大阪のMBSテレビの人気落語番組「らくごのお時間」が昨年10月に放送10周年を迎えたのを記念して、4月29日に「らくごのお時間10周年落語会　噺家八景」が開かれる。会場は3月27日にJR大阪駅直結の高層ビル、JPタワー大阪の6階にオープンする新劇場「ＳｋｙシアターＭＢＳ」。番組案内役の福島暢啓MBSアナウンサーがこの公演を「噺家八景」と命名し、東京の立川談春、柳家花緑、上方の笑福亭鶴光、桂南光、月亭八光、笑福亭たま、月亭方正、桂二葉ら豪華メンバーが昼夜に分かれて競演。それぞれが「渾身の一席」を披露するという。たまと二葉に話を聞いた。

――この会はキャパ約1300人の新劇場のオープニングシリーズの一環で、この劇場では初めての落語会です。感想はいかがですか？

二葉「私が昼席のトップで、この劇場で初めてやるのが私ということで、本当に光栄やなと思いました」
たま「新劇場でやらしていただくのはありがたいことで、どんなお客さんが来るのかっていうのをマーケティングができてうれしいなと」
二葉「え？　そっち？　そっちの目線で！？(笑)」
たま「劇場によって、お客さんの質って違うんですよね。こんな大きい劇場に出る機会はなかなかないので、それは本当にありがたいことやと思っています」

――二葉さんは昼席、たまさんは夜席のトップでご出演です。出演者の方や昼夜の会の見どころを教えてください。

たま「僕はみなさんと共演したことがあります。夜席は南光師匠と談春師匠が強烈な大ネタをします。東京のすごい大ネタ『文七元結』、大阪のすごい大ネタ『らくだ』が聞ける。昼は花緑師匠が大ネタの『中村仲蔵』をされるので、トリの鶴光師匠は『最後は笑わす方がええやろ』と『竹の水仙』をされると聞きました。そこは“笑福亭”の感覚やと思います。八光さんは華のある落語家ですね」
二葉「私は花緑師匠と一緒になったことはないですし、鶴光師匠も初めてです。方正兄さんとは何度かご一緒してますが」
たま「鶴光師匠は早くに東京に行きはったからね。花緑師匠は華のある落語をしはります。鶴光師匠は東京の寄席にずっと出てはるので、めちゃくちゃ東京ナイズされた大阪落語になってはります。寄席は初めての人もいるし、ものすごい入れ替わりがあるから、速射砲みたいに時間分の笑いを求められるんです。だから、鶴光師匠は初めての人から好事家、よく落語を聞いている人まで楽しめるネタにしてはると思います。僕も何度か聞いてますけど、どんどん変わりますから！　鶴光師匠は」

――たまさんと二葉さんは、お互いどんなイメージですか？

二葉「たま兄さんは、とにかく上方落語のことをすごく考えてはるねんなというのと、常に分析してはる。一緒になった時はいろいろ教えてくれはるので、すごく勉強になります。兄さんは『30秒に1回の笑い』とかを考えてやってはります。私はそういうのを考えたことがないんで、そういうのも大事なんやなと思っています」
たま「二葉さんはみんなが応援したいと思わせる能力があるんだなと思います。若い時からそうで。今の新しい落語家の流れっていうのがあって、応援したいと思う落語家にお客さんが集まってるんですね。それは単純な外見とかじゃなくて、チャーミングというか、魅力というか。応援したいとお客さんが思う要素が落語家に必要なんだろうなと思います。二葉さんはその時代の、そういう新しい流れの走りの人なんだと思いますね」

――この会では、みなさんが事前にネタを発表する「ネタ出し」をされています。二葉さんは「つる」、たまさんは「源平盛衰記」ですね？

二葉「私はトップで落語をやる時、『つる』をよくやるんです。楽しい噺やというのと、初めてこの劇場で落語をやるということで、おめでたい方がいい。『つる』は特におめでたい噺じゃないんですけど、ネタの名前がめでたいというのもあって、それで選びました。あと、自信があります。特別、内容のある噺ではないんで、逆にやりがいがあるというか。『何とかせな！』みたいな気持ちにいつもなります(笑)。シンプルなんで、うけるのが難しい噺やと思うんですけど、そこが逆にすごくメラメラしますね。1回聞いたらみんなわかる噺ですが、それでも笑っていただきたいと思って。スリリングです(笑)」
たま「僕は、わかりやすくて笑いが多いのを選びました。このネタは、演者の地の語りで物語を展開させる地噺です。一人称でしゃべりやすい。アドリブっぽくしゃべっているだけで、アドリブではないです。ある程度、ここでこう言うっていうのは決まってる。大阪ではあまりやらないので出しました。ほかのネタとあまり重複しないので選んだことと、自分の色も出せてわかりやすいということかもしれません」

――この会の魅力を教えてください。

たま「東西の豪華メンバーが出演していてネタを出すことは、普通はないんですよ。今回は大ネタもあるし、いろんなネタが入っていて、初心者から落語ファンまで楽しめる番組になっています。メンバー的にもネタ的にも、終わった後でこの会を見たことを誰かに自慢できるような落語会です」

――最後にお客さんへのメッセージをお願いします。

二葉「会のトップの役割は重要なんで、盛りあげられるように精一杯頑張りたいと思います！」
たま「有名人も見られるし、面白い落語も聞けるので、初めての人もお越しになりやすいと思います。ぜひお越しください！」

TEXT：日高美恵

■出演・演目
【昼公演】
笑福亭鶴光「竹の水仙」
柳家花緑「中村仲蔵」
月亭方正「茗荷宿」
桂二葉「つる」

【夜公演】
桂南光「らくだ」
立川談春「文七元結」
月亭八光「住吉駕籠」
笑福亭たま「源平盛衰記」