2019/11/20
公演レポ
「ビッケブランカとして活動する中で転機になることはいつも関西で起こるんです。ラジオのヘビーローテーションアーティストに選ばれたり、初めてフェスに出演したり・・・。だから、今回のツアー初日は関西にしてもらいました。皆楽しみにしてたでしょ? でも僕の方が楽しみにしてたから!」
その宣言通り、彼の愛を全身で浴びるような夜だった。ビッケブランカにとって初の東名阪Zeppツアー「Vickeblanka Ca Va Tour」が10/19(土)Zepp Nambaからスタート。1曲目はツアータイトルにもなっている「Ca Va?」だ。つい口ずさみたくなるキャッチーなメロディーと、思わず体が揺れるビートに会場のボルテージは既に最高潮に。その後も間髪入れず「ファビュラス」、「アシカダンス」、「Want You Back」とアッパーチューンが続く。煌びやかなライトと回るミラーボールの下で、ビッケの合図ひとつで曲が展開。ひとたび手を叩けば会場をクラップの渦に巻き込み、歌詞を預ければ大合唱。ビッケの思いのまま、自由自在に客席がうねる。
流れを変えたのはこの日初披露の新曲だった。ビッケがステージ後方上部に作られたDJブースに立つ。濃霧のようにステージを包むスモークをレーザービームが赤く染めている。ダンスミュージックと言うにはあまりに壮大な、足元から這い上がるピアノの音色とエレクトロサウンド。ビッケブランカというアーティストを語るうえで「多様性」という言葉は欠かせないが、それが陳腐に感じてしまう程に、彼の中に広く深い音楽の海が広がっているのだと思い知らされる。観客が息を呑んだのを本人も感じていたようで、後のMCで「新曲、びっくりした?皆困った顔してたね」と少し心配そうな表情で笑いを誘った。
ビッケブランカのライブはとにかく無駄がない。息つく暇もなく曲が展開され、MCも短いものが数回あるのみ。そんな限られた時間の中でも伝わってくるのがビッケの関西愛だ。「エセ関西弁使ってると嫌われるで!って怒られたけど、そんなん関係あらへん!好っきゃねん!しゃーないやろ!」と謎の関西弁キャラも誕生。
後半は2人のヴァイオリニストを迎え、「まっしろ」、「Slave of Love」、「ウララ」などヒットチューンを連発。本編の最後を飾ったのは、なんと再び「Ca Va?」。1曲目ですっかり「Ca Va?」を“物にした”観客は、Aメロを丸々歌わされても怯むことはない。ヴァイオリンこそ加わったものの、曲自体に大幅なアレンジを加えなかったのは、観客の反応こそがアレンジになるということを知っていたからなのかもしれない。ビッケがまだまだ足りないとでも言うように “C-C-C-C-Cmon!”と煽る。この日、フロアはビッケの思いのまま。私たちはまんまとその日一番のボリュームと熱量で “Ca Va?”と声を上げてしまうのだった。
アンコールでは、これまで2回しかバンド全体で通しリハーサルをしていないという新曲「白熊」を初披露。「こんな探り探りやること、もうないからね!ある意味レアだから!」と前置きしながら、冬にぴったりのラブソングを聴かせてくれた。この日、2曲の新曲を完全初披露したビッケブランカ。拍手が鳴りやまぬ中、「これからも関西に縁近い年になると思います」と宣言し、ステージを後にした。彼の関西弁が例え“エセ”だったとして、これだけの愛を目の当たりにして、誰が咎められると言うのだろう。
TEXT:鷲野恭子(ヴエロ)
PHOTO:渡邉一生
FM802 RADIO CRAZY 2019
★12/25(水)出演決定!!
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