2024/7/10
インタビュー
――2020年に大阪で来日公演が予定されていましたが、コロナ禍で中止になり、今回が大阪初となります。アンバサダーに就任された時のお気持ちは?
「私しかいないと思いました(笑)。それは冗談で、私で役に立つのかなと。私はブロードウェイでは観られなかったんですが、ロサンゼルスに行った時、理想的なキャストでブロードウェイ版を観たんです。2014年から日本版のデロリスをやらせていただいていますが、いまだに続けられている原点はあの時の感動。オープニングの前奏曲から心を鷲づかみにされて、物語が始まって号泣。隣の人に『早すぎる!泣くところはこれからだ』と言われました(笑)。思い出したら、あー涙が出てきちゃった…。とにかく、私でお役に立てればという気持ちで今日、大阪に参りました」
――ミュージカル版の魅力は何でしょうか。
「モータウン系や宗教音楽、ヒップホップ、R&Bなど、ジャンルが幅広くてアラン・メンケンは天才を超えていると思いました。ここで全曲歌ってもいいんですけど(笑)、聴いていただかないと分からない。キャストはため息が出るような素敵な歌声ですし、夢心地になるような、皆さんがキャラクターの気持ちに入っていけるような音楽です。素晴らしいのでとにかく体験してほしいですね」
――今回の来日キャスト版は、映像で見られたそうですね。
「グレードアップしすぎていました。2015年、17年の東京の来日公演も拝見したんですけど、今回はより華やか、きらびやか、あでやかになり、エンターテインメント性も高まっている。日本版とはまた違って、派手でギラギラで素晴らしいです。衣装も派手、照明も派手でお金がかかっていました(笑)」
――長年デロリスを演じられていますが、彼女の一番の魅力は何でしょう。
「嘘を付けない人。誰に対しても態度が同じなんですよね。『この人は偉い人なのよ』と言われても『へぇー、だから?』というような人間。たぶん、彼女は愛を注がれて育ったのではないんですよね。それがシスターたちによって…、また涙が出てきちゃった(笑)。シスターたちから愛や友情をたくさんもらって、デロリスが変わって成長していく。シスターたちも彼女と共に成長していくんです。
修道院長をはじめ、全員白人で、その中にポツンと黒人のデロリスがいる。シスターが『私たちはアフリカ人のシスターと食事をするのよ』と言うセリフもあり、物語には人種差別や貧困も描かれています。デロリスは修道院長といつも闘っているんですが、その修道院長でさえも、彼女に多大なる愛情を注ぐ。それが見ている人の心を揺さぶるんです」
――日本版を演じる時に、実際に修道院に見学に行かれたそうですね。
「シスターたちの生活を初めて見て本当に感動しました。皆さん穏やかで神様を中心に生活されている。修道院に行ったからこそ、彼女たちの精神が分かりましたし、神様はいるんだなと。あ、ごめん、また涙が。泣きすぎですね(笑)」
――今回の見どころは?
「全部が見どころなんですよ。一つも抜かすところはない。以前の来日公演で『Raise Your Voice』という曲で飛び入り参加して、シスターの格好で一緒に歌ったことがあるんですよ。今回も出られるかな?(笑)。私が出ていったら、会場がワーーッと盛り上がって、『今日一番の盛り上がりはこれだったわ。あなたには敵わないわ』と来日版のデロリス役の方に言われました(笑)」
――私もブロードウェイで見ているのですが、1幕の終盤でデロリスと聖歌隊が歌う『Raise Your Voice』は、浄化されるような感覚を覚えました。歌っていていかがですか。
この曲は涙が出るし、皆で歌えるちょうどいい音程なんです。男の人はオクターブ下で、女の人も無理しないキーで歌えるという楽曲。メンケンが誰でも歌えるキーとして作ったのがすごいと思っていて。あれは、ぜひ、皆で一緒に歌いたいですよね。来日版は字幕が付いていますから、「最後に一緒に歌ってください」と字幕で出したら、皆、歌えるんじゃないかと。アンバサダーからの希望です(笑)。『ブロードウェイの人たちと一緒に歌える!』これ、どうでしょうか?」
――いいですね!あそこではゴスペルチャーチにいるような気分になりました。
「そうだ、それだ!私、今まで感じたことのないような感覚はそれだったんだ。後ろにコーラス隊がいて、ソロで歌って、手拍子があって、そんな感じですもんね」
――2幕の最初の『Sunday morning fever』も楽しくて大いに盛り上がりますが、映画『サタデー・ナイト・フィーバー』をもじっているのですね。映画の有名なダンスの振りも出てきます。
「そうそう。1977年にあの映画が公開されたから、それに合わせているんですよね。人々を教会に集めるためにシスターたちがこの曲で踊り出すんですけど、神様に皆が触れる時間を作るのが伝道なんだとデロリスから教わったから、シスターたちは皆、吹っ切れている。ヒップホップを歌ったり、ラインダンスまでしたりしますから(笑)」
――『Take me to heaven』も、シュープリームスやテンプテーションズみたいな雰囲気で素敵ですね。
「モータウン系で、メンケンが『こんなに音楽を聴いたことがないほど勉強した』と言っていたそうです。プロデューサーを務めたウーピーからの依頼だったそうですよ」
――そうですか。歌う側からしたらいかがですか。
「地声で上まで張るのが大変ですね。無理に高い音を出して声がひっくり返るよりは、オクターブ下にしたほうがいいと思っています」
――日本の観客も海外ミュージカルを日本版、来日版と楽しめるようになってきましたね。
「日本版はイージーに日本語に訳していくのではなく、日本の人に響くような歌詞にしなきゃいけないというのはありますよね。『シスター・アクト』は時間をかけて訳しているので完璧だと思います。今回、初めて来日版を観た方が日本版も観てみようかなと思ってもらえればうれしいですよね」
――最後に大阪の皆さんにメッセージをお願いします。
「大阪のお客さんはいつもノリがよくて、本当にキラキラとしていて、宝石箱みたいです。今回は、一幕の終わりや二幕の最初は参加してなんぼなんで、阿波踊りと同じだと思ってください(笑)。今、ニューヨークに行っても円安で、エコノミー席でも25万円以上はするでしょ?ブロードウェイのチケットも高騰していますし、日本で見られるのは本当にお得です。ぜひ、ブロードウェイ・ミュージカルの素晴らしさを身をもって体験していただければ!」
取材・文=米満ゆう子
ブロードウェイ・ミュージカル
「天使にラブ・ソングを~シスター・アクト」
■オリジナルプロデュース
ウーピー・ゴールドバーグ
■演出
ロバート・ヨハンソン
■作曲
アラン・メンケン
■出演
来日カンパニー
生演奏/英語上演/日本語字幕付き
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2024/07/24(水)~2024/07/28(日)≪全8回≫
|会場|オリックス劇場
▶▶公演詳細