2022/9/5
連載コラム
―環さんは熊本出身ですよね。上京した経緯からうかがっていいですか?
環やね「ミスiDというオーディションを受けているんですけど、そのタイミング(2017年)でバズったんですね」
―熊本にとんでもない美人がいるぞと。
環「それで仕事の依頼がたくさんきて。バズったし、ミスiDも出たし、じゃあ(東京に)出るかと。私は高校を卒業するとき、ニートになると宣言したんですね」
―素晴らしい宣言(笑)。
環「自称進学校だったんですけど、担任の先生とバチバチに大ゲンカしちゃって、そのままなんのあてもなく卒業して。でも、ニートは3ヶ月くらいで飽きたんです。どうしようかなと思っていたら、そういうバズとかがあったので、まぁ生きていけるっしょというノリで上京しました」
―将来こんなことしたいな、と考えたりはしていたのでしょうか。
環「小学生くらいから夢はお嫁さんというタイプなんですね。私は専業主婦になるんだと思っていました。昔から将来就きたい職業がないので困っていたんですよ。聞かれたら、その時々の一番仲のいい友達と同じことを言う、みたいな。受験も困りますよね。やりたいことがないので、どの学校を受けたっていいという。趣味もないし特技もないしやりたいこともない、という状況でした。だから、そんな子がいきなり東京に行くなんて言ったら、親がもう大変でした。箱入り娘みたいに育てられたので」
―どう説得したんですか?
環「友達が先に東京に出ていってたので、その人もいるし、と。私がモデルに興味を持ってるとか、そういうのを察したのかもしれないです。親からは、定職に就くのは向いてないとずっと言われていて。あなたは毎朝同じ時間に起きて同じ電車に乗って同じ会社に行くのは向いてない、と言われてたら、いい機会だと思ってくれたのかもしれないですね。高校も卒業したし、家にいるよりはやりたいことやったらええやんって」
―そうして東京に出てきたあとはどうなっていくのでしょうか。
環「それが、ありがたいことに一度も職に困ったことがなく。ミスiDが終わってからも無限にお仕事をいただいて、忙しくて死ぬみたいな時期もありつつ、いまに至るんです。めっちゃ運がよかったんですよ」
―駆け出しの頃はアルバイトをしながらモデル活動をするという人も少なくないですよね。
環「なんと私は東京に来て一回もバイトやったことないんですよ。すごいかもしれません」
―よくある上京後の苦労話みたいなものもない。
環「友達が少ないくらいですかね? あとは、一緒に住んでた親友の女の子がバンドマンにめちゃくちゃ貢ぐようになってしまったので縁を切ったとかはあります(笑)」
―その話も気になるところですが(笑)、きゅるりんってしてみてに誘われたときはどうだったんですか? ひとりでもうまくいっていたわけですよね。
環「もともとアイドルは好きで。踊るのも好きだし、歌うのも好きだし。ただ、私は身長が高いし顔もこわいので、自分がなるのは違うだろうと思っていたんです。でも、ミスiDからアイドルになる子は多いじゃないですか。知り合いがみんなアイドルになっていくのを見て、いいなぁと薄々思っていて。それでTwitterでアイドルやりたいと呟いたら、プロデューサーからやろうよと言われたのがきっかけです」
―そこで悩んだりはしました?
環「ないですね。人生全部がノープランで楽観的なんですよ。高校受験で落ちたときも、別にもう一個受けてるからいっか、みたいな。悔し泣きも嬉し泣きもしたことがないんです。部活とかで負けたり勝ったりでみんな泣いてても、自分だけ泣いてない(笑)。よくも悪くもずっとそんな感じなんですよね」
―グループのなかでも一歩引いて物事を冷静に見ている人なのかなとは思います。
環「リーダーに任命された理由もそれなんですよ。自分の正義を正義だと信じて振りかざしたりせずに落ち着いてまわりを見れる、というようなことをプロデューサーに言われてリーダーになったので、本当にそうなのかもしれないです」
―それまで、なにかに熱中して打ち込んだことはありますか?
環「なんと、人生で一度もないんです。すべての習いごと、学業、部活をだるいと思ってました。趣味も、いまはこれが好きとかあるんですけど、長くは続かないんですよね」
―ちなみに部活はなにをやっていたんですか?
環「小学校4~6年はバスケ部だったんですけど、ヘルニアになってほぼほぼ出ず。中学校は1年生で陸上部をやって、2~3年生で吹奏楽部に入りました。高校1年生は軽音部に入って、2年生でぼちぼち行かなくなって辞めてます」
―何事も長くは……。
環「続かない。でも、バイトと恋人は続きましたよ」
―ですか(笑)。
環「バイトって、辞めるって言いづらくないですか? 相当なことがない限り辞められなくて、なんとなく続いてしまった」
―どんな職場だったんだろう……。恋愛もどこか冷静だったりするのでしょうか。
環「私は私のことを好いてくれる人が好きなんですね。愛情表現がなくてわからないと言われたこともあります。サプライズとかされても泣いて喜んだりできないので困るんですよ。そう考えると冷めてるのかもしれない(笑)。あの、私って薄情な人間なのかなって1日1回は悩むんですよ」
―グループでの環さんを見る限り、薄情ではない気がします。
環「そうですか? きゅるしてのメンバーにも相談したことがあって。私は黙ってると怒ってると思われるんですね。4人が先にいて最後に私が来るときとか、最初は私がいて4人があとに来るときとか、テンションの合わせかたがわからないんですよ。それで自分が冷めて見えることを恐れています(笑)」
―もちろんメンバーは長く一緒にいるから環さんのことをわかっているわけですよね。そこまでの関係じゃない人からすると、なんだか機嫌悪いのかな、とか思われているのではないかと。
環「まさにスタッフさんにそう言われたりします。全然そんなことないんですけどね。もしかしたら後輩もそう思ってるのかもしれないですね」
―何事も一歩引いていて、なんなら冷たくも見えるくらいの環さんが、きゅるしてを熱心に続けてきたというのがおもしろいですよね。
環「たしかに! 状況を改善しようと文句言ったりもしますし(笑)。自分にここまで向上心があるというのは珍しいかもしれないです。それはもしかしたら、私は私のことが一番好きだからなのかも。もっと私を輝かせないともったいないだろ、もっとたくさんの人に愛されたいんだ、という思いが強いんだと思います」
―それは納得です。自分がステージに立つ姿をファンが見てくれるというのは性分に合っている。
環「ただ、それはすごく幸せなことなんですけど、アイドルって他界がつきものじゃないですか。それでめっちゃ傷ついて1週間くらい病んだんです! 私はアイドルの在りかたに気をつけようと思いましたよ」
―在りかたですか。
環「推し変とか、目に見えて私のことを好きじゃなくなる瞬間がありますよね。ずっとひとりで活動してきたので、ファンの人が誰かに目移りする経験がなかったんです。それで毎日あれこれ考えてしまう。特にグループ内の推し変は水面下でしてください(笑)」
―なるほど。ファンからの好意や評価だけを拠り所にしてしまうのは危ないのでは、と常々思います。
環「そのことにちょうど最近気づきまして。ひとりのファンの人に対して毎晩泣いたりして人生狂わされてたら、もっと規模が大きくなったときに私は死んでしまうと思ったんです(笑)。アイドルというものは、素でありすぎるのは危険なのかもしれない。どこかで線を引くというか。死にたいですと言われたら、こっちも考えすぎて死にそうになりますし……。お互いに思い過ぎるのは気をつけないとけいないなって思います。でも、自分がアイドルという仕事についてここまで考えたり熱中したりすることはすごいことだなと」
―きゅるしてはそれだけのものということですよね。リーダーは入ってすぐに任命されたんですか?
環「デビュー前からですね。プロデューサー曰く、もともとは作らない予定だったみたいです」
―そうだったんですね。
環「グループが決まる前からダンスの基礎連とかがあったんですね。のちのONE BY ONE(同事務所のグループ)の子たちとかもいて、きゅるしてのメンバーも確定してなかった時期に、私はレッスンを一度も休んだことがなくて。来ても来なくてもいいようなやつも全部行くんですよ。それで、お前真面目やん、リーダー向きやんって思われたのかもしれないです」
―きゅるしての活動はやりがいを持って続けていると思うのですが、その原動力はなんだと思いますか。
環「闘争心ですね。私は争いごとが好きではないんですけど、嫉妬深いんです(笑)。それで私、1年くらい前から個人でダンス教室とボイトレに通ってまして。真面目を通り越して嫉妬深い。人になにかを取られるのがイヤ(笑)」
―自主的にレッスンに通うまでになるのは、人生をノープランで進んできた人とは思えない展開なんじゃないかと。
環「ですよね? 親もびっくりしてました。自ら金払ってまで習いごとを始めるなんて。いま、やっと人生に本腰を入れ始めたんだと思います。きっと本気なんですね。私の仕事はこれなんだと思います。おばあちゃんになったときに武勇伝にできるくらいのことをしたいですよね」
―まだ少し先ですが、11月の秋ツアーはどんなことに臨みたいと考えていますか。
環「そうだなぁ……ライブのMCは私頼りなところがあるんです。去年はずっと私が喋っていて、今年に入ってローテーションで回しているんですけど、いつの間にかまた私が喋ってるんですね(笑)。最近は楽屋挨拶とかを島村嬉唄さんやチバゆなさんがやってくれるので助かってるんですよ。私としてはもっともっと頼りたい。私がいなくても大丈夫なくらい頼りたいです(笑)。嬉しいことなんですけどね。私に存在価値があるということだと思うので。やねちゃんがいないと、って言ってくれると、こらこらきみたちって思いますけど、しょうがないな、私がいないとなって思ったりもします」
インタビュアー:南波一海
日時:2022/11/02(水) 16:30 / 19:00
会場:TAKARA OSAKA
公演詳細はコチラ