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【インタビュー】音楽劇「浅草キッド」林遣都

2023/9/5

インタビュー

カンテレ開局65周年記念公演 音楽劇 浅草キッド

音楽劇で描くビートたけしの青春物語
林遣都が「重圧を力に変えて」挑む!

ビートたけしの青春時代を描いた自伝『浅草キッド』(講談社刊)を、林遣都の主演により音楽劇として初めて舞台化する。物語の舞台は昭和40年代後半から50年代。ビートたけし自らが原点と語る、浅草・フランス座で下積み生活を過ごした青春時代、芸人・ビートたけしの誕生と笑いにかけた周囲の芸人たちの生き様を描く物語だ。北野武を演じる林、そして青年・武の人生を決定づける師匠・深見千三郎役に山本耕史。ほかに松下優也、今野浩喜、稲葉友、森永悠希、紺野まひる、あめくみちこと多彩なキャストがそろう。脚本・演出は福原充則。昭和という時代の下町・浅草に生きる人々の心情を音楽劇として色濃く表現する。その福原の舞台に出演するのが念願だったという林が稽古中に来阪、作品の見どころや意気込みを語った。

【あらすじ】

ある夏の浅草。大学中退後、ふらふらと街をさまよう、まだ何者でもない青年・北野武は、流れ着いたストリップ小屋・フランス座で働くことになる。興行の責任者である深見千三郎師匠に弟子入りした武は、芸人仲間と苦楽を共にし、力強く生きるストリッパーや浅草の人々と交流しながら、芸の道で生きていく覚悟を決める。しかし修行を続けるうちに、武は時代の変化に逆らえず苦境に立たされ、ある決断を余儀なくされる。やがて、武が芸人として一世を風びする一方、師匠の深見は…。

【オファーを受けて】

オファーを受けたのは2年以上前。「とても驚きました。まさか自分に来ると思っていなかったですし、同時に自分でいいのかなと。やるからには覚悟を持って取り組まないと、と思いました。お話をいただいてから自分なりにたけしさんのことを知る作業というか、準備をゆっくり進めて来ました」。

【北野武を演じる重圧は】

記者から何度も北野武を演じることへのプレッシャーを聞かれ「重圧を感じる」と答えていた林だが「今はもう乗り越えている段階」と言う。「重圧はもちろんあるんですけど、それよりも今は、たけしさんをやれることの喜びや、今回ご一緒していただく山本耕史さんたちと、本番に向けて作っていける楽しさが上回っていて。今、重圧はすべて力に変えているという感じです」。

【芸人役は『火花』の経験を生かして】

林は2016年にドラマ『火花』で芸人を演じた。その経験を「生かせることはたくさんあると思っています」と話す。「『火花』は本職の芸人さんたちがたくさん出演されていて、その方たちに教えてもらったことがたくさんあるので、本当に恵まれていました。当時感じていた、芸人さんになることの難しさと必要な覚悟というものを、もう一度思い出してやりたいと思っています」。

【福原の脚本を読んで】

原作の小説を読んでから脚本を読んだ。「そのあと僕もいろいろなたけしさんの本や昔の映像を見ているうちに、たけしさんのことをずっと好きだった福原さんが、どれだけ敬意を持って脚本を書かれていたのか伝わって来て。たけしさんだけじゃなく、当時の浅草や当時活躍されていた芸人さんたちの固有名詞がたくさん出てくるんですよね。そこにすごく愛情と敬意を感じて、一つ一つの言葉を僕たちは大事に発していかなきゃいけないという思いになりました」。

【念願の福原との稽古が開始】

念願の福原充則との舞台。その稽古は「楽しくてたまらないですね。毎日、お昼前に集まって夜まで、時間が過ぎるのがあっという間で。自分が演出を受けることも、周りの方やスタッフの方と、福原さんがひとつひとつ積み上げていく過程を見れるのがすごく楽しい。演出もおもしろくて、なるほどなぁと思うことの連続です。福原さんの言葉を、その都度台本にメモしたりしています」。

【深見師匠役で共演する山本耕史の印象】

「みんな好きになっちゃう人というイメージですね。初めてお会いした瞬間から優しくて、かっこよくておもしろくて。みんなが居心地のいい空気を必ず作って下さる器の大きい方で、今回、師匠と弟子という関係性の役をやっていく上で、たけしと同じように僕自身が憧れの思いを持って演じることが出来るので、その役と気持ちが通ずる部分があるのかなと思っています」。

【役作りで目指すところ】

脚本の中で北野武は「若い頃に誰もが通る将来のことへの不安など、本当に何者でもなかった時期のことが描かれています」。そこから林は「テレビなどでのたけしさんからはなかなか見えてこない部分を探して、若い頃からあまり変わっていない部分もあるのでは、と感じています。例えば、シャイで繊細な方だと思いますが、間違いなく若い頃から肝が据わっているとか。生まれ育った環境やどんな学生時代をすごしていたかなど、本質の部分を探してそれを自分の中に落とし込めたらと思っています」。具体的にたけしのマネをするのではない。「僕はたけしさん役をやる上で、早い段階でマネしようと思うと遠のいてしまうなという思いを抱いていました。それよりも、なぜそのクセが生まれたのかといったところを自分の中で掘り下げて、自分なりにたどりついた答えで演じたいです。だから、見た目も声もかけ離れているけれど、なんとなくたけしさんが垣間見える瞬間があったり、若い頃ってきっとこうだったんじゃないかなと、お客さんに思わせるところを目指したいなと思っています」。

【音楽劇としての魅力】

ビートたけし作詞・作曲の名曲「浅草キッド」のほか、今作では福原と音楽・音楽監督の益田トッシュによるオリジナル楽曲を生演奏で贈る。「その音楽に浅草の登場人物の感情などを乗せています。曲によってはライブを楽しむ感覚でもいいのかなって思うぐらい」。タップダンスもある。「いよいよ振りがあがって来ていますが、なかなかの難易度のものをやるので、純粋にエンターテインメントとして楽しんでもらうために、本番までの期間、頑張りたいと思っています」。

【タップに歌にコントも】

「大変なことが山積みで、初めての経験や覚えることがたくさん待っているので、今の段階では頑張るしかないです。でも、自分自身が今回福原さんの脚本を読んで、トッシュさんの音楽を聴いて、RONxⅡ(ロンロン)先生のタップダンスを間近で見て、本当に感動したんです。それを全部自分に託されているので、自分が最初に曲や脚本に対して抱いた感情を、しっかりとお客さんにも感じていただけるように努めなきゃと思っています。そのためには全公演、第一に万全の状態で終えられるよう、日々気を付けて過ごしていきたいなと思います」。

【生の舞台で伝える、物語と当時の街の空気】

物語は北野武と深見千三郎を軸に「主にたけしさんに強く影響を与えた人をしっかり描く群像劇です。それと同時に福原さんは、浅草という街があったからこそ今のたけしさんがあり、どんな街だったからたけしさんは離れたというところを大事に描いていくと思います」。福原は昭和の時代の空気を、そこに生きる人たちを通して舞台上に表出するのが極めてうまい演出家だ。「僕のように当時を知らない人はこんな街があったんだなと感じたり、当時の時代を生きた方々には、どこか懐かしい匂いを感じたり。舞台だからこそお客さんに伝わってくるものがあるのでは。それから『浅草キッド』は、当時の人たちを描いている部分も強くて。アンサンブルのみなさんが本当に素敵で、当時の浅草のいろいろな役を演じられるんですが、一人一人に描きたいことがいっぱいあるようなおもしろい人たちが集まっていて、それを福原さんが大事に大事に登場させているんですね。そこにアンサンブルのみなさんが、一瞬の登場だったとしてもキャラクターが伝わるように色濃く作り込まれているので、そういう人たちが集結して、当時の浅草にしかない空気感が作り上げられていく。大阪の劇場は新歌舞伎座さんという意味がそこにあるというか。こういった時代背景の作品を描く上で、劇場の雰囲気がまた作品に力を添えてくれるんじゃないかなと思うので、何も考えずに来ていただいて、非現実を楽しんでもらえたらと思っています」。

【見どころは】

「福原さんは、例えばコントのシーンでも、劇場の雰囲気や、当時のお客さんとのやりとりが見られる劇中劇として描くと思います。コントの内容というより、今じゃなかなか見られないような光景。そんなところはすごく見応えがあるんじゃないかなと思います。そして、タップは…。これが出来たら、お客さんをびっくりさせられるんじゃないかなっていうものがあがって来ていて、覚悟を決めて最後まで頑張りたいと思っているので、タップを観るだけでも「来てよかった」と思ってもらえるようなものを目指したいなと思っています」。

【みなさんへのメッセージ】

「シンプルに、ワクワクウキウキして、『いい休日だったな』と思ってもらえるような舞台にしたいと思います。是非たくさんの方に観ていただきたいので、遊びに来てください」。

取材・文=高橋晴代
写真=ハヤシマコ

  

カンテレ開局65周年記念公演
音楽劇 浅草キッド

■原作
ビートたけし
■脚本・演出
福原充則
■音楽・音楽監督
益田トッシュ

■出演
林遣都 松下優也 今野浩喜 稲葉友 森永悠希
紺野まひる あめくみちこ / 山本耕史 他

大阪公演

|日時|2023/10/30(月)~2023/11/05(日)≪全8回≫
|会場|新歌舞伎座
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