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笑えて泣ける傑作戯曲を、升毅、⽔夏希、松村武らがイキイキと好演!まつもと市⺠芸術館プロデュース『殿様と私』が開幕!

2025/2/17

公演レポ

まつもと市民芸術館プロデュース 『殿様と私』

俳優・脚本家・演出家として幅広く活動し、⽇本の演劇界をけん引する⼀⼈であるマキノノゾミが⽂学座に書き下ろし、2007年に初演された『殿様と私』。ミュージカル映画の名作『王様を私』を下敷きに、⻄洋化していく⽇本に馴染めずに苦労する「殿様」とアメリカ⼈⼥性を中⼼にした物語が展開されるウェルメイド作品だ。 今回は芸術⽂化の街としてもますますの盛り上がりを⾒せる松本でマキノ⾃⾝が演出を⼿がけ、滞在制作を⾏なった。マキノとともに傑作コメディに挑むのは、升毅、⽔夏希、久保⽥秀敏、平体まひろ、武居卓、喜多アレクサンダー、⽔野あや、松村武といった実⼒派キャストたち。
2025 年2⽉13⽇(⽊)の開幕を前にゲネプロが⾏われ、作・演出を⼿がけるマキノノゾミからのコメントも到着した。

物語の舞台は、⽇本が鎖国をやめてしばらく経った明治19年。急激な⻄洋化に馴染めずにいる⽩河義晃⼦爵(升毅)の家令・雛⽥源右衛⾨(松村武)が外務卿の書⽣に侮辱される事件が勃発し、義晃が時代遅れの討ち⼊りを決意することから始まる。
すぐにでも討ち⼊ろうとする義晃と雛⽥に、息⼦の義知(久保⽥秀敏)は、「⿅鳴館のダンスパーティーで誰よりも⾒事に踊ってみせることで侮辱してきた者たちの⿐をあかす」という提案をする。⼾惑う義晃だったが、娘・雪絵(平体まひろ)の賛成もあり、アメリカ⼈⼥性・アンナ(⽔夏希)からダンスの指導を受けることに――。

⽩河義晃⼦爵役の升は、時代に取り残された頑固な殿様を滑稽だがチャーミングに描き出す。周囲から敬われる威厳ある姿、華族としての矜持や⼦供たち・周囲への愛情、⾃⽴したアンナにたじたじになる姿など、様々な姿をバランスよく⾒せ、なんとも愛らしく憎めない⼈物を作り上げていた。物語を追っていくと、ただの「時代に取り残された⼈」ではない悲哀や本⾳が⾒えてきて、殿様のことがどんどん好きになってしまう。
義晃にダンスを教えるアメリカ⼈⼥性・アンナを演じる⽔は、先⽣らしい凛とした佇まいとお茶⽬な少⼥のような⼀⾯のギャップが愛らしい。理解できない⽂化や価値観に対する呆れや怒り、可愛らしい和菓⼦に⽬を輝かせる様⼦など、素直な⾔動に惹きつけられた。

久保⽥が演じるのは、家や国のことを考えて賢く冷静に⾏動する息⼦・義知。⽗や家令の雛⽥に呆れたり、妹・雪絵をからかったりしながらも、随所に優しさが感じられる⻘年を好演している。平体は控えめだった雪絵が多くのことを学び、成⻑していく姿を瑞々しく演じる。初々しい少⼥が⻄洋の⽂化や考えを吸収し、様々なことを経験して⾃⽴していく様⼦に胸を打たれた。
アンナの通訳を担当する三太郎役の武居は、殿様とアンナの間で板挟みになりながらも奮闘する姿を愛嬌たっぷりに表現。松村は義晃以上に⻄洋⽂化を嫌う雛⽥をなんとも⼈間臭く、ユーモラスに演じ、雛⽥の妻・カネを演じる⽔野は、冒頭の覇気のない様⼦から徐々に活⼒を取り戻していく姿をイキイキと⾒せてくれた。そして、ジョン・ラング役の喜多は重要なポイントを担うキャラクターの多⾯性を丁寧に演じている。

また、鎖国をしていた⽇本が開国し、多くの⽇本⼈が⻄洋の⽂化に馴染んでいく中、その流れを拒否する古い⼈間、柔軟に順応していく若者、商売をする中で⾃然と英語を⾝に着けた⼈間など、“時代の変化”や“新しいこと”への多種多様な反応がコミカルに描かれている。
明治時代の物語だが、⽇常が⽬まぐるしく変化していく世の中という点では現代に通じる部分も多い。「殿様はなんて頑固なんだろう」と笑いつつ、変化への不安や寂しさに共感したり、熱意をもって新たな道を切り拓く若者たちに共感したり。様々なメッセージを受け取り、⾃分の在り⽅についても改めて考えることができるのではないかと感じた。

作中では、「⽇本語しか話せない義晃たち」、「英語しか話せないアンナやラング」、「英語・⽇本語が話せる三太郎や義知、雪絵」、によるコミュニケーションが全て⽇本語で描かれるのだが、「今のセリフは⽇本語/英語」ということがスムーズに理解できるのも⾯⽩い。わからない⾔語で話しかけられた時の⼾惑い、⾔いたいことが伝わらない落胆や諦めなどが繊細に表現されており、⾒ている側も⾃然に異⽂化交流の難しさを感じることができた。
また、相⼿を理解するために⾔葉や⽂化、考え⽅を学んだり、⾔葉が通じないからこそ素直な気持ちを話すことができたりと、⼈種や⾝分を超えたあたたかい交流が垣間⾒えるのも⼤きな魅⼒。登場⼈物たちは決して順⾵満帆な⼈⽣を送っているわけではないが、希望を感じさせてくれる物語になっている。
頑固で昔堅気な義晃と雛⽥の思いがけない⾔動など笑えるシーンも多く、コミカルながらグッとくる魅⼒的な作品を、ぜひ劇場で⾒届けてほしい。

〈作・演出:マキノノゾミ コメント〉

松本には30年ぶりに参りましたが、変わらず美しい街です。キャスト、スタッフともに、美しい街を散策、堪能しつつ、たいへん落ち着いた気分でのびのびと稽古しました。⽂化や創造には、このような精神のゆとりのようなものが⼤切なのだなと改めて感じます。
本作の⾒どころの⼀つは、“⽇本語話者と英語話者のディスコミュニケーション”が芝居全体のモチーフとなっていながら、セリフ⾃体はすべて⽇本語であること。アンナは設定上英語を喋っているので、観客が全て⽇本語のセリフを聴きながらも、「ああ、この部分は英語なんだな」とわかるようにしたいんです。想像⼒を刺激する⾼度な演劇的仕掛けを楽しんでいただきたいですね。
今回のキャストは、⼀⼈ひとりが個性豊かで素晴らしい俳優さんたちです。その演技合戦も存分にご堪能いただけると思っています。⼤らかに笑えて泣ける、とても良い舞台になると思いますから、ぜひ観にいらしてください。

〈あらすじ〉

明治19年、東京。⽩河邸の主、⽩河義晃⼦爵は、時代の急激な⻄洋化に馴染めず酒に溺れる⽇々を送っていた。そんなある⽇、家令の雛⽥源右衛⾨が外務卿の書⽣に時代遅れのちょん髷をからかわれ、さらには「⽩河⼦爵には華族の資格なし」と侮辱される事件が勃発。誇りを傷つけられた義晃は怒り⼼頭に発し、これまた時代遅れの討ち⼊りを決意する。
しかし、息⼦の義知は、⼑ではなくダンスで⽴ち向かうことを提案し、⼾惑いながらも、アメリカ⼈⼥性アンナ先⽣の熱⾎指導のもと、ぎこちないダンスの特訓が始まる。果たして、義晃は華麗なステップを踏めるようになるのか︕︖

取材・⽂=吉⽥紗奈
撮影=⼭⽥毅

 

まつもと市民芸術館プロデュース
『殿様と私』


■作・演出
マキノノゾミ
■出演
升毅
水夏希
久保田秀敏
平体まひろ
武居卓
喜多アレクサンダー
水野あや
松村武

▶▶オフィシャルサイト




大阪公演

|日時|2025/02/28(金)~2025/03/02(日)≪全4回≫
|会場|近鉄アート館
▶▶公演詳細

 

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