詳細検索
  1. ホーム
  2. KEPオンライン
  3. 春蝶・一之輔のタッグがそれぞれの「推し」と開催する新企画!
詳細検索

KEP ONLINE Online Magazine

春蝶・一之輔のタッグがそれぞれの「推し」と開催する新企画!

2023/11/27

取材レポ

春蝶・一之輔の"春一番"

 東西を拠点に活躍し、大ネタや斬新な企画に次々と挑む一方、感動を呼ぶ自作の創作落語で新境地を拓く上方落語の桂春蝶。2012年に異例の21人抜きの抜擢で真打に昇進。寄席や独演会などで年間900席以上の高座に上がりながら、今年2月にテレビの人気演芸番組「笑点」の大喜利メンバーに加入して、全国区の人気を誇る東京落語の春風亭一之輔。華も実もあるこの2人がタッグを組んで、来年3月にそれぞれの「推し」の若手とともに4人会「春蝶・一之輔の春一番」を初開催する。春蝶と一之輔がこの会への思いを語った。

 この会は春蝶、一之輔の2人と、春蝶と同期で上方落語の次代を担うと目される実力派の桂吉弥との3人会「三人噺」のスピンオフ企画として生まれたものだ。「三人噺」はこれまでに大阪で2回開催された。「『三人噺』は毎回刺激的で、僕は結構緊張しぃなんでね、いい緊張感を与えてくださっているなぁと。(会では)自分の世界観をきっちりとわかっていただければいいなと思っています」と春蝶。関西でもひんぱんに独演会を開いている一之輔は「3人みんな忙しいですからね。その合間を縫って2回やって。大阪の僕の独演会によく来てくださるお客さん以外の方に来ていただくのは、すごく意義があるなと思っています。お二人の先輩方にも聞いていただけるというのは緊張感もあるし、僕の噺を聴いてほしいなと言うのもありますしね。そういう意味でも二人会、三人会はやって楽しいですね」と語る。

 春蝶は1994年、一之輔は2001年入門。芸歴も20年台となり、背中を追う後輩たちを意識しながら、自分の立ち位置を確立してきた。春蝶は「自分たちの土地をきっちりと作っている人たちの三人会とか二人会とかじゃないとなかなか成立しないでしょうから。自分の位置は『自分の芸』という意味だと思うんですけど、それをきっちり作っている人の会というのはやはりおもしろいですよね。その人たちが一緒にやると、全然違う色が見えて」と語り、一之輔は「後輩がすごくいい人が出てくるんですよね。そういう人と一緒にやったり、アドバイスとまではいかないまでも、こういう会をやったりとか。余計なお世話ですけどね。なるべく後輩の負担にならないように、でも一緒にできる会があればなぁと思いながら生きるようにしようと、最近思い始めましたね」と笑った。

 ここ数年の若手の成長は目覚ましい。今回はその中から2人がそれぞれ推薦した2名が登場する。春蝶は桂米朝一門で、芸歴7年の桂九ノ一(くのいち)を推した。春蝶の推しの理由は「リズムとか、声の出し方とかテンポとか、今の若手で一番いいんじゃないか」。九ノ一に一度会ったことがあると言う一之輔は「すごいでかい声の人ですよね? むやみに元気な。女の人かなと思ってたんですよ、最初。『くのいち』だから(笑)。楽屋に行ったら、こいつじゃないだろうって。でも勢いという意味では、ものすごいパワーのある落語をする人だなと。それで感心した覚えがあるんです」と印象を語った。一之輔の推しは妹弟子で、芸歴10年の春風亭一花(いちはな)。「決してボーイッシュとか、そういう感じじゃないんだけど、噺の中で、いい意味で女性を感じさせないというか。素材をちゃんと引き立たせるような、そんな料理人みたいな感じ。すごく周りからの評価が高くて。女性で落語の中の登場人物が自然にしゃべってるように話せるっていうのは結構珍しいと思って」と一之輔。「一花さん、今までに会った中で一番いい人やと思うんです」と語る春蝶は、「ちゃんと人の話を聞いてる。噺家って人の話を聞くのが下手なんですよ。だけど人の話を聞くのがうまくて、会話もうまくてとなった時に、そういう人が高座に上がったらすごくいいんだろうなと。一花さんを見てて勉強になる」と絶賛した。

 今後、東西の落語界を担っていく2人はお互いのこと、この会のことをどう思っているのだろうか。春蝶が「一之輔さんは、なんかこう自由に、時にふてぶてしく言っているようで、実はその時、人間が一番その空間の中で思っていることをズバッと言うのがうまい人。大衆が思ってる『本音の代弁者』という、そんな気がします。今回も毒舌なんだけど、実はみんなが思っていることを言い抜いている芸をマクラでも、落語の中でもしのばせていただきたいなと。袖で見るのを誰よりも楽しみにしています。それを期待しているので、よろしくお願いいたします」と語りかけると、一之輔は「僕は兄(あに)さんはすごいかっこいい人だと思ってるんです。見た目もしゅっとしてて。やる落語も自分の伝えたいことを熱く抽出して表現される方だなというのがある。今回も神戸の、まだ春になるのかならないのか、まだ寒(さむ)風がちょいと吹くような港町を瞬く間に春に変えていくような熱い高座を袖で聞けたらすごく楽しいな、嬉しいなと思っています。兄さん、よろしくお願いいたします!」と応えた。

 「ほかにも推薦したい若手がたくさんいます!」という2人。このスピンオフ企画がシリーズ化する可能性も大きいだろう。2023年秋にリニューアルオープンした神戸朝日ホールを舞台に、それぞれの個性がぶつかり合う「春一番」はまた、新しい風を巻き起こしそうだ。

取材・文=日高美恵

 

春蝶・一之輔の"春一番"

|日時|2024/03/09(土) 13:30 / 17:30
|会場|神戸朝日ホール
|出演|桂春蝶 / 春風亭一之輔
    桂九ノ一 / 春風亭一花

▶▶ 公演詳細
▶▶ オフィシャルサイト

一覧へ戻る