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三宅健×いのうえひでのりが語る
真っすぐな関西弁の昭和のオセロ

2023/1/20

インタビュー

2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演 Shinkansen faces Shakespeare 『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』

関西の港町を舞台に、シェイクスピアの「オセロー」を翻案し2011年に初演された劇団☆新感線の『港町純情オセロ』が、新しくなって帰ってくる。『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』とタイトルを改め、オセロ役には劇団☆新感線に初登場の三宅健を迎える。戦後の高度成長期を背景に、ブラジル人の血を引くヤクザの若頭オセロ(三宅)は、町の医者の娘モナ(松井玲奈)と恋に落ち、堅気になる決心をするが、オセロを二代目組長にするつもりだった先代組長の未亡人アイ子(高田聖子)の恨みを買い、罠にはまっていくという物語。三宅と演出のいのうえひでのりが会見で語ったこととは?

――三宅さんは劇団☆新感線に今回初参加です。

三宅「新感線の公演を何度も見てきましたし、いつかは出てみたいと思っていたので、オファーをいただいて率直に嬉しかったです。いのうえさんとは劇場でよくお会いしていたんですが、散歩している時に道端でメタルTシャツを着て帽子を目深にかぶった人をよく見かけるなと思っていたら、いのうえさんで(笑)。僕のお芝居もよく見にきてくださり、いつかご一緒できたらなと思っていました。」

――いのうえさん、今作について聞かせてください。

いのうえ「戦前・戦中だった初演の時代設定を、戦後の昭和50年代、60年代に置き換えて、ヤクザたちの抗争として描きます。前回はオセロ役の橋本じゅん君と、イアーゴ役の田中哲司君との男同士の騙し合い、はめ合いだったんですが、今回はイアーゴ的なポジションを女の高田聖子さんにしている。そこが最大の見せ場で売りです。彼女にはめられるんなら真っすぐな男がいいなと、三宅君にお願いしたんです。」

――オセロはヤクザの若頭ですが、これまでの三宅さんのイメージとは異なるのでは?

三宅「とても純情で真っすぐすぎるがゆえに暴走も過ぎる。ドンドンアイ子に騙されて、乗せられて、変な想像を膨らませてよからぬ方向に進んでいく。そんなキャラクターはやったことがないので、楽しみながら思いっきり演じたいですね。」

――ご自身と共通するところは?

三宅「わりと僕自身も真っすぐなタイプの人間なので、通ずるところはあると思います。自分で言うのも何ですけど、純粋なんで(笑)。」

いのうえ「本当に三宅君は真っすぐなんですよ。オセロは真っすぐゆえに嫉妬も深い。めちゃくちゃやな、もうちょっと冷静になれよっていう風に見えるんですけど、真っすぐすぎるからそうなったんやと。きちんとした恋愛や人の愛し方を知らなかったからこうなったという悲劇ですが、恋をしている人って、周りから見たら滑稽じゃないですか(笑)。そこが真っすぐな三宅君の笑えるところになればいいなと。また、がっつりシェイクスピアの翻案で、高田さんをはじめうちの女優さんたちと三宅君がからむお芝居。セリフ劇なので、そこは今までの新感線作品とはちょっと違う。オセロならではの魅力になるんじゃないかなと思いますね。」

――かなりコテコテのガラの悪い関西弁が出てきます。

三宅「僕は関西弁をしゃべったことがないので、しゃべれるようになったらいいなと。一カ月ぐらい使いこなせば何とかなりますかね?頑張ります。また、関西弁でシェイクスピアをやれば、その土地の風土を感じることができて、普通にシェイクスピアをやるよりも見えてくるものがあるんじゃないかなと思っています。」

――いのうえさんは、シェイクスピア作品を翻案した様々な舞台を演出していますが、見えてきたものはありますか?

いのうえ「シェイクスピアの作品は話そのものは単純じゃないけど、基本があるんですよ。セリフ回しや登場人物の名前、背景、国の名前とか。例えば「リチャード三世」だったら、土地の名前や何何公、三世四世とあったりして、そこが大きなハードルになるんです。シェイクスピアはすべてがすべて傑作だとは思わないけど、面白いものはやっぱりすごく面白い。それにできるだけ色んな人に触れてほしい。青木豪君の書いた『港町純情オセロ』は初演で手ごたえがあったし、標準語でやるよりも関西弁のほうが笑えて泣ける空気になると思うんですよね。」

――三宅さんはシェイクスピア作品は初めてだそうですね。

三宅「オセロは蜷川幸雄さん演出で、吉田鋼太郎さんがオセロをされていた屈強な男というイメージがあったので、「線が細い僕で勤まるんですか?」といのうえさんに聞いたんです。「設定自体が大きく変わるので、全くそこは心配しなくていいよ」と言っていただいて。シェイクスピア作品はこういう役者がやらなきゃいけないと決まっているものではないし、各々の役者がやるオセロであり、今回も新しい作品として面白いものができたら。これまでシェイクスピアに触れたことがない観客にとっても、すごく入りやすいんじゃないかなと台本を読んで思いましたね。」

――歌って踊るシーンはありますか。

いのうえ「ポイントポイントで歌や踊りは、はまってくると思いますが、それが売りの芝居ではない。どちらかというと会話劇ですね。今回の楽曲はアメリカ文化が流れ込んで、ロカビリーが流行しだしたころのイメージです。日本の歌謡曲でいうとザ・ピーナッツですね。今、洋楽やレトロ回帰があるので、そこにうまくリンクできたらと思います。」

――最後に大阪公演に向けて、思いを聞かせてください。

いのうえ「初演の時は3.11の直後で、いつも千秋楽では煎餅を撒くんですけど、宮城県の笹かまぼこの工場を支援するために〝笹かま〟を配ったという思い出があります。装いも新たに大阪でやるのは、あの時の思いも蘇る。また、今回は高度成長期で夢がいっぱいあって、石原裕次郎さん、浅丘ルリ子さん、吉永小百合さんらが純愛やロマンティックな作品に出ていた、夢があった時代にかぶせているんですよ。昔の元気だったころの日本に対するラブレター。そういう思いを作品に乗せて伝えたいなと思います。」

三宅「関西人じゃない自分が関西弁をしゃべることに不安はあるんですけど、大阪公演に向けて体になじませて、関西弁を学びたい。日々、関西弁をしゃべれるようにしたいと思います。」

いのうえ「日常会話ね(笑)。」

三宅「日常会話になるように、関西の人に電話しまくる。すでにトミーズの雅さんや鶴瓶さんに電話をしたんです(笑)。しつこく関西弁を学び、体になじませて、何も考えずに役として舞台に立てるようにしたいですね。あとは、大阪のおいしいご飯を期間中に食べつくしたいと思います。」

取材・文 米満ゆう子

2023年劇団☆新感線43周年興行・春公演Shinkansen faces Shakespeare
『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』

■出演
三宅 健
松井玲奈 粟根まこと 寺西拓人
右近健一 河野まさと 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ
礒野慎吾 中谷さとみ 保坂エマ 村木 仁 川原正嗣 武田浩二
藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平 下島一成
岸波紗世子 髙橋優香 工藤頌子 毛利アンナ可奈子
高田聖子

■原作
ウィリアム・シェイクスピア(松岡和子翻訳版「オセロー」ちくま文庫より)
■作
青木 豪
■演出
いのうえひでのり
 

大阪公演

|日時|2023/04/13(木)~2023/05/01(月)≪全19回≫
|会場|COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
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