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同志でありライバルでもある同期の桂春蝶と桂吉弥。それぞれの落語哲学を語り合う

2025/9/1

インタビュー

春蝶・吉弥と一之輔 三人噺2025

「華の平成6年組」と呼ばれた同期の桂春蝶、桂吉弥。入門から切磋琢磨し、腕を磨いてきた二人の関係は、かれこれ31年に及ぶ。互いに弟子を取り、「師匠」と呼ばれるキャリアも築いたが、まだその呼び方には慣れないとも。そんななか、全国的な人気を誇る春風亭一之輔とともにトリネタを披露する『春蝶・吉弥と一之輔 三人噺2025』では、最前線からそれぞれの視点で落語の未来を照射する。

――お二人には、今の上方落語界、もしくは落語界全体はどう見えていますか?

吉弥「『三人噺』のように放送局がバックアップしてくれる落語会がもっとあってもいいなと思うんですよね。そのためには僕らはもっと頑張らなあかんなと思ってます。あと、大阪の人は『お笑い見に行こか』『NGK(なんばグランド花月)に行こか』と会話していると思うのですが、そこに『落語見に行こか』がもっとあってもいいのになと思いますね」
春蝶「一人一人が一生懸命やるしかないような気がします。今、取り組んでいる新作が、解説50分、休憩15分、本編1時間45分なんです。お客さんは1本の落語を3時間見るわけです。これはたまったもんじゃないのかなと思ったのですが、ほとんどのお客さんがアンケートに『あっという間だった』『落語の概念が変わった』と書いてくれていて。おそらく、三遊亭圓朝師匠や桂米朝師匠も、落語の何らかの概念を変えたと思うんです。だから、一人一人がいかに、今の世の中の人に『こんな芸があるの?』と思わせるか。ただ単に壊す行為はよくないけど、いい感じに『変わったね』と思われるものを見せる。そのためには、自分がやりたいことにどんどん挑戦していったらいいんじゃないかなと思います」
吉弥「春蝶君はやっぱりすごい。戦っているというか、(落語を)変えているというか」

――吉弥さんは、どのように落語に取り組んでこられましたか?

吉弥「(長考して)師匠(桂吉朝)や米朝師匠がやっていた通りにやるのが俺の目標やったし、俺が舞台袖で師匠たちの落語を聞いて感じた気持ちよさを再現したいと思ってきて」

——その中で「自分の落語」を伝えたいという気持ちは、どのぐらいあるんですか?

吉弥「究極、それはないかもわからないですね。俺が思っていることや、考えていることを伝えたいというよりは、俺が見たり感じたりしたものをお客さんと共有したいという気持ちが強いです」
春蝶「俺からすればそれが羨ましくて。今の時代にものすごくいいのよね、彼のやっていることは。優しさが求められている時代やから。彼の芸は100%優しさ。しかも、縁側で語り合った家族の時間とか、風鈴の音で涼をとる感性とか、郷愁を感じる芸なんですよ。自分にないものを全部持っているな、この人はって思います」
吉弥「そうかな⁉(笑)」
春蝶「米朝師匠や吉朝師匠に対する憧憬の念が、この人の芸を作っている。その血を俺に輸血してくれ! って思う。…吉弥の血が欲しい!(笑)」
吉弥「俺は春蝶君のやっていることがすごく羨ましい…」
春蝶「それ、優しさで言ってない?」
吉弥「言ってない、言ってない(笑)。ほんまに。悲しいことは悲しい、つらいことはつらい、あかんことはあかんと落語の中で言えるのはすごく羨ましいですよね」
春蝶「確かに、落語はそれを隠すところがあるからね。ただ、作詞家の阿久悠さんが『作詞は時代を反映する』と言っていたのですが、落語もその時代をどう反映させるのか。今の人たちに必要な落語を――それは古典であり、新作であり、どう届けるのかということだと思います。今の人が何を欲しがっているのか、ということです」
吉弥「そうですね。この『三人噺』の顔ぶれは、そのためにいろんなことを考えている3人だと思います」

TEXT:岩本和子

 

春蝶・吉弥と一之輔 三人噺2025

■出演
桂春蝶/桂吉弥/春風亭一之輔

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大阪公演

|日時|2025/11/26(水) 17:00
|会場|SkyシアターMBS
▶▶公演詳細

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