2022/9/20
連載コラム
―きゅるりんってしてみて加入の経緯をお二方にうかがいたいと思います。
兎遊たお「私は学園もののテレビ番組(『青春高校3年C組』)に出ていて。そのなかにアイドル部というのがあって、もともと入るつもりはなかったんですけど、入ることになって、踊ってたら楽しいなと思って。結局、そのあと辞めてしまったんですけど、今のPから(きゅるしてを)やってみない?と声をかけられました」
―兎遊さんはその前もグループをやられていて。以前からなんらかの形でアイドル活動を続けようと思っていたのでしょうか。
兎遊「それが、まったく思ってなかったんです。もともとアイドルはまったく知らなかったんですけど、友達に誘われて、友達と一緒なら楽しそうと思ったんです。仲よく気楽にやろうと思って始めたし、実際に楽しかったんですよ。でも、色々あって辞めて、それで最後と思ってたんです。もうやらんって。1~2年くらい休んでたのかな?それからテレビ番組に出ることになったんですけど、私はお笑いを見るのが好きなので、その番組は楽しそうだなと思ったんです。そういう流れでした。私はなんだかんだアイドルをやることになってきた......(笑)」
―結局はアイドル活動に引き寄せられてしまうという。誘いを受けると、やっぱり楽しそうだな、ということになる?
兎遊「そうなんです。結局、踊って歌うのが楽しかったんだと思います。歌とかダンスは昔よりはうまくなってるんですよ。それが楽しいな、ということに繋がって、今、ここにいるんだと思います」
―逃げ水さんにも加入前のことをうかがいたいのですが、ミスiDにエントリーしたのはどんな思いだったのでしょうか。
逃げ水あむ「じつは自分の意志でミスiDに出たわけではなくて。知り合いに、出てみたら?と言われて」
兎遊「ああ、私もそうだった」
逃げ水「ミスiDは見ていたんですけど、自分が出るなんて考えてなくて。でも、それで人生が面白いことになるかなと思って出てみることにしたら、それなりに進めたという感じでした。だから、アイドルになりたいという気持ちがあったわけではなかったんです」
―将来の展望は漠然とあったりしたのでしょうか。
逃げ水「通っていた高校は90%以上が大学に行くようなところだったので、大学に行くのが当たり前だし、大学を卒業したら就職するというのが当たり前という環境で育ったので、そうなるんだろうなと思って過ごしてたんです」
―それがまったく違う人生になって。
逃げ水「そうなんです。私は自分の力でのし上がることは無理だろうなと思っていたんですよ。自信がないので、ミスiDとかも出ることはないだろうと思ってたくらいなのに」
―自分に自信がない。
逃げ水「ないです。きゅるしてに入ったときも、最初の時点でみんなより100歩以上遅れてるから追いつかなきゃという気持ちでずっと続けてきました」
―今でもそんな控えめな人が、アイドル活動をやろうと決意したのは大きなことですよね。
逃げ水「声を掛けてくださった人のセンスを信じているし、そのときに決まっていたメンバーを聞いて、え?と思って。知ってる人ばかりだったんです。その子たちと一緒にできるなら、うまくいくかもしれないと」
―有名な人がたくさんいるぞ、と。メンバー同士で顔合わせをしたときはどんな感触でしたか?
逃げ水「......めっちゃ可愛いと思いました(笑)。全員すごいと思っちゃって。ただ、デビューするまでは、一緒にレッスンはしているけど仲睦まじいというわけではなかったよね?」
兎遊「そうだね。みんな控えめな感じで。陽キャじゃなかったんです」
逃げ水「外交的ではないんだよね。でも、とにかく顔がありえないくらい可愛いなって内心思ってました」
兎遊「いや、褒めまくってたよ(笑)」
―まだ仲睦まじくはないけれど、口に出して褒めまくってはいた(笑)。時を経て、現在はなんでも言い合う仲になっているじゃないですか。どのように関係性が変化していったのでしょうか。
逃げ水「第一段階としては、やっぱりお披露目公演かな。あのライブをきっかけにどんどん仲よくなっていったと思います」
兎遊「そこから、気づいたら仲よくなっていて。最近の話をすると、ライブ中にひとりのマイクの電池が切れたんですよね。それで私が代わりに歌ったんです。そこで、おおっとなって。その少しあとのライブでまた電池が切れることがあって、そのときはほかのメンバーが歌ったんです。それはすごくいいなと思いました」
―ステージ上で自然とカバーし合える関係ができている。
兎遊「そうなんです。でも、電池トラブルはびっくりするので、ないほうがいいです(笑)。これも最近の話なんですけど、遠征のとき、こういうところを変えようという話し合いをみんなでしたんですよ。お互いの気持ちを考えたうえで優しめに言い合えたので、この5人で一緒に頑張っていこうという気持ちがあるんだねって思えました」
逃げ水「わかる。部屋に集まってライブの反省点を話し合えたのはよかった。いい空間だったよね。ピリピリせずに話して、改善できた。それができたのも、この人たちは個人のエゴでそういうことを言わないというのがわかっているからこそで。毎日一緒にいて、ご飯に行くことが増えたというのも大きいと思う」
―よく行っているんですよね。
逃げ水「ライブ後とか練習後に時間があったら、とにかくみんなでご飯に行くんです(笑)。仕事が終わって解散するんじゃなくて、みんなで食事しながら日々感じていることを話し合って。そこでどんなことを考えているのかって意志の疎通ができるんですよね」
兎遊「ご飯行くようになったのは、やねちゃんがきっかけだったかもしれない。人と一緒に食べたい人なので」
逃げ水「そうそう。寂しがりやさんなので(笑)。やねと私のふたりで食べに行ったのが最初だったのかな。まだお互いのことを全然知らない時期で。練習とかライブのときって、意外とお互いのことを聞いたりする時間がないんですよ。それで話せるのがいいなと思って、そのうちみんなも一緒に行くようになりました」
―自分がきゅるしての取材をして意外だなと思ったことがふたつあって。それはいま話してもらったように、普段からコミュニケーションを積極的にとっているという点と、もう一点はものすごく負けず嫌いというところです。
逃げ水「自我がすごいありますよね(笑)。それは自覚してます。私が思うのは、それぞれがもともと活動してきた人が多いし、ひとりでやってきた人も多いからなのかなと。私も、ほとんどやってなかったに等しいんですけど、ひとりでイベントを組んだりとかしていたので。これはどうすべきかと自分で考えるクセがついてるんだと思います」
兎遊「普通、自信を持ってる人たちが集まるとうまくいかないことが多いですよね(笑)」
逃げ水「これは私の考えだし、正解はないと思うんですけど、グループ内でも考えかたが全然違うんだなと思うことはあるんですよ。でも、それが悪いことだと思ってなくて。自分には至らない考えを持っているから、そういうこともあるよねって飲み込める。お互いが自分を出して、それを混ぜ混ぜして、じゃあこうしよっかと決まっていくんですよね。自我はすごくあるけど、押し通そうという人はいないんですよ」
―端的に言ってしまいますが、大人なんですね。
逃げ水・兎遊「それはある!」
兎遊「優しいというのもあるし、大人だし、どっちもあるからこういう雰囲気がやれているんだと思います」
―おふたりの個性についてもうかがいたいのですが、逃げ水さんは歌がすごく魅力的で。
兎遊「歌上手ですよね!」
―なにかやっていたんですか?
逃げ水「小さい箱の自主イベントで歌ったりしたことはあったんですけど、それはカラオケみたいなものだったので、経験はないに等しいです。だから、きゅるしてに入ってからなんですよ。 高校生の頃から音程を取るのはできたんですけど、歌いかたとか声の出しかたを掴んできたのは、きゅるしてでライヴやレコーディングを重ねるようになってからです」
兎遊「最初からうまかったよ」
―兎遊さんから見ると結成当初からすごかった(笑)。ともかく、グループの大きな武器ですよね。
兎遊「きゅるしての歌姫って言ってます」
逃げ水「あはは。まだまだなので、もっとうまくなりたいと思ってます。でも、私は歌がなかったらやばかったですね(笑)。何もないやんって。面白いことを話せるわけでもないし、顔が一番可愛いわけでもないし、ダンスもうまくないし。歌がなんとか歌えてよかったです(笑)」
―兎遊さんの武器はどんなところだと思います?
兎遊「何もないんですよね......。あ、中国語?今のところ使う機会がそんなにない(笑)。台湾遠征に行ったら使えるかもしれないですけけど......」
逃げ水「そう思ってるんだ。何喋っても面白いって自覚してないの?」
兎遊「え?それはわからない」――兎遊さんはいるだけでみんなが和む存在ですよね。
逃げ水「その通りです」
兎遊「やった(笑)」
―我が強い人たちの集まりをバチバチさせない人なのかなと思うんです。
兎遊「私が?嬉しい!」
逃げ水「そうだよ。みんなで真剣に話してて熱くなりすぎるときもあるんですけど、兎遊はいつも面白くて、どうしても笑っちゃうときがある。兎遊ってすごいよな、ってよく話してますね」
―それが天性のアイドル力なのかもしれないですね。素敵なバランスだなと思います。
逃げ水「きゅるしてはこの5人でいるのが楽しいから続けてこられたんですよね。仕事がなかったら会いたいと思うし、今日は4人に会えるんだと思ってライブに行ってます(笑)。この5人からひとりでもいなくなったらイヤだし、絶対にこの5人でやっていきたいというのは全員の共通認識だと思います。実際、みんなもよく言ってます」
―逃げ水さんは大学を卒業して就職するのが普通のことだと思っていたわけですが、今はどうですか?
逃げ水「アイドルでやっていきたい。どうせ就職しなきゃいけないんだろうな、と思って生きてきたのに、こういうことになったのは本当によかったと思ってます。まわりが就職活動するのを見てて、絶対にやりたくない......と思っていたので(笑)。だからきゅるしてをなんとかしないといけないし、頑張りたいんです」
―兎遊さんはいかがでしょうか。
兎遊「私は、人生なんとなく生きていけるでしょとは思っているんです。アイドルをやってなくても、何かしらのアルバイトでも生活はできるだろうし。だから、きっと何も考えてないんです。それなのに、なぜかアイドルになっちゃうのは......誰かに操られてますかね?」
―そんな(笑)。
兎遊「どうしてもこっちに来ちゃうのは恐怖ですね(笑)。ステージがすごく好きで、ファンのみんなが楽しい顔をしていると楽しいなって思います。対バンに出たとき、私たちのファンじゃない人が前列で寝てるのはしんどいですけど」
―最前列で寝てるやつがいる(笑)。
兎遊「つい見ちゃうんですよね!それはつらい!」
―つらい話で言うと、この連載の第2回では環さんが推し変や他界のつらさを語っていました。
兎遊「ああ、それは病みますね(笑)。でも、何かしら理由はあるっしょって思います。それに対して、うちらは何もすることもできないので」
逃げ水「そうだね。私は人と人との付き合いを超大切にしているんですけど、オタクから私に対しては、もっとフランクでいいよって思ってます。この子だけを一生推さないといけない、そして全通しなきゃいけないって義務感を持ってほしくなくて。それはめっちゃ嬉しいし、クソデカ感情も芽生えるんですけど、それで変に拗らせたり、身を滅ぼしてまでアイドルを推さなくてもいい。そういうスタンスがいいのかなと思ってます」
―思いが強すぎて、誰かに自分の人生を左右されてしまうのはよくないよね、というのは環さんのインタビューでも出てきました。
逃げ水「やねも繊細ですからね(笑)。でも、よくわかりますよ」
兎遊「私、最近ゲームをやっていて、花とか麦を育てて回収するんですけど、いつも寝る前にチェックしてたんですね。でも、そのうちにアラームをつけて回収するまでになっちゃって(笑)。それで、私はゲームに操られてる!って気づいたんです」
逃げ水「あははは!」
―漫画のアプリとかでも、日付が変わったらチェックしなきゃいけない、みたいなことってよくありますよね。好きなのか義務なのかが曖昧になってきて。
兎遊「ありますよね!アイドルもそうで、気にしすぎるとファンに操られるような感覚になる。向こうが操ってるわけじゃないのに(笑)。だから、ちゃんと自分を持たなきゃなって思います」
―あちこちに脱線してしまいましたが、今回はこんなところでしょうか。11月にツアーが控えていますが、現時点ではそれについてどんなことを考えていますか?
兎遊「みんなが見たことないきゅるしてを見せたいですよね」
逃げ水「まだはっきりとは決めていないんですけど、ファイナルに向けて何か目標を達成するようなツアーにしたいです。というか、ツアーとは本来そういうものだと思うので。それは集客でもいいと思うんです。目標に向かってやることがいっぱいできると思うので。例えば、クラブチッタを埋めるという目標を立てて、それを達成したら絶対に意味があることだし。何も考えずに適当にやりたくはない。それをみんなで考えたいですね」
インタビュアー:南波一海
日時:2022/11/02(水) 16:30 / 19:00
会場:TAKARA OSAKA
公演詳細はコチラ