2022/9/22
インタビュー
――デビュー曲の『君に涙とほほえみを』はイタリアの歌手、ボビー・ソロの曲のカバーでした。
「もともとこの曲はカンツォーネを歌っておられたほりまさゆきさんが歌うはずだったのですが、ほりさんが体調を崩されたことで急遽僕が歌うことになりました。カンツォーネは初めてでしたが、これをきっかけにハマりました」
――翌年には『霧の摩周湖』をリリースし、大ヒットしました。
「作曲家の平尾昌晃先生たちと湘南で話をしていた時に、海を舞台にしたカンツォーネ風の曲を作ろうということになったんですが、誰かが布施には海のイメージは似合わないと言ったので、舞台が山の湖となりました。カンツォーネの『ボラーレ』にヒントを得たメロディーはそのままで。でも平尾先生はこの曲で第9回日本レコード大賞の作曲賞を獲得し、それまで全国的に無名だった摩周湖が一大観光地になって良かったかなと」
――『シクラメンのかほり』をもらった時の第一印象は。
「それまでポップス志向だったので、正直なところフォーク調のこの曲は売れないだろうと思いました。実はこの頃、しばらく休みがほしいと所属事務所に伝えていて、事務所側はこの曲が売れなければ休んでもいいと言ったので、休みをもらえると確信しました(笑)。ところが予想に反して売れすぎて休みなんかどこかへ吹っ飛びました」
――ご自身の活動において座右の銘や好きな言葉はありますか。
「あまり考えたことはないですが、あえて言うならば『浅学菲才』です。何事も思い上がったりせず、謙虚な態度でいなさいということですね」
――ツアー初日の10/1に4曲入りのミニアルバム『POPS』がリリースされました。
「厳選した既発売の自作曲を新たにアレンジして収録したセルフカバーアルバムです。ロックンロールあり、ラテン調ありと、バラエティに富んだ曲を楽しんでください」
――今回のツアーのサブタイトルは『よみがえれ 昔日(せきじつ)の情熱』となっています。
「私が若かった1960年代は、社会情勢はもちろん音楽の世界も激動の時代で、日々与えられる新たな刺激にドキドキワクワクの連続でした。その頃の熱い気持ちをもう一度思い出すことで、また一歩前に進めると思いますし、私の歌を聴いてくださる方々にもそう呼びかけていきたいです」
――コンサートでは素晴らしい歌唱力でお客様を魅了されています。
「褒めていただくのはありがたいですが、歌手の評価というのは歌が上手いとか下手とかではないと思うんです。お客様からすれば良いか悪いか。もっと言えば好きか嫌いかなんです。要するに歌手としてお客様をどれだけ感動させられるかが肝心。僕が歌う曲を聴いて色々な風景や物語を感じたり思い浮かべたりしてもらえたらと常に思っています」
――今回のコンサートを楽しみにしています。
「いつものようにコンサートの構成、選曲、演出を僕が手がけていますが、しゃべり出すとつい長くなるので、トークを控えめにして(笑)、曲をしっかりとお伝えします。3年後の60周年に向けて弾みをつける内容に期待してください」
TEXT:石井誠