2024/5/21
インタビュー
――2018年に冨坂友さんの舞台に衝撃を受けたところから始まった企画だそうですね。
「初めて冨坂さんの舞台を拝見したとき、『なんて面白い舞台を作る人がいるんだろう』と思ったんです。そしておこがましくも、『もっといろんな人にこの面白い舞台を観てもらいたい。そこに私も出たいな』と思ったんです。その想いを周りの方に伝えていたら、少しずつ繋がっていってようやく舞台が実現し…。最初は半信半疑だったのですが、ポスター撮影をして『本当にやるんだ!』と実感が湧きました。私自身も本当に楽しみです」
――冨坂さんの作品の魅力、惹かれているポイントは?
「台詞に一切無駄がなく、緻密に計算されていて、非常にわかりやすく面白い。情報量はたくさんあるけれど、それが見事に整理され、散りばめられた伏線が回収されていくんです。そしてどのキャラクターも個性的かつ魅力的で。本当に素晴らしいなと思います」
――冨坂さんとはすでに2回、生放送のワンカットドラマで演出も受けられましたが、いかがでしたか?
「冨坂さんは感情のアップダウンがない、穏やかな方。ドラマや映画、舞台など色々なものを見て熱心に研究されていて、私たち俳優に届けてくれる言葉も非常に的確なんです。生ドラマのリハーサルではその風景を録画し、私たちに後から長文でオーダーを送られてきたのですが、それもわかりやすく面白くて。大好きです(笑)。あと、自分の中で出来なかったと思っていたことは、確実に見抜かれていました!」
――鈴木保奈美さんは育児を経て俳優業に復帰後、「部活」と称して 俳優仲間の方々と観劇やワークショップを通じ、舞台活動も積極的にされているようにうかがえます。そこに至った思いは?
「20代の頃、いくつか舞台を観に行ったときに、私の理解力が追いついてなかったからだと思うのですが、面白さがわからなかったんですね。40代ぐらいから色々なお芝居を観に行くようになり、またドラマの撮影現場で、舞台で活躍されている方からお話を伺う機会も多く、『面白そうだな、やってみたい』と思うようになりました」
――実際に『セールスマンの死』(2022年)や『レイディマクベス』(2023年)にご出演されて、舞台の面白さや喜びを感じられましたか?
「どちらの作品も素晴らしい舞台の先輩に囲まれて、毎日学ぶことばかりでした。映像はディレクターのOKが最終のOKですが、舞台は目の前にお客様がいらして、最終決定権はお客様にあり、お客様のOKを頂くために出演者もスタッフも日々一生懸命やっているところが違うなと思いました。どちらがいい悪いというのではなく、力のベクトルが違うのだなと。それがとても面白かったですし、幸せな時間でした」
――今回の作品はコメディなので、お客様の笑い声などまた違った反応が返ってきそうですね。
「笑い声がなかったら…と思うと、眠れなくなりそうです(笑)。先日、冨坂さんの舞台を拝見したのですが、お客様が本当に声を出して笑っていらして。まだ台本は出来上がっていないのですが、『逃奔政走――』もきっとそういうお芝居になると思います」
――コメディはお好きですか?
「はい、観るのも大好きです。『セールスマンの死』のときでさえ、一箇所、うまくいけばお客様が笑ってくださる場面があったんです。そこで笑いが起きると、みんなで『今日は笑ってくれたね!』と(小さくガッツポーズの仕草)。シリアスなお芝居でも、やっぱり笑いの要素があると嬉しいですね。ただ、今回共演の佐藤B作さんが、『コメディはやる側が楽しんではいけない』とおっしゃっていたので、そこは気をつけたいなと思います」
――役柄は、今年3月に放送の生ドラマでも演じられた小川すみれ。NPO法人の代表でTVコメンテーターの彼女が、政治の世界に誘われて…という流れになっていますね。
「冨坂さんの中で、ドラマは舞台のエピソードゼロという形だったんだと思います。女性たちの生きやすさを求め、手探り状態だった小川すみれは、もっと大きいステージで活動すると物事が運びやすくなるかもと、県知事になり、権力の使い方を覚えていくんだと思います。社会的な責任が大きくなり、彼女の成長しきれない部分もあって、おっちょこちょいな変化が起きていくようで…。理想に燃える、真面目で不器用な人、という風に、ドラマで演じていたときから感じていました」
――ご自身と重なる部分はありますか?
「私も正義感は強い方かなと思います。あと、言いっぱなしになるところでしょうか(笑)」
――役作りの参考に考えてらっしゃることは?
「実は先日、都議会に足を運び、小池百合子都知事が40分ほど演説されているのを聞きました。私たちの代表なんだ、こういう方たちが世の中を回してくださっているのだと実感しました。お芝居としては、あの議会全体の雰囲気や、都知事の佇まい、色んな役職の方との距離感などは参考にしたいと思っています。冨坂さんともお話ししたのですが、この作品は何か政治的なメッセージがあるのではなく、皆さんに『議会ってどんなところだろう?』とか、興味を持ってもらえたら十分で、それが私たちの仕事の意義なのかなと」
――最後に舞台を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
「物語には色々な伏線がはられていて、2回、3回観ていただいても面白いと思います。シンプルに約2時間夢中になり、笑っていただける作品に絶対になると思うので、楽しみにしていてください」
取材・文=小野寺亜紀
舞台『逃奔政走-嘘つきは政治家のはじまり?-』
■脚本・演出
冨坂友
■出演
鈴木保奈美 寺西拓人 相島一之 佐藤B作
中田顕史郎 伊藤圭太 鹿島ゆきこ 榎並夕起 斉藤コータ
熊谷有芳 前田友里子 淺越岳人 矢吹ジャンプ 古谷蓮
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2024/07/20(土)~2024/07/21(日)≪全3回≫
|会場|京都劇場
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