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全編大阪弁の音楽劇『てなもんや三文オペラ』生田斗真×鄭義信が語る。

2022/6/6

その他

パルコ・プロデュース2022 『てなもんや三文オペラ』

 劇団☆新感線や蜷川幸雄作品など、数々の舞台でキャリアを積んできた俳優・生田斗真が、作・演出家の鄭義信と共に、ベルトルト・ブレヒトの傑作音楽劇『三文オペラ』に挑戦。『泣くロミオと怒るジュリエット』(2020年)で、シェイクスピアの恋愛悲劇を戦後の関西に置き換えた鄭は、今回も『てなもんや三文オペラ』というタイトルで、全編関西弁の芝居に翻案した。しかも生田が演じる悪漢、マック・ザ・ナイフの結婚相手は男性! と、前代未聞の世界観となっている。
 生田は関西弁の芝居について「感情のことを考えるとイントネーションがおろそかになり、イントネーションを意識すると感情がおろそかになる。でも感情と台詞がバチッとハマると、すごく気持ちがいいです」と、その苦労と楽しさを話す。鄭も「大阪の言葉は土着的なパワーが強いけど、(原作の)クルト・ヴァイルの曲は大阪弁にした方が、面白いニュアンスが出るというのは発見でした。少し笑える曲もあるし、なかなか面白いことになっていると思います」と自信を見せた。
 今回の舞台の設定は、1950年代の大阪。マックが率いる窃盗団を、その時代に実在した盗掘集団「アパッチ族」に置き換えた。アパッチのボス・マックと、彼と結婚した青年ポール(原作はポリーという女性)、結婚に反対するポールの両親、マックの恋人の女性たち、そしてマックと裏でつながる警察署長などが、倫理も正義もうっちゃった、関西弁で言うところの「えげつない」人間曼荼羅を描いていく。

 アパッチ族を扱った理由について、鄭は「原作の盗賊団のいろんな要素が、アパッチ族のパワーとすごくマッチすると思いました。ブレヒトがこの作品に込めた混沌さや猥雑さが、もっと濃厚になるんじゃないか」と語る。また一部のキャラの性別を入れ換えたのは「マックはすごく人たらしで、男も女もお構いなく惹きつける力があるから、相手が男でもいいじゃないかと。それに女性だけでなく、男もマックの奪い合いに参加するという、その面白さを取ったというのもあります」と狙いを述べた。

 それを聞いた生田も「マックは性別や年齢を超越して人を愛することができるし、全員に100%で『愛してるで!』って言える人(笑)。それがより、わかりやすく表現できるんじゃないかと。僕は芝居が柔らかくなりがちなので、マックはハードにすることを意識しています」と役づくりを語る。またポール役のウエンツ瑛士について「小学生の時、同じTV番組でレギュラーを務めていたので、同じ団地の隣家の友達みたいな、ちょっと特別な存在。稽古場で同じ机を使ってるんですけど、いつも僕のために、のど飴を真ん中に置いてくれてるんですよ(笑)」と、すでに“内助の功”を発揮していることを明かした。
 これ以外に、マックの背景に戦争の影を加えたことと、今もなお賛否両論なラストの展開も、原作とは異なっている。その訳について鄭は「平和と言われる日本も、いつウクライナと同じようなことが降り掛かるかわからないし、その時に僕たちは何を選択して、どう生きるのか? ということを、今一度考えてもらいたい。大笑いして舞台を観た後に、平和の尊さについてちょっと考えてもらえたら、すごく嬉しいです」と期待を込め、生田も「演劇空間で起こることと、今実際に世界で起こっていることが、切っても切れないという状況。それによってお客さんが、どういう風に感じてくださるか? とすごく考えますし、僕らもいろんなことを噛みしめながら、お芝居の空間を提供したいと思います」と決意表明。歌あり踊りあり笑いありの破天荒な世界を楽しみつつ、先人たちの過ちと贖罪について思いを馳せる。『てなもんや三文オペラ』は、そんな貴重な演劇体験となるはずだ。

パルコ・プロデュース2022
『てなもんや三文オペラ』

日時:2022/07/16(土)~2022/07/24(日)≪全10回≫
会場:森ノ宮ピロティホール

■作・演出:鄭義信
■原作:ベルトルト・ブレヒト
■音楽:クルト・ヴァイル
■音楽監督:久米大作

■出演
生田斗真 ウエンツ瑛士 福田転球 福井晶一 平田敦子
荒谷清水 上瀧昇一郎 駒木根隆介 妹尾正文 五味良介 岸本啓孝 羽鳥翔太 大澤信児 中西良介 近藤貴郁 神野幹暁
根岸季衣 渡辺いっけい

演奏=朴勝哲

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