な物語ですけど、舞台で表現するとどうなるのだろう、とワクワクしました。」
――森田さん演じるヴォイツェックはイギリス人兵士で、幼少期のトラウマとPTSD、貧困の記憶に苛まれ、薬物による幻覚やフラッシュバックがおきているという状況です。
「ギリギリのなかでも、自分が信じたひとつのものをつかもうとするヴォイツェックの姿は、きっと多くの人に共感していただけるのでは。1981年のベルリンが舞台ですが、今の世の中にも通じる部分があるなと感じます。皆さんも日々生活するなかで、自分自身と闘っていると思うんですね。重く暗い物語ではありますが、ひと筋の光を感じるというか、やっぱり〝愛〟は大きくて揺るぎないものだと思います。」
――小川絵梨子さんの演出はいかがですか?
「すごく面白いです。「どう見えるか」ということより、まず人物の内面の動きを大切にし、その気持ちが相手とどうつながっているか、ということを重視されていて、とても丁寧です。日々の稽古で発見があり、共演者の皆さんとも話をする時間があって勉強になります。」
――ヒロインのマリーを演じる伊原六花さんとは、昨年『台風23号』でも共演されましたね。
「今回の本読みで、伊原さんの最初の声を聞いたとき、すごく引っ張られる感じがして。僕とは年齢が離れていて、世代的にもまったく感覚が違う。だからこそ一緒にやっていて面白いし、むしろ引っ張ってもらっている感覚があります。」
――ほかの共演者の方はいかがですか?
「芝居のうまい人たちの集まりなので、すごいですね。たくさん影響を受けています。ヴォイツェックの子ども時代を演じる子役の男の子もふたりいるのですが、昨日チョコレートと飴をくれて、優しいな~と思って(笑)。ゲームの話をしたり、少しずつ距離が縮まっている感じです。」
――政治的緊張や心理的葛藤などが描かれている作品ですが、どのような舞台を届けたいですか?
「こういう作品って、「難しそうだな」「分かんなかったなー」で終わったら、もったいないですよね。僕自身、こういう作品がとても好きで、もっと増えてほしいと思っています。観客には「なんか、すげぇものを観たな」というのを届けたい。これから自分に落とし込んでいく過程になりますが、今その場で起きていることという〝鮮度〟をいかに伝えられるか、探っていきたいですね。」
――作品に集中する日々のなか、リフレッシュのためにしていることはありますか?
「植物が好きなので、稽古帰りに植物のお店へ寄ったり、家にたくさんある植物の世話をしています。そういうときは何も考えないでいられるので。稽古期間は1カ月しかなくて、毎日あっという間に過ぎるので、稽古場では集中してやりたいです。兵庫公演を楽しみにされている方にも、〝すごいもの〟を渡せると思うので、ぜひ観に来てください。」
構成・文:小野寺亜紀
撮影:山川晴治 →クレジット確認中
パルコ・プロデュース 2025
『ヴォイツェック』
■原作
ゲオルク・ビューヒナー
■翻案
ジャック・ソーン
■翻訳
髙田曜子
■上演台本・演出
小川絵梨子
■出演
森田剛 伊原六花 伊勢佳世 浜田信也/
中上サツキ 須藤瑞己 石井舜 片岡蒼哉/
冨家ノリマサ 栗原英雄
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2025/10/03(金)~2025/10/05(日)≪全4回≫
|会場|岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
▶▶公演詳細
|日時|2025/10/23(木)~2025/10/26(日)≪全5回≫
|会場|兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
▶▶公演詳細