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鈴鹿央士が初舞台で初シェイクスピア。
現代に寄せた初心者でも楽しめる作品。

2025/9/6

インタビュー

Bunkamura Production 2025/DISCOVER WORLD THEATRE vol.15 『リア王』 NINAGAWA MEMORIAL

MEN’S NON-NOの専属モデルで、俳優としても映画やドラマで活躍する鈴鹿央士が、11月8日(土)~16日(日)SkyシアターMBSで、大竹しのぶがタイトルロールを演じるシェイクスピアの「リア王」で初舞台に挑む。同作は、日本でも舞台を手掛けてきた、気鋭のイギリス人演出家フィリップ・ブリ一ンが戯曲を一新。男性のリア王に扮する大竹をはじめ、宮沢りえ、成田凌、生田絵梨花ら豪華キャストが集まる。シェイクスピアも舞台も初体験だという鈴鹿が胸中を語ってくれた。

――オファーを受けていかがでしたか。

「舞台はいつかできたらいいなと思っていたのですが、それがいよいよきたかと。でもまさか、一番最初にシェイクスピアをやるとは思っていなかったので、大丈夫かなと不安でした。でも大竹しのぶさんや宮沢りえさん、成田凌さんらの共演者の名前を見て、ぜひ、やらせてくださいと。」

――戯曲を読んだ感想を聞かせてください。

「今のところ、フィリップさんが書かれて、それを日本語に訳したものを読んでいます。シェイクスピアの原作を読もうかすごく迷ったのですが、ロンドンでフィリップさんにお会いした時に「新しいリア王を作りたい」と言われたんです。原作を読まずにフラットな状態でフィリップさんの台本を入れるのがいいかなという自分の考えです。」

――原作とどう違うのか期待している人は多いと思います。

「どう違うのか分からないのですが、フィリップさんに会う前に、イギリスの本屋さんで英語版の「リア王」を買って、読んでみようとページを開いたら、知らない単語ばかりですぐに諦めました(笑)。」

――特にシェイクスピアの英語はすごく難しいですよね。でも、いつかまた読む日もくるかもしれませんね。

「そう、もしかしたら舞台本番中に読もうと思うかもしれないです。」

――今回、演出も手掛けるフィリップさんの台本はいかがでしたか。

「たぶん、時代はそのままで表現方法を現代に寄せている。シェイクスピア初心者の僕でも「どういう意味?」というのはないし、現代の人が見て分かりやすい「リア王」になっていると思います。」

――古くささは感じない。

「言い回しが叙情的というのはありますが、感じないですね。」

――ブリテンの老王リア(大竹)が退位にあたり、国を娘に分割して与えることにしますが、長女ゴネリル(宮沢)と次女リーガン(安藤玉恵)は本心とは裏腹に、言葉巧みな甘言でリア王を喜ばせます。三女のコーディリア(生田)は率直な物言いで父を怒らせ、勘当されてしまう物語です。

「えぐい話だなと思いましたが(笑)、人が権力を持った時に、傲慢さが出るのは仕方ないのかなと。今の時代も権力を持っている人はしっかりしていないと王国が崩れてしまう。これは王族の話ですが、今だと会社とかで権力を奪おうとする人も陰にはいたりして、人間って昔から変わっていないんだなと思います。ゴネリルとリーガンは救いようがないといったら、言いすぎかもしれませんが(笑)。」

――いえ、その通りです(笑)。コーディリアだけがいい子ですね。

「ほんと、言葉には気を付けないと、もてあそばれちゃう。いいことを言われたらうれしくて、疑うのではなく信じたいけど、信じすぎもダメかなぁと考えるきっかけをもらうのが「リア王」ですね。これから台本を読み込んで、稽古に入ったら、もっと色々なことを深く知っていけると思います。」

――鈴鹿さんは、リア王の重臣グロスター伯爵の息子エドガー役です。

「この悲劇の中で前を向いている人物。一人この世界を背負って前に進もうとするのがエドガーなので、今の時代に生きている人たちに何か届けられるものがある役だと思います。とても大事な役なのですが、今はプレッシャーしかないですね(笑)。」

――シェイクスピアは素晴らしいセリフの宝庫ですが、好きなセリフはありますか。

「まだ身体に入っていないので、うろ覚えなのですが、「私はエドガー、何者でもない」みたいなことを言う、彼の決意と自分の誇りを捨てはしないというシーンと、最後のほうのセリフはかっこいいな、めっちゃいいじゃん!と思います。好きになるようなセリフがいっぱいあります。」

――フィリップさんから何か参考になるようことは言われましたか。

「月に一個、詩を覚えてくださいと。谷川俊太郎さんの詩を覚えたのですが、忘れてしまって(笑)。覚えることはできてはいないけど、谷川さんの詩をずっと読んでいます。「故郷」という、「タマシヒのこの世での故郷は音楽」という詩がすごく好きです。」

――今回、蜷川幸雄生誕90年記念の”NINAGAWA MEMORIAL”として上演されますが、蜷川さんは「歌うようにセリフを言う」と言われていました。そこは感じますか。

「ああ、感じましたね。台本を読んでいて、文字の字体が違う箇所があって、どういうことなんだろうと。歌っているのか、話しているのか分からなかったのですが、たぶん歌なのかなと。テンポ感がよく、色んなリズム感があるのですが、このシーンは、声に出すと心地いいんだろうなと思いながら読んでいます。」

――蜷川さんは俳優もされていた経験があるのですが、役が回ってこなくて、「シェイクスピアの素晴らしいセリフを言える役者になれるのは、本当に一握りしかいない」と。

「蜷川さんの舞台を拝見する機会はなかったのですが、噛みしめます。僕がセリフを言わなかったら、終わらないシーンもあるので(笑)。」

――大竹さんとは初共演です。

「前にお仕事した監督に会いに行った時、大竹さんがスタジオでたまたま撮影されていて、監督が大竹さんのお芝居を見て行きなさいと。その瞬発力や爆発力に、ほえーっ!と圧倒されて。この方と一緒にお芝居できるのか、すごい経験だなと思いました。」

――大竹さんが何か芝居するだけで空気が一変しますよね。

「変わりますね。皆、言いますよね、すごいって。宮沢さんもすごい、生田さんもすごい。成田さんも…、皆すごいと。そりゃ、そうです(笑)!」

――宮沢さんや生田さんとの共演も楽しみですね。

「同じ舞台にいるだけで幸せなことなのですが、あまり同じシーンはないんです。稽古で日々、芝居を見られると思うと、幸せだなと思います。」

――共演者から何か盗みたいことはありますか。

「普通にただ座っているだけで刺激になるでしょうね。でも僕も初めてとはいえ、エドガーという大切な役を演じ遂げなければいけない。勉強しようと思うと、そこに行ける気がしない。「リア王」という作品の列に立てない気がするんです。勉強することだらけですが、自分もこの作品の一員としてそのラインにいたいです。稽古場も今まで見たことがない世界だと思うので、色々なところにセンサーが働くように準備はしておかないと。すべてを見逃したくないです。」

――大竹さんは毎回違って、同じことはされないと思うから刺激になるでしょうね。

「どうしましょうね…(笑)。」

――鈴鹿さんは2019年に俳優デビューですが、お芝居は今、楽しいですか。

「楽しいですが、分かったふりをしたら置いていかれてしまうので、分かったふりはしたくなくて。自分から寄っていかないと。それでも離れていってしまうと思うほど、正解がないです。舞台は、稽古したとはいえ、本番となっても、これが正解ではなく、まだまだブラッシュアップしていけるよという方々がお芝居されていると思うのですが、正解がないし、演じる役や作風で、通用することとしないことがあったりするから本当に無限だなと思います。若いからこそ失敗できるというか、お芝居の中で色々なことにチャレンジして、まだまだこれから先長くお芝居するために、今、自分で自分に頑張れと思っています(笑)。」

――(笑)。稽古場は失敗するためにあるという演出家もいます。

「そうか、誰かにミスと思われなくても、自分の中ではミスと思うところを毎日、トライできるんだったら幸せですよね。映像では編集に入ってしまうので。そう考えると、一個のシーンについて深く掘るのが楽しみです。」

――声が小さいから、大きい声を出すためにボイストレーニングされているそうですが、歌も歌うのですか。

「たまにです。僕、ボイトレの先生に言われたのですが、僕の喉は歌うことを知らない喉だと(笑)。」

――そんな喉があるのですね。

「あるんですよ。自分が聞こえた音と、出している音が認識とずれている喉だから、まず、声を出すことを知りましょうというところから始まって。そこから、シャワーしながら歌うようになって。ビートルズの「アビイ・ロード」の楽曲を歌っています(笑)。」

――ロンドンに行ったから(笑)。

「その時、一人で旅をしていたのですが、アビーロードで横断歩道を渡って、「あ、今渡ったぜ」と思ったら、後ろから「すみません、鈴鹿さんですよね、写真撮ってもらえますか」と日本語で話しかけられて。日本人の親子だったのですが、ついでにアビーロードを渡る僕の写真も撮ってもらいました(笑)。
話を戻しますと、ボイトレは大きい声を出すことに慣れていくという積み重ねです。トレーナーさんが、舞台をやったら喉は潰れるけど、潰れても皆、出しているから、頑張りましょうと。」

――歌はお上手なのでしょうか。

「母親からNGが出ています(笑)。」

――ボイトレでものすごく歌がうまくなる俳優さんもいますからね。

「歌う自信がつけばいいのですが、そんな自信はもとからないです(笑)。」

――最後に、鈴鹿さんのようにシェイクスピアが初めてという人も多いかと思いますので、メッセージをお願いします。

「固いのかな難しいかなというイメージがあるかもしれないですが、詩みたいな表現の余白の中に自分の考えや経験が混じり、より物語に入り込んでいけます。古い言葉でなく、話し言葉で聴けるので、色々なものを受け取れる。受け取り方の自由度や、どこが刺さるかもその人次第なので、逆に自由に見られる舞台なのかなと思います。簡単ですとは言わないですが、誰が見ても楽しめる舞台になっていますので、ぜひ、ぜひ、気軽に来ていただけたらうれしいです!」

取材・文 米満ゆう子

 

Bunkamura Production 2025
DISCOVER WORLD THEATRE vol.15
『リア王』
NINAGAWA MEMORIAL


■作
ウィリアム・シェイクスピア
■上演台本・演出
フィリップ・ブリーン

■出演
大竹しのぶ、宮沢りえ、成田 凌、生田絵梨花、鈴鹿央士、
西尾まり、大場泰正、松田慎也、和田琢磨、
井上 尚、吉田久美、比嘉崇貴、青山達三、
横田栄司、安藤玉恵、勝村政信、山崎 一
<ミュージシャン>
会田桃子(Vn.)、熊谷太輔(Perc.)、平井麻奈美(Vc.)

▶▶オフィシャルサイト




大阪公演

|日時|2025/11/08(土)~2025/11/16(日)≪全9回≫
|会場|SkyシアターMBS
▶▶公演詳細

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