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マイクなしの歌声と充実のトーク。
「自分の人生、挑戦し続けたい」

2025/7/29

公演レポ

秋川雅史コンサート 大阪2025

「57歳ですが体力が衰えている気はしない」と言い切り、日々歌の向上を目指すテノール歌手・秋川雅史。130万枚以上を売り上げた曲『千の風になって』をはじめ、クラシック、歌謡曲、ポップスなど幅広い歌を豊かな声量で歌い上げる。また趣味の域を超えている木彫は4年連続の二科展入選。初の著書「子育てこそ最高の生きがい 私の考える教育」(中村堂)も出版した。充実した人生経験と知識を反映したトークも大好評の「秋川雅史コンサート」が、今年は9/20に住友生命いずみホールで開催される。親としての思い、歌への情熱など様々な話を聞いた。

――今年はどのようなコンサートをお考えですか?

「選曲に関しては、日々自分の感性が変化しているので、できるだけ本番間際に決めたいと思っていて、今、煮詰めている状況です。やはり『千の風になって』は必ず歌い、コンサートを締めくくる歌として、いつもプログラムの最後にもってきます。私はマイクなしで全身を使って歌うので、遠い山に向かって「ヤッホー!」と叫ぶのを2時間半やり続けるぐらい体力はとても消耗するのですが、それがピークに達するときに毎回、これ以上ないマックスの声を出して歌う曲が『翼をください』です」

――この2曲は特に会場が大きな感動に包まれますね。『千の風になって』は、亡くなった方からのメッセージという独特の歌詞でもあります。

「涙を流して聴いてくださる方がたくさんいますが、その涙を自分がもらわないようにするのに精一杯。私が涙を流したら、自分の歌になってしまうのでね。やはり聴く人の立場で受け取れる歌にしてあげたいと思っています。『千の風になって』は、レコーディングをしてからちょうど20年になるんですよ」

――今になって感じられるこの曲の凄さなどはありますか?

「誰でも歌えるメロディーで、すぐに覚えられる曲ですが、いまだに上手く歌えないと感じるほどこの歌は難しい。20年前と今とを聴き比べると、歌い方も表現も全然違うけれど、この20年間「ここは歌い方を変えてみよう」と思ったところは一カ所もありません。自分自身、変えているつもりはないけれど、変わっているんです。歌い方が優しくなったのかな。この歌を通して、自分が成長しているのだろうと思います」

――秋川さんは今年5月に初の書き下ろし作品「子育てこそ最高の生きがい 私の考える教育」を出版されましたが、ちょうどお子様が誕生されたころに、この曲が大ヒットしたのですね。

「重なっていたので大変でした! 長男が生まれたのが2004年で、長女が誕生した2006年に、『千の風になって』でNHK紅白歌合戦に初出場。その後、ものすごく忙しくなり、早朝から深夜まで毎日仕事が続くような日々でした。息子は生後7ヵ月からベビースイミングに通っていたのですが、忙しいのを理由にプールへ連れて行けないのは自分で許せなかったので、週に1日だけ「午前中は仕事を入れないで」とお願いし、ベビーカーを押しながらJR山手線に30分ほど乗って、プールへ連れて行っていました。それからも子どもの成長を見逃したくなくて、少しでも早くと家に帰っていました。20歳の息子とは大学での出来事などの話を聞きますし、19歳の娘とは二人でご飯を食べに行ったりします。いい親子関係を築けたのが、私にとっての財産です」

――この本を出版しようと思われたのはなぜですか?

「子どもが生まれる前から、いつか教育の本を書きたいと思っていました。自分の人生の中で一番興味があるのが子どもの成長なんです。子どもの能力をどうやって伸ばすか、どうやったら幸せな大人になれるのかなど分析し、考えるのが好きで、私自身が実践したことで理想だなと思うことを一冊にまとめました」

――ご子息の秋川風雅さんはピアニストとしてCDデビューをされ、歌も歌い、指揮もされます。お父様で声楽家の秋川暢宏さんと3世代で歌われた『千の風になって』は、秋川雅史さんの公式YouTubeチャンネルで、再生回数200万回(7/28現在)を超えていますね。

「あれは父の夢だったんです。息子が20歳になりちょうどいいころかなと思い、昨年、父と3人でのコンサートを企画しました。父は86歳にして現役で歌を歌ったわけです。これで私は85歳までに引退するわけにいかなくなった(笑)。父が背中で「一生自分の歌を磨き続けろ」と言っているのを感じました」

――秋川さんがテノール歌手として大切にされていることをぜひ教えてください。

「とにかく歌が上手くなりたいです。毎日練習しているなかでは気付けなくても、「1年後にこの曲のココが出るようになった」とか、成長は必ずあるんです。ずっと目標にしているのは、ヴェルディのオペラ『オテロ』を歌い切ること。この作品は、ミュージカルでいうなら『レ・ミゼラブル』のように、歌が備わっていない人がやると舞台全体が台無しになるぐらいの、オペラの中でも究極です。10代からオペラを勉強してきて、来年ようやくこの作品をやろうと準備しています。」

――常に上を目指して、毎日練習されているのですね。

「そうですね。歌える曲を歌っていればいい、というふうには思わない。自分の人生、挑戦し続けていきたいです」

――テノール歌手としてのご活躍はもちろん、木彫では4年連続で二科展入選を果たし、高いクオリティの作品を創作されています。日々のルーティンなどあるのでしょうか。

「はい。朝8時半ぐらいに起きたら、まず黒ゴマジャムのトースト2枚を食べるところから決まっています。それからメダカに餌をやり、9時半から12時半まで彫刻。その後昼ご飯。13時から16時まで彫刻、16時半から18時半まで歌の練習。19時からはランニングや水泳などのトレーニング。そして20時半頃に晩ご飯。これを毎日、変えないようにしています。今、57歳ですが、体力は全然衰えている気はしないですね」

――木彫を始められたきっかけは?

「若い頃からずっとやりたいと思っていたのですが、歌手として半人前のときに趣味に没頭する気持ちの余裕がなく、43歳になって始めました。こんなにハマるとは思わなかったですが(笑)。自分の作品が出来上がるのが楽しくて、趣味でやっています。下手でも趣味だったら誰にも責められない。彫刻は楽しいところばかりかじっています」

――秋川さんのコンサートはクラシック音楽の解説をはじめ、人生経験をもとにされたMCも充実していますね。

「トークを期待してくださるファンの方が多いので、毎回歌よりトークのほうがプレッシャーが大きいです(笑)。僕のトークは大きく3つのカテゴリーがあり、ひとつはクラシック音楽の歴史や仕組みを分かりやすく解説するもの。あとは自分の人生の思い出と、メッセージです。今年は自分の人生を振り返りながら本を書いたので、人生の思い出とメッセージのトークが多くなる気がします」

――最後に大阪のコンサートに向けてメッセージをお願いします。

「住友生命いずみホールは最高の響きを備え、1000人規模のキャパのホールとして日本一だと思います。大阪のお客様は、一緒にコンサートを作り上げようとしてくださり、いつもとてもやりやすいです。今年も皆さんと一体となって盛り上がることを楽しみにしています」

取材・文:小野寺亜紀

 

大阪公演

|日時|2025/09/20(土) 15:00
|会場|住友生命いずみホール
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