2022/5/6
インタビュー
――もともと上田さんの小説が好きだったそうですね。
僕はずっと同じテーマを書き続けている小説家の方が好きなんです。そのような方は、あまり今いないと思っていて。上田さんは人間が行きつく先はどこなのか、行き止まりになればどうなるのかなどを予言するような作品を書いていて、人類の行く末に警鐘を鳴らし続けている。作品はSFだと捉えられがちですが、今、世界はまさにSFの時代に突入しているにもかかわらず、「2020」年以前の幻想や残滓を見ている人が多い気がします。人類の個と全を過去と未来にわたって描いていくテーマ性は僕にとってドンピシャだったんです。上田さんと白井さんが融合したときに面白いものができると分かっていました。
――「2020」は、今おっしゃったテーマで物語が進むそうですが、高橋さんの役は?
僕自身は、お客さんと過去と未来をつなぐキャラクターで、個であり人間なのか?という存在。もしかしたら高橋一生そのままかもしれません。僕が上田さんに話していることが多分に反映されていたりするので、高橋一生と思ってもらっても結構です。普段お芝居をしていると、役をやっているのか自分なのか分からなくなる時があって。それを皆さんの前で見せることになると思います。
――過去に上田さんとの対談で、役作りという概念に疑いをもっていると言われていました。
いまだに役作りということが分かっていないんです。役作りという定義自体も分からないし、何から何までが役作りなのか。僕は、自分の肉体がある以上、全く違う誰かになるということを、はなから諦めています。作品によって体形を変える人もいれば、文献を読みあさる人もいる。役作りという意味合いが多岐にわたってしまうので、そういうものだとしたら、僕は何もしていないのかもしれません。あまり役作りをしていますという言葉に自らとらわれるのは、やめておきたいんです。仮に俳優が手品師だとしたら、手品のタネ明かしをするようなものなので。今回の役は高橋一生と思ってもらってもいいと言ったことが、ある意味で答えなのかも知れません。
――高橋さん自身は「2020」年前、2020年、それ以降をどう捉えていますか。
2019年までは何もかもベールに包まれていた時代だと思います。2020年にそのベールが剥がされ、2022年は、また新しいベールをかけられそうになっている時期なのかなと。
――そんな中での「2020」の上演は、観客にとっても刺激的な作品になりそうですね。
今回、作品をゼロから作る面白さを体感していますし、これをどう表現するかを楽しんでいます。自分たちが面白いと思えるものを作るべきだと思うんです。この作品が見る方にとって刺激的な体験になってくれたらうれしいです。劇場でアトラクションを楽しむかのようにお客さんが存在してくれたら、僕たちにとっても励みになりますし、面白い舞台になると思っています。ぜひ、お楽しみに!
TEXT 米満ゆう子
撮影:加藤アラタ
ヘアメイク:田中真維(マービィ)
スタイリスト:髙木阿友子
PARCO PRODUCE「2020」
■作
上田岳弘
■構成・演出
白井 晃
■出演
高橋一生 ほか
日時:2022/08/11(木・祝)≪全2回≫
会場:京都劇場
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日時:2022/08/18(木)~2022/08/21(日)≪全5回≫
会場:森ノ宮ピロティホール
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