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高杉真宙×藤野涼子『ロミオとジュリエット』開幕、「セリフを自分の言葉に」

2023/9/17

公演レポ

ロミオとジュリエット

高杉真宙と藤野涼子がタイトルロールの若きカップルを演じる『ロミオとジュリエット』が、9月13日に東京・有楽町よみうりホールで開幕した。これに先駆け、報道陣向けに公開されたゲネプロと囲み取材の様子をレポートする。

ウィリアム・シェイクスピアによる不朽の悲劇を、故・蜷川幸雄のもとで長らく演出補・演出助手を務めてきた井上尊晶の演出で立ち上げる本作。敵対する両家の子女を取り巻く人間模様を中心に、若い恋人によるたった5日間の短くも激しい恋路が描かれる。

ゲネプロ前に行われた会見には、ロミオ役の高杉、ジュリエット役の藤野、演出の井上による3人が登壇した。記者から「シェイクスピア作品へ挑むにあたって、どんな点に気をつけながら稽古に臨んだのか」と問われた高杉は「尊晶さんから頂戴した“言葉を信じることを大切に”という言葉を心に留めています」とコメント。藤野も「シェイクスピアは“好き”という感情を、何十行もの長ゼリフで表します。ひとつひとつのセリフを、自分なりにイメージを持って発することを意識しました」と続く。

難しいシーンについて聞かれると、藤野はジュリエットが一人バルコニーでロミオへの想いを溢れさせる有名なモノローグ(=おおロミオ、どうしてあなたはロミオなの?)について言及。「作品についてよく知らない方でも、セリフをご存知の方は多くいらっしゃるくらい有名なシーンなので……緊張します」と胸の内を明かし、「これまで多くの先輩がジュリエットを演じる中で、自分はどのように発するのか。ジュリエットのセリフを通じて、ロミオへの想いをしっかり表現できたら」と意気込む。同じシーンを挙げた高杉は「有名すぎるセリフに、最初は緊張してしまった」と話すも、「次第に自分の言葉として発することができるようになりました」と稽古の成果や手応えを口にした。

長年シェイクスピア劇の演出を手がける蜷川のアシスタントを務めた井上は、蜷川のもとで過去の『ロミオとジュリエット』上演版を経験してきた。その上で「この物語には、ロミオとジュリエットを取り巻く家族愛や友情などさまざまな“愛”が詰め込まれています。それらに支えられ、時に抗いながら、お互いを選び取って純粋な“愛”を全うする二人の姿をご覧いただけたら」と作品をアピール。高杉と藤野には「たくさんの壁にぶつかっていると思いますが、倒れたら私が助けます。傷つき転ぶことを恐れないで」とエールを贈った。

ゲネプロは、1幕(約100分)のみ公開された。冒頭ではモンタギュー家とキャピュレット家が激しくいがみ合う決闘シーンがスローモーションを交えながら繰り広げられ、これからロミオとジュリエットを待ち受ける“悲劇”を暗示させる幕開けとなった。二段構造の美術セットにてロミオをはじめ、ベンヴォーリオ(矢部昌暉)、マキューシオ(新原泰佑)、ティボルト(三浦獠太)ら両家の若者が縦横無尽に劇世界を駆け回るシーンも。

高杉ロミオの登場シーンは客席通路から。もの思いに沈みながら、淡々とした足取りでステージに進み出る。そこから舞踏会でジュリエットを見初めて感じる胸の高鳴り、彼女が敵対するキャピュレット家の娘と知った際の嘆きなど、高杉は表情を目まぐるしく転じながら恋に落ちたロミオをみずみずしく形にした。一方で、親友マキューシオをジュリエットの従兄弟ティボルトに殺された怒りを露わにする場面で見せた狂気は特に出色だ。高杉ロミオが変容していく姿を客席にてじっくりと味わってほしい。

対する藤野は、可憐な中に意志の強さを秘めたジュリエット像をにじませる。稽古中のインタビューや会見で「言葉を大事にしながら役と向き合っている」と話していた通り、ともすれば現代だと浮いてしまうシェイクスピア劇の長ゼリフを、ジュリエットの言葉として自然に聞かせる説得力があった。ロミオと気持ちを確かめ合い、手を取って口づけを交わす若々しいラブシーンが微笑ましく映る一方で、乳母(星田英利)との掛け合いで見せる少女性にも注目だ。

上演時間は約180分(15分休憩あり2幕)。東京公演は9月24日(日)まで。その後、10月末にかけて大阪、富山、愛知、福岡、宮城と巡演する。

取材・文:岡山朋代
撮影:岡千里

  

ロミオとジュリエット

■作
ウィリアム・シェイクスピア
■翻訳
松岡和子
■演出
井上尊晶

■出演
高杉真宙 藤野涼子 矢部昌暉 新原泰佑 三浦獠太 佐伯大地
皇希 田中亨 皆藤空良 菅彩美 木村咲哉 牧野彩季
松浦慎太郎 村井友映 井上百合子
冨樫真 廣田高志 一谷真由美 松澤一之 星田英利 石井愃一


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