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KEP ONLINE Online Magazine

『GYPSY』主演の大竹しのぶ
「今しかできない役に巡り合える幸せ」

2023/1/27

インタビュー

Musical『GYPSY』

実在のストリッパー、ジプシー・ローズ・リーの回顧録を元に、“究極のショー・ビジネス・マザー“の代名詞となった母・ローズに焦点を当て、舞台で活躍する2人の娘を育てたローズの夢と努力と、ショービジネスの苦難を愛情たっぷりに描いた名作ミュージカル『GYPSY』。『ピアフ』で第44回菊田一夫演劇賞を、『フェードル』『欲望という名の電車』で第52回紀伊國屋演劇賞 個人賞を受賞するなど、名実ともに日本を代表する大女優、大竹しのぶが、娘をスターにすることを夢見る母親・ローズをコミカルに演じる。本作への思いを聞いた。

――まず、ミュージカルだからこそ観客に響かせられること、表現できる感情というものはありますか?

「私は、基本的にはミュージカルもストレートプレイも変わらないと思っているんですね。音楽が芝居に付け加わっただけで。基本的にはそうなんですけども、音楽の偉大な力を借りることによって、より一層エネルギーとかが伝わりやすくなって、演じる方も、観る方も、またちょっと違う感動がありますね。」

――『GYPSY』は海外で長年、演じられているミュージカルですね。

「とにかく歌をちゃんと歌えるようにしなくちゃって。挑戦することって本当に限りなくあるんだなと思うし、芝居のエネルギーをちゃんと音楽に乗せて。声量も音程もリズムもちゃんと歌わないと伝わらないので、これは基本的なことですが、歌をきちんと伝えたいというのが今の大きな目標です。」

――歌詞は日本語訳ですが、元は英語で歌うものとして作れています。

「そうです、そうです。(スティーヴン・ソンドハイム作詞作曲の)『スウィーニー・トッド』のときは、演出の宮本亜門さんが訳もいっぱい、稽古場でギリギリまで一緒に考えてくれたんですけど、今度はイギリスの演出家なので、日本語がわからないからどうしようと思って、そこはちょっと心配ではありますけど…。」

――そういう意味でも挑戦ですね。

「頑張らなくちゃ。どうしよう…。」

――今の心境は?

「「どうしよう」って口で言いながらワクワクしてます(笑)。」

――演じられるローズ役はコミカルな人物だそうですね。

「『GYPSY』は、ショービジネスといっても、ボードビルのショーをする小さな劇場を転々と回って生計を立てていて。ローズは3回結婚したけど自分のパートナーは逃げちゃったし、とにかく娘をスターにすることだけを夢見てるお母さん。娘に対しても「いつかあなたはビッグスターになるのよ」って夢見てる人です。で、下の娘は「もうこんな生活はいやだ」と逃げてしまい、上の娘もどんどん自立して。ローズ自身、「自分に何が残ってるの?」みたいな話でというストーリーで、悲しい部分もあるんですけど、でもとにかくすごいエネルギッシュで、まぁ勝手な母親です。そのあたりがコミカルに描かれていて。歌とかとっても素敵で、ショーの時間も何回もあって、本当に楽しい作品です。元気になるし、ミュージカルって楽しいなって思ってもらえたらいいなと思う。いつもあまりミュージカルは…という人にも、是非来て頂けたら嬉しいなと思います。」

――大竹さんはいろんな女性を演じられていますが、このローズにはどんなことを感じられますか。

「ローズはアクシデントやつらいこと、悲しいことがあっても、一つの目標に向かって生きようとすることに凄くエネルギーがあって、涙とか流してる場合じゃないっていうか。涙が頬をつたっていたとしても、「やるぞー!」って叫んでいるような女の人なので、とにかく強いパワーを持って演じたいです。有名な「Some People」という楽曲、みんなは普通に編み物して、ビンゴゲームしてればいいじゃない。でも私は違う。「I have Dream♪」と、「夢を持って生きていきたいんだ」という素敵な歌があって。ドッグフードを食べるような、どんなひどい状況でも、「私はやるのよ!」っていうエネルギーに溢れている女性を精一杯楽しみたいと思います。」

――そういう女性の役を演じられるときは、どのような感じで役に向かっていくのでしょうか。

「『ピアフ』のときもそうなんですけど、どっちかっていうと私はか弱い役はあまりなくて、強い役が多いんです。私自身もやはり強いものを持っているんだろうなと思うのですけれども、その強さを役にもらえることもすごくありますね。ピアフのような役をやると、精神的な強さとかを感じる一方で、逆に脆さもわかるし。ローズは半端ないエネルギーの持ち主かなって思うから、お客さんが「わおー!」って言うぐらい、エネルギーをまき散らしたい(笑)。「甘っちょろいこと言ってんじゃないのよ!生きるんだ!」みたいなミュージカルにしたいなって思います。」

――「いくつになっても挑戦できるというのは幸せなこと」と本作のプレスリリースでコメントされていました。今は人生100年時代と言われていますが、これから先、どのような展望を持っていらっしゃいますか?

「展望とかまったくないですね…(笑)。目の前のことをこなすだけで精いっぱいな毎日かな。それは別に忙しすぎるっていうことじゃないけど、時間がどんどん過ぎちゃいます。展望…。考えないといけないですね、展望。あんまり先のことは考えていないのですが、今しかできないことをやれていることにすごく感謝しています。『GYPSY』を10年後にやれるかといったらやれないし、『ピアフ』もやれるとは限らない。『女の一生』の布引けい役はまだ20年ぐらいはできるかもしれないけど(笑)、そういう今しかできない役に巡り合える幸せに、すごく感謝したいなと思います。 一日一日で精一杯です。」

取材・文=岩本和子
写真=西木義和

Musical『GYPSY』

■出演
大竹しのぶ、生田絵梨花、熊谷彩春、
佐々木大光(7 MEN 侍/ジャニーズ Jr.)、今井清隆

鳥居かほり 麻生かほ里 咲良
石田圭祐 泉拓真 安福毅

出津玲奈 岩崎ルリ子 江村美咲 砂塚健斗 高瀬育海 山田裕美子 横田剛基

大久保実生 久住星空 古閑暁奈 酒井希愛 中村環菜 三浦あかり
入内島悠平 占部智輝 黒岩竜乃介 櫻井碧人 立花優愛 鳴海竜明 前田晴秋 涌澤昊生

■脚本
アーサー・ローレンツ
■演出
クリストファー・ラスコム
■作詞
スティーヴン・ソンドハイム
■作曲
ジュール・スタイン
 

大阪公演

|日時|2023/05/04(木・祝)~2023/05/07(日)≪全6回≫
|会場|森ノ宮ピロティホール
▶▶ 公演詳細
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