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KEP ONLINE Online Magazine

シームレスなギターサウンドを
ライブだけの編成で再アレンジ

2024/4/4

インタビュー

Ichika Nito Live “season 1 osaka ver i-1”

2016年にInstagramでテクニカルなギターの演奏動画を投稿したことで話題を呼び、翌年にソロギタリストとしてデビューを果たしたIchika Nito。現在は「ぼくのりりっくのぼうよみ」として活動していた、たなかとのDiosや川谷絵音とのichikoroといったバンドにも在籍しながら、ソロでヨーロッパやアメリカツアーも行うなど、精力的な活動を展開している。4月には森ノ宮ピロティーホールでバンド編成によるソロコンサートも控えており、本公演にかける意気込みや、ルーツであるメタルやジャズピアノへの思い入れ、独特なプレイスタイルについて話を聴いた。

――今回はIchikaさんの音楽的なルーツや、近年の活動についてお話を伺いたいと思います。まず、音楽の原体験について教えてください。

「父が音楽好きで、家にさまざまなジャンルのレコードやCDがあったのですが、3歳の時にビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビイ』聴いて、すごく悲しい気持ちになったんです。まだほとんど人生経験もない自分がビル・エヴァンスのピアノに心を動かされたのは、純粋に音楽の持つ力によるものだったんだなと思って、これが音楽に感動した最初の体験でした。一時期はピアノの演奏家になることも考えたのですが、あまりに道が険しいことから断念して。その後、中学生の頃からヘヴィメタル、ハードロックにハマり、父の部屋にあったギターやベースを演奏するようになりました」

――ヘヴィ・メタル、ハードロックもお父様の影響で?

「そうですね。父のCDの中にメタルの作品がたくさんあり、最初はガンズ・アンド・ローゼズやデヴィッド・リー・ロス、ヴァン・ヘイレンなどを聴いていました。中でもアイアンメイデンはジャケットが怖くて近寄りがたかったのですが、聴いてみたら衝撃的にカッコよくて、1stアルバムに収録されている『トランシルヴァニア』のベースラインを必死でコピーしました。その後、2ndアルバムの『キラーズ』も全曲コピーしました」

――Ichikaさんの音楽的ルーツでメタルが占める割合は、かなり大きいのでは。

「そうですね。今でも好んで聴くのはメタルばっかりです。ギタリストではエディ・ヴァン・ヘイレンやスティーヴ・ヴァイからの影響が強く、エディのタッピング奏法は、今、自分がやっているスタイルとは違いますが、すごく参考にさせてもらいました。ヴァイも音色やプレイスタイルなど、さまざまな面でギターの表現方法を広げてきた改革者だと思います」

――旋律を奏でつつ、タッピングやパーカッシブなリズムを混ぜる演奏スタイルが独特ですが、これはどのように確立されたのでしょうか。

「ビル・エヴァンスから音楽に入ったこともあってピアノ音楽の完全さに憧れていて、それをエレキギター1本でやりたいと思ったのが今のスタイルを作るようになったきっかけです。模索するうちにコードワークの間にタッピングをつなぎとして使い、音を重ねていくことでシームレスな音楽を作れるようになりました。ただ、それだけではピアノと同じということで、ビブラートやスライドといった弦のゆらぎやパーカッシブなリズムも取り入れて、ギターならではの奏法を作っていきました」

――現在はソロをはじめ、Diosやichikoroなどのバンドにも所属されています。バンド活動に対しては、どのような思いがありますか?

「学生時代にデスメタルバンドでギターを弾いていた時期もあったのですが、デビューしてからは基本的に1人で活動してきたので、なにかしら音楽的なコミュニティに所属したいという気持ちが芽生えてきたんです。Diosは共通の知人を介してボーカルのたなかと出会い、その後、キーボードのササノマリイが合流しました。それぞれオタク気質でシンパシーを感じるようになり、最初はカバーなどをやって遊んでいたのがオリジナルも作るようになって、今の形に発展しました」

――ichikoroは川谷絵音さんから声をかけられて加入されたとのことですが、ご一緒しての印象はいかがですか?

「川谷さんは曲を作るのが早く、大まかなコード進行を決めたら、あとはメンバーで肉付けして仕上げるスタイルなのですが、川谷さんの意思決定が早いから作業もサクサクと進んで、そういった作り方がとても勉強になります。Ichikoroはメンバーのみなさんが多忙なので年に数回しか活動できなくて、今は基本的にソロとDiosを半々ぐらいの比重でやっています」

――ソロでは2023年にヨーロッパツアーを行うなどグローバルな活動を展開されています。海外のファンの反応はいかがですか?

「動画のコメントなどでよく見るのが、『Ichikaは、オタクたちのヒーローだ!』という意見。海外のファンはゲームやアニメが好きな人が多くて、彼らがイメージするヒーロー像を僕に投影してくれているようです。そのあたりは日本と違った反応で、とても興味深いです。2024年も5月にまたヨーロッパツアーが決まっていますし、アメリカにも行きたいと思っています」

――4月に森ノ宮ピロティホールで予定されている大阪公演についてもお聞きしたいと思います。まず、編成はどのような形になるのでしょうか。

「僕以外のメンバーは、バイオリン、チェロ、ピアノ、ドラムスという小オーケストラのような編成にして、自分の曲を再アレンジしながらやっていこうと思っています。この編成で録音をする予定も今のところないので、本当に会場に来てくださった方だけが楽しめる、特別な1日にしたいと思います」

――ゲストとして押尾コータローさんが出演されますが、押尾さんとはこれまで交流があったのでしょうか。

「実はなくて。僕が一方的に好きで、日本のレジェンドギタリストだし、いきなり出演オファーをしていいのだろうかと思ったのですが、コンタクトを取ったら快諾してくださいました。これから音合わせなどをやっていくのですが、今、自分の中で、恐れ多い気持ちと楽しみが渾然一体となっています」

――最後に、公演を心待ちにされているお客様へのメッセージをお願いします。

「ギターの奏でる一音一音にこだわって準備をしているので、音源とは違った音の響きに、ぜひ耳を傾けていただけたらと思います。自分のようなスタイルで活動しているギタリストって他にあまりいないと思うので、初めて来られる方にも楽しんでいただけたらと思います」

TEXT:伊東孝晃

 

Ichika Nito Live “season 1 osaka ver i-1”
 
|日時|2024/04/05(金) 19:00
|会場|森ノ宮ピロティホール
|ゲスト|押尾コータロー

▶▶公演詳細
▶▶X(Twitter):@ichika_mo

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