2024/6/17
インタビュー
――結成のきっかけを教えてください。
「元々、僕自身がジャズとクラシックのフィールドで活動することが多く、双方の垣根を越えて音楽をやりたいという気持ちがずっとありました。これまで金管アンサンブル『侍BRASS』なども展開してきましたが、トロンボーンカルテットでもやりたいと思い、世界トップのトロンボーン奏者であるジョゼフ・アレッシに『一緒にやりませんか』と声をかけ、『ぜひ』とお返事いただけたことが始まりです。
ニューヨークにいるジャズプレイヤーのマーシャル・ジルクスと、オランダでオーケストラ奏者兼ソリストとして活躍中のブラント・アテマも加わり、ジャズ2人、クラシック2人の構成。クラシックのように譜面に忠実に演奏することもありつつ、ジャズのようにインプロビゼーション(即興演奏)を聴かせることもある。クラシックかジャズか、白黒つけずにオリジナル曲を演奏しています。
Slide Monstersは完全にトロンボーンのみの編成で、ジャズ編成にあるはずのドラムやベース、ピアノといったリズムセクションがいないため、聴き手の皆さんが自由にリズムやビートを想像しやすく、それもSlide Monstersの特徴の一つかもしれません」
――改めて、トロンボーンの魅力を教えてください。
「やはり、迫力がとんでもないところでしょうか。数千人規模のコンサートホールでもフルボリュームで鳴らすことができる楽器なので、4人で鳴らすと4人以上の音に聴こえます。Slide Monstersではそれをうまく表現できるオリジナル作品を作るよう意識していて、インプロビゼーションの場面ではそれぞれが一期一会の演奏もできる。トロンボーン一つを360度楽しんでもらえるよう、心がけています」
――トロンボーンは普段、オーケストラや吹奏楽でも中低音を担うことが多く、ますますスポットライトを浴びることで魅力が伝わりそうですね。
「確かにトロンボーンは、基本的に周囲の楽器を支える役割を担うことが多い楽器ですが、Slide Monstersのメンバーはそれぞれソリストとしての顔も持っているため、従来のトロンボーンが持つポテンシャル以上の演奏ができると思っています。弦楽やサクソフォンのカルテットのようなメロディーを担う楽器がグループを組むように、我々もトロンボーンのカルテットとして、メロディカルな一面を見せたいですね」
――2018年に結成してから6年。グループにどんな変化がありましたか?
「レコーディングやツアーを重ねていく中で、それぞれのメンバーの音やキャラクターがわかるようになってきました。そのため、作曲するときもメンバーの音や顔を思い浮かべながら当て書きをすることが多くなりましたね」
――では、そんなメンバーの皆さんについて詳しく教えてください。
「ジョーさんは、僕にとってのヒーローです。僕は彼のステージングが好きで、演奏家としての姿勢をみてはこちらの背筋がピンと伸びます。
マーシャルは、外国人とのコミュニケーションに長けていて、その分メンバー同士を取り持ちながら、ムードメーカーとして雰囲気づくりを行ってくれる存在。彼のオリジナル曲もいくつか演奏していますよ。
ブラントはマイペースなのですが、そんな彼らしさが彼の吹くバストロンボーンに合っていると思っていて、グループを下から引き締めてくれる存在です。
それぞれまったく異なるキャラクターであり、4種4様の音が重なることで響きが豊かになります。6年かけてそれぞれの役割もはっきり分かれるようになりましたし、時を重ねることで生まれるグループのうねりやエネルギーは良いものだと実感しています」
――ライブに来てくださる皆さんへのメッセージや、これからの展望をお聞かせください。
「Slide Monstersの公演には、クラシックやジャズ、吹奏楽などでトロンボーンを吹いていたり、聴いていたりする方が来られることが多いのですが、いつもお客さんの熱さが半端ないんです。皆さんのおかげで、僕たちもトロンボーンのみの編成という形でマニアックなことができる。そんな場所があるのはありがたいことです。Slide Monstersは、これからもライフワークとして長く続けていきたいですね」
取材・文=桒田 萌