2023/3/4
公演レポ
「2022年11月に愛知県の「愛・地球博記念公園」内に開園したジブリパークは、テーマパークやアミューズメントスペースとは違い、元々ある公園をより魅力的にするために、その中で何を作るか？がポイントなんです。すべての楽しみが用意されているのではなく、イメージする力や、新しい物を生み出す好奇心、能動的になれるかどうかを大切にしたいんですね」。そう話すのは、「ジブリパークとジブリ展」熊本会場の開会式に出席した、株式会社スタジオジブリ執行役員 社長室長の橋田真さん。
その言葉通り、全国巡回中の「ジブリパークとジブリ展」は、ジブリパークの制作現場を指揮する宮崎吾朗監督が、ジブリパークをどのように構想し、形にしたのかを、数々の貴重な制作資料や試作品と共に紹介することで、ジブリパーク誕生の舞台裏に迫る展覧会となっている。
ジブリパークは、公園の地形を生かして建てられた建物や、かつて室内プールだった施設の中にある「ジブリの大倉庫」など、作品の世界を自分の足で歩き、おもしろさや秘密を発見する場所。展覧会には、ジブリパークができあがる過程のイメージスケッチや建築模型が並べられ、中には吾朗監督が細かく赤入れをしたものも。元々、公園緑地などの設計に携わっていたという吾朗監督が、ジブリパークの制作において“何を目指したのか”を、垣間見ることができる。また、「青春の丘」に建つ、映画『耳をすませば』の地球屋の棟飾りや、地球屋の店内に並ぶからくり時計、そしてバロンとルイーゼを制作する過程の模型なども公開されており、もの作りにおける職人の技術のすごさは、ここでしか見られない貴重な内容だ。
さらに、2024年3月、第2期開園予定の「魔女の谷」に登場する、映画『ハウルの動く城』のハウルの城の模型も展示されているので、“本当に入ることができる”お城の完成を想像するのも楽しい。興味深いのは、建物に対する風の影響などを検証する「風洞実験模型」も展示されている点。「実は、建築的な視点からも楽しめる内容になっているんです」（橋田さん）とのことだけに、この展覧会には幅広い楽しみ方がありそう。
今回の展覧会では、吾朗監督が手掛けた「三鷹の森ジブリ美術館」、映画『ゲド戦記』『コクリコ坂から』『アーヤと魔女』などの制作過程にもスポットが当てられており、過去に「三鷹の森ジブリ美術館」で開催された企画展示「アーヤと魔女展」の再現展示も展開される。2Dセルアニメーションと3DCGアニメーションの制作工程の違いや、キャラクターを動かす仕組みなどを、吾朗監督が自ら解説。パネルや動画、セットなどを用いて、「ここまで見れるの?」と思うほど、その過程が丁寧に紐解かれていく。実際に触れたり、覗いたりできるのもポイントで、「ジブリ作品の根底にあるのは、子供たちにいっぱい楽しんでもらいたいという想い。今回の展覧会の中には難しいと感じるものもあるかもしれませんが、「アーヤと魔女展」の再現を見て、ひとりでもいいから、アニメーターになろう！と思ったり、CGに興味を持つ子供がいたら嬉しいですね。子供は感性が鋭いので、何か感じてもらえる部分も多いのではないかと思います」（橋田さん）と、もの作りのおもしろさを発見する楽しさが散りばめられている。
その他にも、2005年開催の「愛・地球博」の際に本当に住める家として建てられ、ジブリパークの「どんどこ森」で公開されているサツキとメイの家が、1/5サイズで再現されている展示も。1/5スケールとはいえ実に精巧で、ついつい中を覗き込みたくなる。実際に使用されていたパーゴラ（格子状の日除け棚、書斎のテラスに設置）や、家の中の写真もあわせて公開されている。
展覧会場には、ジブリパークの「ジブリの大倉庫」にある注目展示も再現される。映画『千と千尋の神隠し』の湯婆婆が仕事に没頭する姿を見られる「にせの館長室」の展覧会特別バージョンや、「ジブリのなりきり名場面展」から、『千と千尋の神隠し』の、あの海上を走る不思議な電車のシーンが目の前に現れる。
そして、“体験”で忘れてはいけないのが、映画『となりのトトロ』でお馴染みのネコバス。子供から大人まで実際に乗ることができ、アニメさながらふっかふかの座り心地を味わうことができる。本展の入り口では、トトロがお出迎えしてくれるのもたまらない。
まだまだ見どころいっぱいの、ジブリパーク誕生までの“秘密”が詰まった展覧会「ジブリパークとジブリ展」。兵庫会場の開幕となる4月15日を楽しみに、ゆっくり待ちましょう。
