2022/10/12
インタビュー
――松尾スズキさんの新作は『フリムンシスターズ』(2020年)以来のご出演となりますが、台本を読まれての感想は?
「松尾さんの作品は、これまで『キレイ』のように想像上の国で戦争が出てくることはあっても、こういう時代設定もきちんとしたなかで戦争が出てくるのは珍しいなと思いました。時代に沿ったことも書かれているし、今、実際に戦争が世界で起こっているので、戦争を描いていくべきだという思いがあるんでしょうね。僕も歳を重ねてきて、そんな風に思うようになりました。また、演出的に舞台をどうやって使うのか想像できない台本なので、稽古でその謎が解けていくのが楽しみです」
――阿部さんが演じられる小説家、ツダマンこと津田万治役について、松尾さんは「不気味な空洞のような人物」とコメントされていますがいかがですか。
「何を考えているのかわからないから、不気味なんでしょうね。昔の有名な小説家ってちょっと変わった人というイメージがあるじゃないですか。今でいうコンプライアンス的に出来ないことをやっていたような。それの代表みたいな役です(笑)。複雑な生い立ちがあり、人に振り回され、小説家として箔が欲しいけど、賞なんてとれそうもない本を書いている人。昭和の文豪って苦悩しているイメージがありますが、彼も弱いところがあって、嫉妬するし女々しいところがあり、そのあたりが面白いです。小説家役は初めてなので、話し方からどうやっていこうかと…。とりあえず、登場シーンは着物姿にメガネと髭、と書かれていて、ちらしのイラストのイメージがすごくあると思います」
――間宮祥太朗さん演じる弟子の長谷川葉蔵に翻弄される役どころのようですが、間宮さんとは初共演なのですね。
「間宮さんは観ていて好きな役者で、一緒に芝居をやりたいなと思っていたので楽しみです。僕の役にとって葉蔵役がキーになるので、どんな風に関わっていくことになるのか。この物語は人間関係がすごく密で、いろいろなところで人物が重なり合うのが面白いです」
――改めて松尾スズキさんの作品の魅力とは?
「人間の表に出ていない嫌なところなどが見え隠れし、それが笑いに変換されるのが面白いなと思います。そして、すごく“和”な感じがしますね。『フリムンシスターズ』も新宿や沖縄の話でしたし、日本の物語が多いですよね。今回も歌や踊りがあるけど、それらもより“和”に寄っています。また、『フリムンシスターズ』でも生きている人、死んでいる人というのがありましたけど、松尾さんは昔から“生と死”というのを結構扱っていて、そこの見せ方も今回工夫されるんだろうなと思います。松尾さん、もともと美術的にも長けた人だし、最近演出がどんどん面白くなっている気がします。演劇用語をよく使うし、ますます“演劇の人”という感じがして、僕が言うのもなんですが、舞台が好きなんでしょうね(笑)」
――今回は松尾さんが初めて全編の作曲を手がけられるそうですね。
「作曲までやるなんて格好いい!と思いました。昔から鼻歌を起こしてもらうことはあったけど、松尾さんの音階があるから、台本上の詞にその音階が乗るのが楽しみです」
――松尾さんの書かれる言葉については、どんな魅力を感じますか?
「詩的な言葉は、いつも喋っていて面白いな~と思います。うらやみというのか、『そんなこと考えたりするよね』という嫌な部分、弱い部分が見えてくる。台本を一度読んだだけでは、『なんでそんなところで奇声を発するの?』とかわからない部分は結構あるけど(笑)、今回の台本もさすがだなと思いました」
――松尾さんとの稽古場で、心掛けていることがあれば教えてください。
「松尾さんの理想に近づくことです。いつか空を飛べるようになりたいと思うけど…、松尾さんは『そこ、飛べ。天井駆け上がって』とか言うんですよ。そうなれたらいいなと思いながら演っても、飛ぶのは無理なんですけど(苦笑)。でもそうやって理想に近づきたい、面白くなりたいと思います」
取材・文=小野寺亜紀
写真=藤田亜弓
受付期間:10/12(水)12:00~10/23(日)23:59
受付席種:S席
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COCOON PRODUCTION 2022
『ツダマンの世界』
■作・演出
松尾スズキ
■出演
阿部サダヲ、間宮祥太朗、江口のりこ、村杉蝉之介、笠松はる、見上愛、
町田水城、井上尚、青山祥子、中井千聖、八木光太郎、橋本隆佑、河井克夫、
皆川猿時、吉田羊
|日時|2022/12/23(金)~2022/12/29(木)≪全8回≫
|会場|ロームシアター京都 メインホール
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