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シルク・エロワーズ『サルーン』   日本公演開幕レポート

2019/11/1

取材レポ

シルク・エロワーズ「サルーン」

世界を驚かせた人気サーカス・エンターテインメント集団シルク・エロワーズが再来日!
サーカスと演劇と音楽を融合させた前代未聞の『サルーン』日本公演開幕

シルク・エロワーズは1993年、カナダ・モントリオールで結成。
アーティストたちの卓越したアクロバットと多彩な表現力を融合させたドラマティックなステージで、世界の観客を魅了するエンターテインメント集団。
これまで50か国、550都市、5500公演以上を上演し、350万人以上の動員記録を持つ。シルク・ドゥ・ソレイユと並び世界のサーカス・エンターテインメントをリードする存在だ。

日本での初公演は2013年。
ストリートダンスと3Dプロジェクションマッピングを駆使した『アイディー(iD)』を上演し、7万人以上を動員した。
今回『サルーン』で6年ぶりに待望の再来日が実現。

サルーンの扉を開ければ、そこはワイルドウエスト。

壮大なサーカスがダンス・ドラマ・音楽と融合し80分間ノンストップの西部開拓ツアーへと観客を誘う。劇場に足を踏み入れるだけで、ワクワクと胸をときめかせる世界が待っているのだ。

サルーンとは、19世紀のアメリカ・西部開拓時代に営まれた酒場のこと。『サルーン』のステージには観客を感動させるのに必要なものがすべてそろっている。空中で、地上でハラハラドキドキを誘発するアクロバット、人目を引くコスチューム、魅力的でキャラクター豊かなパフォーマーたち、そして生演奏。シルク・エロワーズとしては生演奏での上演は初めてのことだが、『サルーン』の全編で奏でられるのは、ウエスタンミュージック。ギターやバイオリン、バンジョー、ピアノなどで演奏され、シーンやストーリーに合わせてある時はエネルギッシュに、またある時は陽気に、ロマンティックに……とバラエティに富んだ音楽を楽しめる。初めて耳にする曲であっても、どこか懐かしい香りのするウエスタンミュージックで、西部のサルーンの雰囲気は否が応でも盛り上がってくる。

巧妙に仕立てられた2階建てのセットは、サルーン・バーの内部から鉄道へ、そして西部の町のファサードへ。サウンドやライティングをブレンドして舞台が転換していく様はダイナミックで、まるで映画のシーンが目の前で繰り広げられているよう。

ここで描かれるのは新しい鉄道の建設からロマンス、劇的な追跡シーン、決闘まで。言葉がなくてもストーリーはダイレクトに伝わってくるのは、シアトリカルなパフォーマンスが多くのことを物語っているからだろう。

ストーリーの流れの中で演じられるアクロバットは息つく暇もないほどスリリング。

最初に繰り広げられるのは、チャイニーズポール。開拓者たちが集うサルーンで、二人の男がステージの天井まで繋がる一本のポールを上下自在に行き来し、時には天井の高さから地上スレスレまで一気に滑り降りる。重力に逆らっているとしか思えない技の数々に、のっけから圧倒される。

サルーンに現れた男が手にした酒瓶を放り投げて行う、ジャグリング。高い位置から投げ下ろされた酒瓶を巧みに受け取りながら、同時に4本、6本と扱う本数を増やしていく。酒瓶がまるで命を吹き込まれたかのように躍動する美技の連続に、客席は言いようのない高揚感に包まれる。

サルーンの女と開拓者の男が出会えば、恋に落ちるのは必然。ハンド・トゥ・ハンドは人間が演じる最高の肉体芸術だ。男は女を軽々とハンドアップし、持ち上げる。完璧なバランス感覚と柔軟性と集中力で「人間の肉体はこんなことができるのか!?」とという技が次々と繰り広げられる。アクロバティックな動きから、男女の心の駆け引きがありありと伝わってくるのは、演劇とサーカスを融合させたシルク・エロワーズならではのこと。

そして、シル・ホイール。シルク・エロワーズの創設者の1人であるダニエル・シルのオリジナル演目で、1本のホイール(人間の背丈ほどの大きさの輪)を自在に操り、乗りこなす。様々なスピードや角度でアクロバットが次々に変化する様はうっとりするほど美しく、躍動的だ。

さらにはガンマンのコミカルなパントマイム、カーテン越しに見せるラブシーン、ピアノといくつかの箱を使って魔法のように列車を出現させる様など、様々な見せ場が次々に出現。一瞬たりとも飽きる暇はない。

カーテンコールでは興奮が頂点に達した観客から手拍子が湧き起こり、ステージと客席が一体化。歓声に応えて、パフォーマーたちが飛び切りの笑顔を見せた。『サルーン』はまさにミュージカル・サーカス。どんな精巧なバーチャルリアリティでも叶わない迫力は、生身の人間が演じるからこそ。鍛え上げられた肉体が生み出すドラマを、ぜひ体感してほしい。

                                    取材・文/大原 薫

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