2022/2/23
公演レポ
トップバッターを飾ったのは、東京からANORAK!。2019年結成、USのEMOシーンに影響を受けながら、繊細なメロディックパンクで絶妙なメロディーセンスを紡ぎだす4ピースバンドだ。 Tomoho Maeda(Gt/Vo)が「友達の歌です」と切り出し、「SLIDE」でライブをスタート。
そのまま「吉祥寺」「浅草」「表参道」……と立て続けに披露。「調布」「八王子」「下北沢」を過ぎた頃には、何曲披露されたのかと指を折る。気づけば10曲を終えようとしていた。その間、打ち鳴らされるメロディに乗せて、町を巡るようにさまざまな心情が湧き起こっては移り変わり、とても遠くまで旅をしたかのようにめまぐるしく浮かぶ情景に想いを馳せる。そんな心を揺さぶれられるライブに、拳を突き上げたり頭を降って全身で音を感じる観客たちが印象的だった。
「こんなにもたくさんの人の前でやるのはじめてです。motherとは2年ぶり。downtはイツメンで、1994は初めましてですね。たぶんですけど、今年のどこかでアルバムを出す予定なのでチェックしていてください」(Tomoho)と言い残し、ラストは「浮かない顔のまま」「新宿」「Call Me By Your Name」を披露し衝動をぶつける。ライブハウスの匂いがする迫真のアクトで、観客の心を鷲掴みにしてステージを後にした。
続いては、大阪初ライブとなる1994。ドリームポップをルーツに感じさせ、力強くも心地よいメロデ ィーを作り上げる4人組バンドだ。 1曲目の「mother」から、金井勇真がギターを担ぎ上げてプレイするなどアグレッシブなステージングで惹きつける。
そのまま「夜歩く」「澱み」と続けざまに披露。美しいギターの音色に、ゆらゆらと体をゆらさずにはいられないリズム、透き通った日野ハイリ(Vo.Gt)の歌がパンゲアに響き渡り、観客も身を委ねて躍る。すっと聴き入っていたところで、メンバーが向き合って轟音を鳴らし圧倒される場面も。時に包み込むようにして安らかに、時に突き放し、突き上げるような激しさをみせる展開に胸がぐるぐるとざわついてアツくなる。
「僕らも初の遠征で、大阪に来れて嬉しいです。2月26日(土)にEP『陽が沈んで、夜が明けて』をリリースします」と金井のMCから、MVでも話題を集めた「深呼吸」へ。続く、「utp」ではメンバーの表情も一変して笑顔を見せながら、軽快に届けられラストは「今日のことを思い出しながら、EPを聴いてくれると嬉しいです」と告げ、「開花」へ。音源とはまた違った、ライブならではの音像をたっぷりと浴びせた。
リハーサルから並々ならぬ気合が伝わってきたのは、インディーシーンで話題を集めている東京のスリーピースバンド、downt。「1115111」で幕を開け、「mizu ni naru」「AM4:50」と1stアルバム『downt』から披露。
そのまま淡々と焚き付けていくように「song1」「Channel2」と続く。卓越した演奏で練り上げていくバンドサウンドの熱、漂うようにして胸に届き、じわっと身に染みわたっていく富樫(Vo.Gt)の歌声がなんとも心地よく癖になる。
「大阪に来るのは去年の12月ぶりです。物販持ってきてるので…」と、ベースの河合がさらりと挨拶。そのまま憂鬱を晴らすかのように「See You Again」、ロバートのドラムも激しさを増しヒリついたムードのままクライマックスを迎え、ラストナンバー「minami senju」へ。
多くは語らず、あくまでも楽曲で魅せる。力強さと繊細さ、静かにうごめく激情、淡々と鮮やかに、深く熱く、潔く届けていく緩急に痺れずにはいられなかった。
この日のトリを飾ったのは、mother。「いい夜にしよう!」と山内彰馬(Vo.Gt)が誘い、1曲目は今年の1月にリリースしたばかりの1st EP「Twilight」から「Blue」を披露。歌い、鳴らされた瞬間に空気を一気に変えてしまい、あっという間に観客の心を惹きつけていった。
そのまま「masquerade」「悪い夢」と胸に手を当てながら訴えかけるように、はたまた全てを飲み込むような気迫をもって歌い上げる山内。ステージを鋭い眼差しで見つめる人もいれば、拳を突き上げる人、思いあまって涙を流す友人に肩を寄せる人など、ひとりひとりが自身の心の内と歌を照らし合わせるようにして聴き耽る。
MCでは、山内が地元大阪でライブができることへの喜びを語り、「海の歌です」と「潮騒」へ。じっくりと聴かせたあとは、「Night Walk」で観客と心をひとつに一体感を生み出しスケールを増していく。また、なかなか思うようにいかない難しい世の中を憂いながら、「新しい日々をつくっていくために」と、憎しみ合うのではなく、最後は愛で変えていくことを語りかけて「Festive Song」を披露。思いの丈を歌にのせ、その場にいるすべての人と、今という瞬間を確かめ合いながらラストは「Twilight Girl」で締めくくり最高潮へ。アンコールの「Liberty」まで、迫真のステージをみせつけた。
いい音楽を共有できる場所をめざすイベントにふさわしい、ライブハウスでしか味わえない感動の詰まった夜となった。第2回、第3回と今後の開催に期待せずにはいられない。『GOODNIGHT』に飛び込めば、間違いなく新しい音楽との出会えることを証明してくれたから。
文:大西健斗
撮影:黑川皓太
GOODNIGHT vol.1
日時:2022/02/19(土)17:00
会場:心斎橋Pangea
出演:
ANORAK!/downt/mother/1994
出店:HOLIDAY! RECORDS
公演詳細:https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/4177