松尾スズキの世界に飛び込み
「予測のつかなさを楽しんでいきたい」

　近年、主演映画『破戒』やドラマ『魔法のリノベ』など映像で頼もしい活躍を見せる間宮祥太朗が、6年ぶりに舞台に出演。松尾スズキの2年ぶりとなる新作『ツダマンの世界』で、阿部サダヲ扮する小説家のツダマンこと津田万治に弟子入りする長谷川葉蔵役として、濃密な愛憎劇に挑む。松尾が監督した映画『恋の門』のファンでもあるという間宮が、松尾ワールドでどんな芝居を見せるのか。稽古期間に入る前、率直な思いを語ってくれた。

「久しぶりの舞台が松尾スズキさんの作品というのは嬉しいです。『ナイスガイ in ニューヨーク』（2016年）以来の舞台出演で、少し怖さもありますが、松尾さんが『コメディーの部分もあるから、稽古場では和気あいあいと楽しくできたら』というお話をされていたので、気負い過ぎずリラックスして臨めたらと思います」

物語の舞台は昭和初期から戦後の日本、女中・オシダホキ（江口のりこ）の語りで綴られていく。津田万治（阿部）は、神林房枝（笠松はる）という愛人の存在がありながら、万治の幼なじみ・大名狂児（皆川猿時）の薦めで戦争未亡人の数（吉田羊）との結婚話が進んでいる。地味に小説を書き続ける万治のもとへ、弟子になりたいとやって来るのが佐賀の豪商の三男坊、長谷川葉蔵（間宮）だ。お坊ちゃんの彼には、世話係の番頭・強張一三（村杉蝉之介）がついていて、葉蔵と関係を持とうとする謎の文学少女・兼持栄恵（見上愛）まで現れる。

「葉蔵は物語をかき回す役だなと思いました。みんなそれぞれ愛憎を抱き、ナルシシズムや思惑がある。そのなかでツダマンという主人公が振り回されていくのですが、みんな一生懸命生きているだけで、お客さん側からはそれが滑稽に見えるんだろうなと。松尾さんが描く人物は求心力があり、今回の作品も変わった登場人物ばかりで、いろんな矢印が交差し、絡まっていくさまが面白いです」

松尾からは稽古に入る前、心中を繰り返した昭和の文豪、太宰治に関する本を参考のために読んでおいて、と言われたという。「『全部を（役に）投影しているわけではないけれど、葉蔵の感じをつかむために…』と言われました。小説だけではなく、太宰治の行いとか面白みを役に引っ張って、エッセンスとして交ぜていけたらいいなと思います。あと『僕と宮藤（官九郎）との関係もね』というお話もあって、なんだかなるほど！と思いました」

ユニークな師弟関係が見どころとなりそうだが、“師”を演じる阿部サダヲとは初共演。実は10代のときに、阿部がボーカルを務めるバンド「グループ魂」のライブに何回か行ったことがあるという。「『君にジュースを買ってあげる♥』が、12、13歳の頃にめちゃくちゃ流行ってて、もう衝撃的でした。もちろん今は役者の先輩として尊敬しています。共演は楽しみな部分があると同時に、役者としての阿部さんの底知れなさと対峙する怖さがあります。阿部さんって、どういう方なのかイメージできない不思議なところがありますよね」

まさにツダマン自身、何を考えているのかわからないところがあるというキャラクターのようで、「ツダマンとの関係性が面白くなればいいなと思います。これから稽古を通して、阿部さんとどういうコミュニケーションを取っていくのか、想像はつかないんですけど！」と笑う間宮。観客にとっても未知数な師弟関係は、目が離せないところだろう。

また、昭和という時代も大きなキーワードとなりそうだ。「この時代は今とは、活気や人々の胆力が全然違うなと思うんですよ。宣伝ヴィジュアルを撮ったとき、昔の人たちの記念写真というものをたくさん見せてもらったのですが、この時代、有名人ではなく一般人でも、『記念写真を撮るぞ！』とバチっと決めるじゃないですか。そういうエネルギーみたいなものは、しっかり役に持ち込みたいと思います」

取材・文＝小野寺亜紀
写真＝源 賀津己

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受付期間：10/12(水)12：00～10/23(日)23：59
受付席種：S席

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公演概要

京都公演

｜日時｜2022/12/23(金)～2022/12/29(木)≪全8回≫
｜会場｜ロームシアター京都 メインホール
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