2023/9/24
取材レポ
「初演では大変な中でもたくさんのお客様に足を運んでいただき、制限をかけざるを得ない状況下で、エンターテインメントの力を今こそ出さなければという、覚悟を持っての開演でした。でも、コロナ禍できちんとできなかったという悔しさも少しあり。すごくいい作品でもありますし、お客様にもたくさん観ていただきたいなと思っていました。今回は思いっきりできますし、圭人もしっかりとした俳優になっていると感じたので非常に楽しみにしております。いい舞台をまたみなさんにお届け出来たら」
「僕自身も大好きな映画であり、亞門さんとは初めてで、プレッシャーよりも喜びの方が大きかったと思います。亞門さんの演出も非常に的確で、新たな一面を引き出してもらえる喜びを感じながら稽古させていただきました。舞台では、最初の登場からお客さんの揺れ動きのようなものを強く感じますね。物語が進んで行って、最後にボブ・ディランの曲で収まるところでも、お客様がすごくいい感じで揺れてるなぁと感じて、それはやっていてとても楽しいところではありましたね」
「それぞれの上演場所によってお客様の雰囲気はさまざまで、本当に違うんですけれども、大阪の方たちは演劇に対する文化が強くあって、皆さんの感情の高ぶりがこちらに伝染するような感じがありますね。非常に真剣にご覧いただき、喜んでいただけているという印象が強いです。情熱的なものが、ブロードウェイにちょっと近い感じがありますね」
「差別と偏見が残る70年代のアメリカですが、現代にも通じる愛の形や偏見と差別と闘う姿勢などを、このエンターテインメントを通して表現できることに舞台の新たな魅力を感じてもらえるかなと思います」
「台本と亞門さんの演出に忠実にやっていこうと思っていました。人間を表現するには素直さも必要だと感じていて、逆にドラァグクィーンの扮装をすることで徐々に自分の気持ちも高ぶりますし、その高ぶりを素直に出せたらと。ルディは本当に正直で、愛の人。その愛がいろいろな人に伝染していく。それゆえに感情がとてもよく動くんですよ。なので亞門さんにはその揺れ動きを強く求められました。『ここで泣き叫ぶ!』みたいな感じの部分は大変ではありますが、非常に納得出来る引き出し方をしていただき、亞門さんならではだなと思いました」
「ずっと岡本健一の息子として接していましたから、お父さんと同じように役者で生きていくということを聞いた時も驚きました。まさかこういう縁が生まれるとは自分でも思っていなかったんですが。何度か圭人の舞台を観て、本当にきちんと向かい合ってるという印象もありましたので、一俳優として敬意を持って接していきたいと思っています」
「今回、亞門さんが圭人用に少しアレンジを加えてくださいました。セリフ的にはルディとポールのバックグラウンドがより深くなっています。ルディの過去や、ポールはなぜドラァグクィーンのショーパブに来て、なぜ酔っぱらっていたのか、などを含め非常に深く描かれるようになりました。年齢差や男女、育った環境などを乗り越えていく芝居なので、圭人も同じような気持ちを持って取り組んでいると思います」
「オープニングですね。あのステージングは多分、皆さんにとって衝撃度がけっこう高いと思います。僕にとっても衝撃的で(笑)。ドレスにハイヒールの登場から、舞台の雰囲気が一気に変わって来ますので、オープニングのナンバーは非常に重要だと思っています。お客様が『ワァ!』と思ってくれたらうれしいです(笑)。ドラァグクィーンなので、いつもの踊りの表現とはまた少し違いますが、この世界観を楽しんでいただけたら。あとそしてマルコを演じる彼らが大変すばらしいです。」
「一番描きたかったのは“愛”です。“チョコレートドーナツ”は愛や希望の象徴になっていくと思いますが、悪い人のいない背景も含めて、是非、こんな家族の愛の形があるんだというところを観ていただき、何かを感じていただけたらうれしく思います」
取材・文/高橋晴代
撮影/藤田晃史
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
「チョコレートドーナツ」
■原作
トラヴィス・ファイン/ジョージ・アーサー・ブルーム
(トラヴィス・ファイン監督映画『チョコレートドーナツ(原題:ANY DAY NOW)』より)
■翻案・脚本・演出
宮本亜門
■訳詞
及川眠子
■出演
東山紀之
岡本圭人
八十田勇一 まりゑ 波岡一喜 綿引さやか 斉藤暁
大西多摩恵 エミ・エレオノーラ 矢野デイビット 穴沢裕介
丹下開登・鎗田雄大(ダブルキャスト)
高木勇次朗 シュート・チェン 棚橋麗音 小宮山稜介
山西惇 高畑淳子
|日時|2023/11/03(金・祝)~2023/11/05(日)≪全3回≫
|会場|豊中市立文化芸術センター 大ホール
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