フランス喜劇を代表する脚本家フランシス・ヴェベールの傑作コメディを、片岡愛之助と戸次重幸の初タッグで贈る『奇人たちの晩餐会』。ヴェベールが1998年に発表した大ヒット作で、自ら監督・脚本を手掛けた映画もフランス映画界のセザール賞で脚本賞と主演男優賞を受賞している。物語の舞台はパリに住む編集者ピエールの自宅。彼は毎週仲間たちと晩餐会を催しているが、参加するメンバーはそれぞれがとっておきの変わり者をゲストに同伴、その中からキング・オブ・変人を決めるという悪趣味な晩餐会だ。今回ピエールが選んだのは官庁勤めのフランソワ。ところが逆に振り回され、ピエールは大ピンチに…という爆笑シチュエーションコメディ。この作品に挑む愛之助と戸次が、稽古を控えるなか大阪公演に向けて見どころや意気込みを語った。

　「戸次さんとガッツリご一緒させていただくのは初めてなので、すごく楽しみです」とフランソワ役の愛之助。ピエールを演じる戸次は「愛之助さんの舞台はずっと拝見してきましたが、これまであまり見なかったタイプの愛之助さんのお芝居が観られるのは、１ファンとしてこんなに光栄なことはないと思っています」と初共演を楽しむ2人。巻き込まれ型コメディはテンポの良さが決め手で、この作品は展開の早さも際立つ。度重なるピンチにピエールがどうなっていくのか、観客はハラハラしながら目が離せず、爆笑に次ぐ爆笑の後半に向かう。
　「見どころは会話ですね。至近距離での剛速球のキャッチボールみたいな感じです」（愛之助）。「その会話と、全体に漂う緊張感が見どころだと思います。この芝居は演じる方も観る方も疲れると思いますが、この緊張感を楽しんでほしい。幕間にはたっぷり休憩してください（笑）」（戸次）。ベテラン2人の絶妙の掛け合いのおもしろさが期待できる。ほかの出演者たちも存在感のある実力派がそろい、さらに演出はコメディにも定評のある山田和也だ。思い切り笑える舞台になることは間違いない。
　あまり見たことのない愛之助のコメディだが「基本的に笑いを取りに行っちゃダメだなとは思っています。そこで起きていること自体を笑ってもらうことじゃないかと」と語り、コメディ経験の豊富な戸次も「そうですね。自分がこれから言うことはおもしろい、と思って言わないということかな。山田さんが導（しるべ）になる演出をしてくださると思うので、それを忠実に守れば。ピエールという役も、決められた歯車の仕事をしっかりこなさないと作品がおもしろくならないと自覚しています」。
　自分の中にある奇人的要素は？という質問に、愛之助は「フランソワはピエールに良かれと思ってすることがすべて裏目に出てしまう役で、自分も『あぁ、わかるわかる』と。ちょっとどんくさくて、いらぬおせっかい焼きみたいなところがあります」。戸次は「僕、すごく忘れ物をするんです。携帯、財布、鍵…ひどいですよ。そういうところだと思います」。逆に自慢できるのは「寝つきの良さですね。いつでもどこでも一瞬で寝られます」(愛之助)、「自分の家のリビングの床を3日に1度かけているワックスがけ。継ぎ目を残さずにピカピカに仕上げるキレイさは誰にも負けません！」（戸次）。
　今回楽しみにしていることは「お客様とのキャッチボールです。お客様の反応が毎日毎回違うことが舞台の醍醐味。楽しみながら勤めたいと思います」（愛之助）。「大阪ならではの美味しいものも楽しみですし、大阪の方々のノリは全国でトップクラス。そんなお客様の前でお芝居できることが楽しみです」（戸次）。

　最後に大阪の皆さんへのメッセージを。「特別な知識は全く必要ない作品なので、気軽に観ていただけたら。みんなが演じる一挙手一投足、一言一句を聞き逃すことなく、このお芝居どうやって終わるんだろうと想像しながら楽しんでご覧ください」(愛之助)。「フランスの作品ではありますが、フランスに関する知識とかはまったく必要ありません。ですので、リラックスしたい方はパジャマで劇場にいらしてもいいです（笑）。本当にくつろいで娯楽作品を楽しんでいただければ幸いです」（戸次）。

取材・文＝高橋晴代
撮影：森好弘

大阪公演

日時：22022/06/25(土)～2022/06/27(月)≪全4回≫
会場：森ノ宮ピロティホール

公演詳細はコチラ