国際的なピアノコンクール「第12回浜松国際ピアノコンクール」通称 “浜コン”（2024年11月開催）で日本人として初優勝を飾り、国内外から絶賛注目中の若きピアニスト、鈴木愛美。2023年に行われた「第92回日本音楽コンクール」ピアノ部門で第1位と岩谷賞（聴衆賞）、「第47回ピティナ・ピアノコンペティション」で特級グランプリと聴衆賞を連続して獲得して臨んだ「浜コン」だけに、悲願の日本人初優勝を彼女に託したクラシックファンは多かったのではないか。大阪府箕面市出身の彼女にとって、凱旋公演とも言える箕面市立文化芸能劇場大ホールでのリサイタルが決まったこの日、記者会見が行われた。

　

――「浜コン」優勝が決った瞬間、何を思われましたか。

「正直、自分が優勝すると思っていませんでした。6位から順番に呼ばれて行って、2位まで来て、自分だけが残った時に、優勝を確信しました。大変な事になったと思いましたが、嬉しかったです。」


――前年に日本音楽コンクールとピティナの特急グランプリを立て続けに優勝と聴衆賞を獲られていました。そして浜コンでは、両賞に加え室内楽賞も受賞し、三連覇です。その事についてはどう思われていますか。

「何よりも嬉しいのは、すべてにおいて聴衆賞を頂いた事。極端な話、優勝よりも聴衆賞の受賞にはこだわりたかったです。この先のコンクールへの挑戦は、現時点では未定です。もっと勉強して成長できた時に、ヨーロッパのコンクールに挑戦できたらと思っています。」


――コンクールのファイナルは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を選ばれました。

「ベートーヴェンの第3番と第4番の協奏曲が好きです。日本音楽コンクールやピティナの本選でも弾いている第４番を弾こうと思っていたのですが、12月に第3番を弾く公演が決まっていたこともあって、第3番にしました。しかし、3次予選が終わった段階では暗譜が十分に出来ていない状態でした。本選まで中3日有ったので、その間に勉強をし、曲を覚えました。いい意味での緊張感を持ち、集中して決勝の舞台に臨むことが出来ました。」


――コンクールとは鈴木さんにとってどういうものですか。
　
「注目してもらうキッカケになるので、大切で必要なものだと理解しています。受賞後は、取材をしていただく機会も増えますし、演奏する機会も増えました。少し時間をおいて、しっかり勉強し、自分の成長を感じることが出来たタイミングで、ヨーロッパのコンクールも受けてみたいと考えています。」

　
――鈴木さんは大阪の夕陽丘高校から東京音楽大学に進まれました。

「夕陽丘の3年間は宝物のような時間でした。とにかく楽しく、クラスメートにも恵まれ、今でも仲良くてしています。最初から師匠に恵まれてここまで来ることが出来ました。昔から通っていた教室では、浜松を受けている間もずっと、YouTubeで応援してくれていましたし、現地まで応援に来た方もいました。地元の温かさに支えられてここまで来ました。」


――そんな大切な地元である箕面市立文化芸能劇場大ホールでの演奏会が決まりました。鈴木さんにとっては凱旋公演となりますね。

「地元箕面での公演は初めてになります。昨年3月に地元に出来た新しい劇場で、ゆっくり私の演奏をお聴きいただく機会が出来て嬉しく思います。」


――箕面公演のプログラムについて教えて下さい。

「現在、興味を持っているドイツ系の作曲家を意識して選曲しました。コンクールの第1次予選でも採り上げたハイドンのソナタ第13番は、彼のユーモアが随所に感じられる素敵な作品です。シューベルトの「高雅なワルツ集」は、晩年の作品で、一見シンプルな作品ですが、和声の配置が素晴らしく書かれていて、こちらも私が大好きな作品です。リストの「ウィーンの夜会 第6番」は、シューベルトの「高雅なワルツ」を基にした作品です。美しい曲です。以前からこの2曲をセットで、リサイタルで弾きたいと思っていました。そしてリサイタルの後半を占めるのがシューマンの「幻想小曲集」です。30分弱の曲ですが、8曲で構成されていて、2曲目の「飛翔」は独立してよく演奏される曲です。シューマンに取り組むのは今回が初めてなので、とても楽しみにしています。シューベルトとは違った魅力いっぱいの曲集だと思います。」


――自分の演奏の持ち味について、どのように捉えておられますか。

「自分の演奏はどんなもので、何が得意かなどは決めつけないようにしています。楽譜に書かれていることをその通りに弾く。個性を意識するのは、作品を演奏するうえで邪魔になると思っています。指紋が人それぞれ違うように、勝手に違う演奏になります。勝手に個性は出るものではないでしょうか。」

――メッセージをお願いします。

「新しく地元箕面に出来た箕面市立文化芸能劇場には行ったことが無いのですが、それだけにそこでピアノを弾くとどんな音がするのか、客席はどんな感じなのか、興味は尽きません。伺うのが楽しみです。私のリサイタルには、どうぞ気軽な気持ちでお越し頂けると嬉しいです。皆さま、会場でお会いしましょう。」

取材・文：磯島浩彰（音楽ライター）

大阪公演

｜日時｜2025/04/29(火・祝) 14:00
｜会場｜箕面市立文化芸能劇場 大ホール
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