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【ルーヴル美術館展】愛をテーマにルーヴル美術館の絵画が集結。

2023/8/31

公演レポ

ルーヴル美術館展 愛を描く

 フランス・パリを代表するルーヴル美術館。その膨大なコレクションの中から、様々な形の「愛」をテーマにした16世紀から19世紀半ばまでの73点の絵画が堪能できる。

 初めはフランソワ・ブーシェの巨大な絵画《アモルの標的》が迎えてくれる。結び付けたい相手の心臓に矢を放つ愛の神アモルの姿が微笑ましい。続くカヴァリエーレ・ダルピーノの≪楽園を追われるアダムとエバ≫では、神に背いて禁断の果実を食べ、楽園を追い出される二人が描かれる。エバのこうなることは分かっていたというような、どこか諦めた表情が印象的だ。

フランソワ・ブーシェ《アモルの標的》1758年
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Gérard Blot / distributed by AMF-DNPartcom

 展覧会は4章のテーマに分かれ、第1章の「愛の神のもとにー古代神話における欲望を描く」では、聖書やギリシア・ローマ神話などを題材にした作品から、恋や愛が生まれ、欲望へと変わり、死、別れが訪れる様々な場面を描いたドラマティックな絵画が並ぶ。

 第2章の「キリスト教の神のもとに」は、神への愛や親子愛、キリストの犠牲と聖人の殉教などを描いた作品群。放蕩の限りを尽くして帰館した聖書のたとえ話を描いたリオネッロ・スパーダの《放蕩息子の帰宅》では、息子をやさしく迎え入れる父親の姿が神々しい。それと対照的なのは、飲食を禁じられた獄中で刑の執行を待つ父親に、ひそかに自分の乳房を含ませて栄養を与える娘を描いたシャルル・メランの《ローマの慈愛》、または《キモンとペロ》だ。親と子が逆の行為をする、娘の何かに闘いを挑むような表情が静かに胸に残る。

シャルル・メラン《ローマの慈愛》、または《キモンとペロ》1628-1630年頃
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Tony Querrec / Martine Beck-Coppola / distributed by AMF-DNPartcom

 第3章の「人間のもとにー誘惑の時代」では、打って変わって農民から貴族までの恋の駆け引きを描いたエロティックな作品が集合。26年ぶりに来日した、フランスを代表する画家・ジャン=オノレ・フラゴナールの《かんぬき》は、西洋18世紀のエロティックな絵画の代表的な作品だという。男女がモダンダンスを踊っているワンシーンのようで、男性が扉にかんぬきをかけ、女性を誘惑するが、女性は身をそらし、喜んでいるようにも嫌がっているようにも見える。何ともその判断がつかなく、妖しさが光る。

ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》1777-1778年頃
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom

 最終章「19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇」では、ロミオとジュリエットの劇的なラストシーンや、思春期と両性具有などをモチーフにした作品が並ぶ。若い男性の死を悲しむ神アポロンを描いたクロード=マリー・デュビュッフの《アポロンとキュパリッソス》は同性愛、ダンテの「神曲」をモチーフにしたアリ・シェフェールの《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》は不義の愛を表現している。この二つは対照的に横に並べられ、タブーとされていたものの変容を感じた。多様な愛の在り方はいつの時代でも変わらない。愛とは何か?という本質的でシンプルな問いを深く追求した展覧会だ。

クロード=マリー・デュビュッフ《アポロンとキュパリッソス》1821年
アヴィニョン、カルヴェ美術館 © Avignon, musée Calvet

アリ・シェフェール《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》1855年
Photo © RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Michel Urtado / distributed by AMF-DNPartcom

取材・文 米満ゆう子

  

ルーヴル美術館展 愛を描く

|会期|2023/06/27(火)~2023/09/24(日)
|開館時間|10:00~18:00
        ※入館は閉場の60分前まで
|休館日|月曜日
       ※ただし、7/17、9/18は開館
|会場|京都市京セラ美術館

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▶▶オフィシャルサイト

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