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浜中文一がカッコつけの彫刻家に
明暗が逆転するドタバタコメディ

2024/7/10

インタビュー

舞台「ブラック・コメディ」

 映画「アマデウス」などで世界的に知られる英国の戯曲家ピーター・シェーファーの舞台「ブラック・コメディ」が、東京のIMMシアターで上演される。売れない若手彫刻家が、留守中の隣人宅から数々の調度品を無断で借りて、婚約者の父親や富豪の美術コレクターを招き、自分の作品であるかのように画策して愛と富を手に入れようとするが、停電が起きてしまうというドタバタ劇。クスクス笑える戯曲に加え、傑作なのはシェーファーが劇中で、室内が明るいシーンでは舞台上を暗く、停電のシーンでは舞台上を明るくするという、逆転の発想を生み出したことだ。普段、ブラックなコメディが大好きで、自身のことを「ブラックかもしれない」と言う主演の浜中文一の思いとは――。

――まず、オファーを受けていかがでしたか。

「この作品のことは全く知らなかったんですが、ブラックなコメディのジャンルがもともと好きなので楽しそうだなと思いました。そこから台本を読みましたね」

――台本を読んだ印象は?

「すごく細かい動きがたくさんある作品。計算し尽くされていて、ピーターさんは書いている時、大変やったんちゃうかなと思うぐらい。ピーターさんが脳内で演じながら書いてたんちゃうかなとびっくりもしました。よく書けたなと思いましたね(笑)。今は稽古を始める前ですが、どうやって絵として見せたら面白いのか考えています。イメージはできるんですが、実際やるのは難しいと思います」

――浜中さんが演じる彫刻家のブリンズリーはどんな人物だと思いますか。

「婚約者のお父さんに気に入られようとしながらも、欲望にまみれて、関係のあった女性のことも忘れられず、カッコつけですよね(笑)。最終的には観ている方に応援してもらえるように演じたい。ドタバタ感のある暗闇の中で、成功をつかんでほしいと、性格が悪くても応援してもらえるような役作りができたらなと思います」

――シェーファーの戯曲のト書きには、ブリンズリーは『カッコよくて、気が小さくて、内向的でセクシー』と書いてあります。ご自身との共通点は?

「ないです、ないです(笑)。ブリンズリーにカッコよくてセクシーでいる必要があるんかな?と思いながら読んでいました」

――大嘘つきで優柔不断でもあるので、そうじゃないと女性にモテないような気がします。

「モテるためのものなんか…(笑)」

――そういう構想は練られていますか。

「稽古にまだ入っていないので難しいですね。でも、頑張れ、頑張れと思ってもらえるような役柄は作っておきたいです。全員のキャラクターがそうであったらいいと思います」

――ブラックなコメディがお好きとのことですが、よく見ているのですか。

「昔は海外の作品とかをよく見ていました。関西人だからというのと関係があるのかはわからないですが、はっきりパーン!と言うのが気持ちいいですよね。ブラックジョークも知性があって。昔は多少、過激なことを言うのも許されていたので、面白いなぁと思って見ていました」

――浜中さんご自身は、ブラックな人なのでしょうか(笑)。

「そうですね、ブラックかもしれない(笑)」

――コメディを演じる上で大切にしていることは?

「台本にないところで、いかにお客さんにばれずに共演者を笑かすかですね(笑)」

――今回は共演者を笑わす余裕はありそうですか。

「やりますよ、僕は(笑)。暗闇が使えるので楽しみですね」

――笑わせるのにお手本にしている人はいますか。

「僕の個性は出しつつも、いろんな間やテンポ感をお笑い芸人さんから学べたらという感覚です」

――暗闇の中で色んなものにぶつかったり、アクシデントが次々と起こったりと、身体的にも大変な役です。

「どうなるんでしょう。これだけ計算されていると、やる側は結構なプレッシャーです(笑)。本来は、ピーターさんに『ここには裏のテーマがあるんですか?』と直接うかがうのが一番いいんでしょうね。でも、(もう亡くなって)聞けないので、台本を読んで頑張るしかない。稽古してみてはじめてどうなるかが分かるので。演出の大歳倫弘(ヨーロッパ企画)さんとお話しして、そこから方向性を見極めていきたいです」

――舞台が明るい時に、暗闇にいる演技をしなきゃいけないというのはすごくハードルが高いと思います。

「本来、黒目になるじゃないですか。そこまで再現したほうがいいのかなと(笑)。それに暗闇の時は、人って口が開いてそうやなとか。口を閉じて真っ暗闇の中にいない気がする。テレビのドッキリとかでも、だいたい人の口は半開きやったりするから、口を開けることは考えています(笑)」

――台本の後書きには、演じた役者は生傷が絶えなかったと書いてありますね。

「僕がどこかにぶつけてというのはいいんですが、ほかのキャストの方に怪我をさせるのは怖いですね。そこだけは気を付けたいです。暗闇で誰かと頭をぶつけたら、それこそ、婚約者の父を演じる渡辺いっけいさんが脳震盪を起こして倒れるかもしれない(笑)。いっけいさんと舞台で共演するのは初めてで、ずっとご一緒したいと思っていたので、すごく楽しみです」

――『人生は多義的で不可解であいまいなもの』とシェーファーは言っていて、それは今回の作品のキャラクターに共通していると感じます。

「皆、それぞれ強烈な個性がありますね。海外の強烈なキャラクターがどこまで日本に受け入れられるかというのがありますし、多少、日本寄りにしてもいいんじゃないかと。そこが難しいですね」

――作品の中で、ブリンズリーはどんな逆境にあっても立ち向かいますが、浜中さんご自身はそんな経験はありますか。

「逆境ぐらいのところまでいかないと何もしない男なので、日々が常に逆境の感じですね(笑)。自分で追い込んでいます」

――これまでの舞台の出演作も作品の幅が広いですね。

「基本的には、オファーを受けた作品をやっています。お声がけいただいたものは、ぜひやりたいと思っているので。今は仕事がかぶっている月もあるほど、面白そうな作品のオファーをいろいろといただいています」

――今後も舞台は作品や役柄の幅を問わずに挑戦したいですか。

「いろいろやれたらと思うんですけど、舞台で良かったなと思う作品を映像に持っていけたらなとも思っているんです。逆は多くても、舞台からの映像化はなかなか日本ではなかったりする。日本の演劇界もそうなればいいなと思っています」

――ほかに展望はありますか。

「野望は色々ありますけど、今は自分がでかくなることが一番の目標。最重要目標で、そのために頑張ります」

――『ブラック・コメディ』は、残念ながら大阪公演がありません。大阪の人が東京まで見に行こうと思うポイントは何でしょう。

「どうやったら来ていただけるんですかね。えっ、交通費がネック? じゃあ、いっけいさんにお願いして、いっけいさんが何割か負担してもらえるか聞いてみるので、大阪の方、恐れずに見に来ていただけたら(一同笑)」

――この作品は文化庁の子供文化芸術活動支援事業に取り組んでいるので、18歳以下の人は無料だそうです。

「ネックなのは交通費だけですね。だから、いっけいさんにお願いしたいですね(笑)」

――最後に楽しみにされているお客さんにメッセージをお願いします。

「観に行こうか迷っている方へ。非常に面白い作品なので、これは見たほうがいい。映画で言えば、大ヒットになって何か月も上演されるぐらいの作品です。絶対、見たほうがいいです!」

取材・文=米満ゆう子

 

舞台「ブラック・コメディ」

■原作
ピーター・シェーファー「ブラック·コメディ」
■上演台本・演出
大歳倫弘(ヨーロッパ企画)
■出演
浜中文一 市川美織 三倉佳奈 山口森広/吉田ウーロン太 竹森千人/朝海ひかる 渡辺いっけい

▶▶オフィシャルサイト

東京公演

|日時|2024/08/17(土)~2024/09/01(日)≪全18回≫
|会場|IMM THEATER

▶▶公演詳細

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