2024/4/21
取材レポ
――大阪では久々の地球ゴージャスの公演です。
岸谷「コロナ禍で、かかわった2つの作品が上演できなくなり、我々の中で大阪公演はやりたくて仕方なくてウズウズしています。SkyシアターMBSという新しい劇場で何としても実現させたいです」
寺脇「うちの親分が言いましたが、2作品ができなくて、戦争が起こり、地震があり、皆で何かを楽しむという当たり前の時間が本当に奇跡的なんだなと感じています。親分が稽古場で言ったんですけど…」
岸谷「親分って言うな(笑)!」
寺脇「だからこそ、奇跡の時間をこれが最後だと思って全力でやろうねと。劇場で皆さんとエネルギーの交換をしたいと思います」
――中川さん、風間さん、鈴木さんは、地球ゴージャス30周年の節目でのオファーです。
中川「高校生の時に地球ゴージャスの『The Love Bugs』を観劇して、ものすごい衝撃を受けました。その日の自分のブログには『いつか、こんな舞台に立ちたい』と書いていました。30周年というめでたいタイミングで参加できることに驚いていますし、楽しみにしています。記者の皆さんに集まってもらって言うのも何ですが、今すぐ稽古場に戻りたいぐらい毎日が楽しいです(笑)。大阪公演をしっかり届けられるように頑張ります」
風間「このメンバーと一緒にいると本当に幸せな気持ちがいっぱいで、その気持ちのまま、お客さんにも幸せになっていただきたいなと思います。初めて地球ゴージャスに参加した時、僕は20歳でした。その後は30歳、今40歳と10年ごとに作品に参加させていただいて、僕の節目には必ず地球ゴージャスがいてくれました。今回は40歳の人生に刻まれる、自分の成長を見てもらえる作品になると思っています」
鈴木「オファーを受けた時はすごくワクワクしていて、今は着実に本番が近づいているのを感じています。岸谷さんの頭の中を見せていただいているような感覚です。僕は10代最後の作品になるので、とても大きい存在の舞台です」
――中川さんと鈴木さんは地球ゴージャス初参加です。稽古はいかがですか。
中川「舞台はこれが2作品目で、まだまだ経験も少ないですし、分からないこともたくさんあります。今回はお芝居だけではなく、歌やダンス、立ち回りなど地球ゴージャスならではのエンターテインメントが詰まっていて、カンパニーのチームワークや空気を体感できて毎日がすごく楽しいです」
鈴木「すごく素敵な時間で、今までの作品より本読みの回数が多くて、岸谷さんからアドバイスをもらったり、自分でもこうやってみたいと新たな発見がたくさんあったりするんです。皆さん、ワイワイしていてこうやってゴージャスな作品が作り出されるんだなと毎日楽しいです」
――風間さんは10年ぶりですね。
風間「地球ゴージャスの作品は老若男女すべての人が楽しい気持ちで帰ってもらえるんです。その上、大事なメッセージや人間の儚さ、切なさなど楽しいだけじゃないものもしっかりと入っている。それをダイレクトにぶつけるのではなく、種をそっと渡すような感じ。あの時は『楽しい』と受け取ったけど、儚さ切なさは何十年後、時間を経て、つらい時に自分を鼓舞してくれる。そこが地球ゴージャスの魅力だと勝手に思っています」
――岸谷さん、今作に込められた思いを聞かせてください。
岸谷「たくさんあるんですが、皆、本当に気持ちのいい奴らで人間っていいなと思わせてくれる。先ほど寺脇の野郎も言いましたが…」
寺脇「おいっ(笑)!」
岸谷「世界情勢が悪いと、どうしても暗くなっていくんですが、演劇は改めて人の心を豊かにできるものだと。そんな作品を2024年にぶつけなきゃなという思いがすごくありました。このメンバーと毎日いると、人間同士って本当にいいなという思いに立ち帰らせてくれる。この3人(中川・風間・鈴木)にはあてがきで、僕の中では初めての会話劇なんです。今の世の中の状況でも人間に絶望してはいけないというのが根源にある。人間って素敵だろというのが重なったら会話劇になったんです。このメンバーが集まってくれて、彼らが好きで書けた脚本(ほん)だなと思っています。地球ゴージャスの代表作になるといういい感触がありますね」
寺脇「僕はいつも五朗ちゃんの脚本の最初の読者ですが、今回は今までのゴージャスにはない、大人っぽさがある。『これは映像では浮かぶけど舞台ではどうやってやるの?』と聞いたら『まだ、分かんない』と。作家・岸谷五朗が演出家・岸谷五朗に挑戦しているような感じがします。一本の中に8通りの作品が入っていて、8倍おいしいし、今の世界情勢も入っている。エンターテインメントでありながら、今、世界で、日本で起こっていることを一緒に考えたいという思いもあって、今年にふさわしい作品だと思います。
30年前、このユニットを作った途端、阪神・淡路大震災が起き、役者として何ができるのかとガックリ落ち込みました。新作をやってもそれどころではない。一番必要じゃない仕事なのではと思ったこともあったんですが、住むところ、食べるものが何とかなった後は、最後に必要なのは心の栄養や豊かさなんじゃないかと。日本と言わず、地球の皆さんの心を豪華にゴージャスにしようとの思いで、地球ゴージャスと名付けました。今回特に、地球をゴージャスにするという思いが詰まった作品です」
――中川さん、風間さん、鈴木さんに期待されることは?
岸谷「期待するところだらけです。大志の舞台を見た時に、こんなに役づくりからブレない男がいるんだと感動しました。福くんの舞台では、まさか福くんが歌って踊れるとは、という衝撃がありました。今、稽古場で彼の筋肉の良さに驚いています。そして“節目お祭り男”の俊介は、10年ごとに確実に未来の力をつかんでいる。40歳になった彼は間違いなく10年前とは違う特別な魅力がある。本当に素敵な魅力ある役者が集まってくれて幸せです」
寺脇「まったく同感です。大志とは『おひさま』という連続テレビ小説で共演し、僕は大志のお父さん役だったんです。小学校6年生なのに芝居の取り組み方とかすべてに真摯で、顔もカッコいいし、『絶対にスターになるから辞めんなよ』と言ったのを覚えています。そしたら、こんなになって(笑)。その彼とがっつり組んで、芝居を交わすという不思議な縁を感じています。福くんも小さいころから見ていてもう親みたいな気持ち(笑)。こんなに素直ないい子のまま育って素晴らしいなと。一切手を抜かないし、できないことも頑張ってできるようになるという身体能力もあります。俊介はうちの番頭で全部任しちゃっていい男なので、非常に頼もしいです。人気三人トリオが我々を助けてくれると信じています」
――今後はどんな地球ゴージャスを目指したいですか。
岸谷「30周年で、寺脇さんとはもう40年になるんですが、本当に3、4年前に始めたような感覚なんですね。演劇という存在があまりにも大きくて、いつも届かないものにもがき、そこを目指している。我々の中では通過点で、もっと努力していい作品を作りたいです」
――最後にメッセージをお願いします。
風間「今まで閉塞的だった生活を打開したい、何か自分に新しい風を吹かせたいと思っていらっしゃる方がいれば、ぜひ劇場に来てもらって、体感してほしい。見る前のあなたと見た後のあなたはきっと変わっていると思います」
鈴木「お客様一人ひとりに寄り添うようなキャラクターたちなので、そこに共感して、入り込めるような世界を作るように頑張ります」
中川「地球ゴージャスとして新しい劇場で参加させてもらえるのが本当に楽しみです。このカンパニーの熱量を大阪公演の大千穐楽までつなげていきたいです」
寺脇「映像作品は見る人によって大きさも違うし、残していく芸術です。でも舞台は全員が同じ状況で見て、より役者の力が分かり、消えていく芸術です。目に焼き付けて、胸にダイレクトに残るもの。今まで舞台を見たことがない方は、『1万円以上は高いやん」と思うと思うんですけど、見た後に、「ああこれか、払うてよかった」と思っていただく自信があります。ぜひ、騙されたと思って見ていただければ。待ってまっせー(笑)」
岸谷「福くんが10代最後の芝居と言いましたが、私は50代最後の芝居です。今までは我々作り手の力が60%で、お客さんが40%で舞台は完成すると思っていました。でも、無観客でやったコロナ禍で、我々の力はおそらく30%だと気づきました。70%が観客の皆さんの力であることを学んだんです。今、その30%を手に入れるために必死で稽古をしています」
取材・文=米満ゆう子
Daiwa House Special
地球ゴージャス三十周年記念公演
『儚き光のラプソディ』
■作・演出
岸谷五朗
■出演
中川大志 風間俊介 鈴木福 三浦涼介 佐奈宏紀 保坂知寿
原田治 小林由佳 井出恵理子 杉山真梨佳 内木克洋
高木勇次朗 水原ゆき 精進一輝 高島洋樹
輝生かなで 東川歩未 尾関晃輔 栁原華奈
伊藤彩夏 千葉悠生 権田菜々子 清水錬
岸谷五朗 寺脇康文
▶▶オフィシャルサイト
|日時|2024/05/31(金)~2024/06/09(日)≪全11回≫
|会場|SkyシアターMBS
▶▶公演詳細
\関連記事はこちら/